学校に行かず、まずは世界を見て学べ

医者は、何か新しいスキルや知識を学ぶ際に、とりあえず学校やレクチャーを受ける人が多いと思います。

僕はあんまりいい方法ではないと思っています。

知識を体系化することにデメリットもあるからです。

非医療関係者にも当てはまることがあると思うので以下例を交えて解説します。

以前内科を専門とする医者の話を聞きました。

糖尿病などの生活習慣病、タバコや過度な飲酒などの健康に悪い習慣をなくしていくのを、
サポートしていくのが目標だそうです。

それらの習慣を持っている人に対して、いかに「行動変容」させられるかが、キーとなってくるとのこと。

http://hospital.tokuyamaishikai.com/medical/checkup/process.html

行動変容とは、上の5つのステップでなっており、どのフェーズにいるのか、見極めながらサポートしていく必要がある、、とのこと。

で、そのための手法を大学で勉強したということでした。

さらに、
美容クリニックを開くにあたり、経営の勉強をしようと思って、
MBA(経営学修士)のオンラインコースを取ったという医師もいました。

他の医師を見ていると、投資をしたいからファイナンシャルプランナーを取った人もいました。

このように、
新しい物事を習得しようとする→まず学科で体系的な知識を学ぶ(金を払う)ことを
無闇にやりますが、この発想を持っているとかなり効率が悪いし、結構抜けも多いです

え!学校に行った方が早く効率よく学べるんじゃないのと思うと思います。

では、一つ目の患者(になりそうな人)に行動変容させたい医者のケースについて考えます。

当たり前ですが、行動変容なんて、商取引ではどこでもやっています

行動変容で最も難しい行動の一つが、多額のお金を払い続けることでしょう。

医療以外を見てください、住宅ローンや、詐欺まがいのリボ払いシステムをほしくもない人が契約している事例を見ると、社会ではもう実装済みです。

では、この方法論と理論について、
当事者(詐欺師)が、研究し、論文を書くでしょうか?1つもないと断言します。
営業の新人研修でのマニュアルで載っているくらいです。

現実にはすでに実践されて効果もあがっているのに、明文化されていない、体系化されていない知識やメソッドは山ほどあります。

確かに、行動変容の方法など、医学的に研究されているでしょう
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jpnwocm/27/1/27_28/_pdf/-char/ja

後付けの分析で、こんな単純な図式を書くこと自体が、
リアルワールドの実証フィルターに揉まれていないように見えます。
人間の細かいインセンティブや、複雑で場当たり的、日和見的な行動が、ここまでシンプルにまとめられるはずないと思うんですよね。

この図式を片手に、アルコールの匂いをぷんぷんさせて、ギャンブルで無一文になった患者さんの行動変容を促せるかというと、できる場合もあるとは思いますが、そんなにすんなり行かないのは想像に難くないのかなと思います。

つまり、論文や教科として学んでいる内容の方が後追いです。

学校で教わる体系化された知識が、陳腐で、理論だけの、例外に対応しない、使い物にならない可能性が高いです。

にもかからず、学歴のある人は特に、新しいことを学ぶのに、まず教科書から手をつける場合が多い印象があります。

受験勉強のせいかもしれません、何か始めるにはまず参考書というふうに。

でも、現実世界では(数学や物理など理論科学の分野を除いて)、体系化された知識で歯が立たない場合が多いです。

なぜかというと、そもそも、体系化とは人間が区分しているものだからです。

イメージとして専門知識とは、専門家と言われる人々の知識の分布をヒストグラム(分布図)にしたときに、
多くの人が共通して持っている知識をまとめたものです。

医師の世界だと、専門医試験に要求される知識の範囲といったところです。

ただ、現実世界は、いろんな要素がスペクトラムです。(範囲が存在しない分布という意味で言っています、要するになんでもあり)

人間が必要と思って区分した知識はあくまで人間が作ったものですから、
自然とか現実世界は、そんなことはお構いなしです。

一方で、試験をパスした、専門知識を持っていると言われる人たちも、やはり抜けているところ、他の人が知らないことを知っていたりしますから、現実にはヒストグラムのような像が実態だと思います。

人間の知識とは、ブロック化しているわけではなく、神経のネットワークの性質からも、
多数の知識が組み合わさってできている、モザイク状の像ようであることはわかっていますし、実際そうでないと説明できないことが多いです。

人によって、モザイクのここは密度が濃い(詳しい)などの分布の偏りがあるというのが、本当の姿ではないでしょうか。

注意として、ブロック化して学ぶと、ブロックの外の知識の関連が切れてしまいます。実際にはあるのにも関わらずです。

例えば、医学部では、四肢の筋肉や骨格の解剖が詳しく教えられていません。

膝が痛い人の検査をしてみると、なぜ膝蓋骨(膝に触れる丸い骨)と大腿骨(太ももの骨)の間の関節、膝蓋大腿関節に変性が起こっている場合が多いですが、大腿四頭筋(膝蓋骨をつなぐ太ももの前面の筋肉)を主に歩行で使ってしまっているなどということに想像が及ばなくなってきます。

※歩きに大腿四頭筋を主に使うので、膝蓋骨が引っ張られ、大腿骨に過度に押しつけられることで変性が生じます。つまり歩容(歩き方)が適切でないということになります。

このように、現実世界では、区分した知識の外からの影響が起こるので、限定することは逆に物事が見えにくくなってしまうのです。ここは注意しなければなりません。大抵の人は、資格を取っただけ、学校に行っただけで満足してしまうので、なかなかこのことがわからなかったりします。

話を戻しますが、
言語化されていないのに、現実ではうまく行っている現象から、目で見て学ぶことの方が大切なのかなって思います。

なぜSNSの「いいね!」通知や着信通知は赤いものが多いのか、とかですね。

世の中でうまく動いているシステム、人々の挙動、デザインなどは、それらの実践的な経験が生かされていることが多いです。

しかも、、お値段は無料で、量はほぼ無限で、瞬間的に使えたりします。
(行動変容の5つのステップののろさを見てください)