君といつまでも。
幸せだなァ......
僕は君といるときが一番幸せなんだ
僕は死ぬまで君を離さないぞ
いいだろう?
と、僕が思っているとき、うちの奥さんはあんまりそうは思っていないらしい。若大将もびっくりである。
このことに気づくのには、けっこう時間がかかった。
僕がうっとりする。彼女はそうでもない。その事実を指摘されるたびにハートブレイクしながら、話を聞いてみると、こういうことが分かってきた。
僕は、奥さんがいるだけで幸せになれる。
のろけに聞こえるかもしれないし、僕は実際かなりのろける人だが、それだけではない。
彼女の、女性の存在がこちらのエネルギーになっている、という感覚があるのだ。
それは風呂に入ったときの感覚に近い。彼女がニコニコしていると、あったかいものが流れてくる。ホッとして元気になる。
「君がいるだけで」とカールスモーキー石井は歌ったが、まさにそんな感じ。
たとえば君がいるだけで
心が強くなれること
なにより大切なものを
気づかせてくれたね
一方、奥さんは違う。
僕がいて、ニコニコしているだけで元気になるような回路はないらしい。
欲しいものはたくさんあるの
きらめく星くずの指輪
寄せる波で組み立てた椅子
世界中の花 集めつくる オーデコロン
と矢野顕子が名曲『ひとつだけ』の中で歌うように、自分を満たすものがあると、彼女はニコニコしている。ちなみに「一番たのしいことは、あなたの口からあなたの夢、聞くこと」とはならない。
女の彼女は自分を満たす。
それを見た男の僕が満たされる。
こうなっているとき、僕たちの関係はとてもいい。
逆に調子が悪くのは、こんなパターンだ。
僕は萎えている。仕事がうまくいかなかったり、ひどい言葉で罵られたりしてやる気がなくなり、ふて腐れる。全部どうでもよくなる。
それを見て、奥さんが不安になる。「この人はだめだ。自分で稼いで生きていかなければ」と頑張りはじめる。
彼女は僕を批判する。「私ばっかり頑張っている」と。そうして僕はますます萎える。
男は萎え、女は乾く。
互いに批判しあい、繋がれず、ひどくくたびれてしまう。
関係はどんどん悪化する。
僕が「男にならねば」と思ったきっかけは、これを散々経験したからだ。
そして、いまもなおその途上にある。
で、「こうすればいいのではないか」と思っていることがある。
僕は「男になる」。社会に出て、力を発揮し、お金を稼ぐ。
そのお金で奥さんは欲しいものを買う。自分を満たす。
そのうれしそうな様子を見て、僕はますます元気になり、また稼ぎに行く。
男は稼ぎ、女は自分を満たす。
それが関係を円滑にまわすための、それぞれの役割なのではないか、この役割を果たせば、ぼくらの関係はいつも良好に保てるのではないか、と。
ただ、この考えには疑問も残る。
働いて活躍したい女性だっているからだ。
僕自身、女性の仕事に感動をおぼえたことは何度だってあるし、職場にいても女性の存在はとてもありがたい。
実際、うちの奥さんもあまり家に入るようなタイプには見えない。リーディングやヨガ、あるいはアクセサリーを作ったりしてお客さんと接しているとき、彼女は実にいきいきとしている。また、稼ぐことにも興味がある。
「男性」「女性」という性差と、人の中に両方あるという「男性性」「女性性」の配合率の話とがごっちゃになっているのか、僕たち夫婦は、まだちょうどいいバランスを見つけられていない。
僕と奥さん、男性と女性、男と女が、ともに「君といつまでも」と思うとき、二人はどんなことをして、どんなふうに生きているのだろうか。
若大将に教えてほしいところだが、そういえば、あの曲でも「いいだろう?」の返事はなかった。
などと思っていた矢先に、この記事が目に入った。
中谷美紀が結婚正式発表
https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20181127-00404082-nksports-ent
自らの仕事場を「主戦場」と書く女優、中谷美紀さんとドイツ人ビオラ奏者のフェヒナー氏との結婚の報。
提供された写真は、まさに「男と女」という感じで美しかった。
ともに山歩きをするときなどは、常にこちらのペース配分に配慮し、自らの楽しみや利益よりも、人の幸せを優先する彼の人柄にひかれました。
彼らは社会で大活躍しており、同時に男と女でもある。
お二人の結婚のニュースは、この先、人生という「山歩き」をしようとする自分たちの方向性を示しているように僕には思えた。
奥さんは「そうかな」って言うような気もするけれど。
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