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ワクワクゆいレールの旅・その①

沖縄の玄関口那覇空港駅と浦添市のてだこ浦西駅をつなぐ全長17kmのゆいレールを3往復する。
運転席のすぐ後ろの席を陣取り、ただただ、ゆいレールからの景色を楽しむ。
旅のスタイルに決まりはないし、それぞれの余暇の楽しみ方は自由だ。
はるばる沖縄まで行き、ゆいレールに身を預ける旅は旅人の視点から見て非日常そのもの、旅の醍醐味である。

琉球古典芸能コンクールの付き添いをした日、ちゃっかり沖縄までついてきた夫とは朝から昼過ぎまで別行動だった。4泊した那覇での生活も最終日、夕方の飛行機で家路につくスケジュールだ。
夫は両手に巨大なスーツケースを2つ持ち、スーツケースに入りきれない荷物の入ったトートバッグを肩に引っかけ、2丁の三線ケースまで抱えて、まるで荷物がやたらと多いヤドカリのようだ。
大きな荷物を持ってコンクール会場に行くことは気が引けたので、夫がすべての荷物を持つ苦肉の策である。

しかし、ひとりポツンと放たれる那覇の街にワクワクが止まらないという表情で「じゃあ、またあとで。」とゆいレール県庁前駅で別れた。

空高く上がった太陽が西の海を目指しユラユラし始めた頃、付き添いを終えた私はゆいレール県庁前駅の改札から夫に連絡をする。帰ってきたLINEには、
「いま、ゆいレール。2往復目。もうすぐ県庁前駅。一緒にゆいレール往復しようぜ。」
5歳年上の夫が5才に思えた。

小走りでホームに急ぐ。
急ぐ必要はないのだが、また風変わりな事を楽しんでいる夫に呆れる一方、何やらうらやましい気持ちに胸が急かされた。
半日振りに会った夫は今朝と変わらない荷物の山に埋もれ、ゆいレールの先頭の席に陣取り得意そうだった。

夫曰く、レンタカーを返して空港で荷物を預けようと思ったがゆいレールが楽しそうに見えて思わず乗ったらしい。手には1日乗り放題の切符が握りしめられていた。
ゆいレールは800円で1日乗り放題出来るフリー乗車券が発売されている。

夫はゆいレールからの景色が絶景だと言う。
那覇に着いて5日間のほとんどの時間を那覇で過ごした。ゆいレールからはレンタカーで通った道や場所、訪れた名店が見え興味深いと言う。
反面、2往復目に入ったところで車掌さんらしき人が1人増えた。怪しまれているかもしれないから早く私と合流したかったと眉をひそめて話す。

ロン毛にアゴヒゲの容姿の夫は日常的に怪しまれることが多い。妻として大変遺憾で「ウチの亭主だ。文句あるか!」と言いたい。
しかし先日も、ショッピングモールで夫が台所用品売場で買い物をしていたところ、真後ろに警備員が現れたという。
もう、だからさ、心優しい妻帯者です。
確かに端から見れば警戒するに正しいだろう。
ロン毛でアゴヒゲを蓄えた大柄な男が1人、スーツケース2個、三線2丁、A3サイズのトートバッグを肩から下げてニコニコしなからがゆいレールを往復し続けているのだもの。
苦笑いと同時に私の那覇最終日の余暇の訪れに頬がゆるんだ。
こうして私のワクワクゆいレールの旅は始まったのである。

つづく。





























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