強制される医学や科学の研究①

僕は何回か研究を経験しています。大学で、細胞や薬品を扱って実験したり、病院では、患者の治療結果を集計したりしました。

命令されてやった研究は、直接指示した人間もなんのためにやっているのかちゃんとわかっていないようでした。

ところが、強制されなくなるとなぜか研究しないとわからない仮説が山ほど浮かんできます。

研究を面白いように見せて、なぜ人が去っていくのか、
しょぼい研究なのに、なぜ面白いのか、
体験ベースで分析しています。

最初に研究に触れたのは、医学部に入る前の大学ででした。当時僕は薬学部に在籍していました。

学部の授業は、化学と生物学が中心でした。
午後には毎日実験をしていました。

授業はひどくて、学問的なものは大体6割くらい(ひどいとほとんど)で、あとはひたすら教官のやっている研究についての紹介です。

「あるタイプの細胞の中のあるタンパク質のある性質を調べてます」と言われても、
ある中央アジアの国のある村のある男女のある日の喧嘩の話を聞かされている感じです。

その性質とやらが未解明の部分のどこに当たるのか、それがわかると何がわかるのかと言った説明はほとんどなかったです。
つまり、遠国の男女の喧嘩の話が、日本にいる我々にどう役立つかはわからないままという感じでした。

「ほら、面白いでしょ?」との一言で締め括られました。

毎回これだと飽き飽きしてきます。

研究室に配属されて、「何がしたい?」といわれても、特にありませんでした。
大学院修士課程のレベルの知識は独学していて大体あって、理解はできましたが、何をしたいのかはなかったです。
他の人はそうではないのかなと思って聞いてみたら、少なからず同じでした。
せいぜい、「免疫はすごい」と言って免疫の研究室に入っていった人がいたくらいです。
(研究職に意気揚々だったその人たちは今研究していません)

で、訳もわからずテーマを与えられて実験しました。

その後、医学部に入って、半年ほど海外に留学する機会がありました。

研究室に着くと、「僕たちは、細胞と細胞の間に物質が通り抜ける仕組みを知りたい。これを知るためには、どういった実験や検証の方法をすればいいかな?候補を挙げてきてほしい」と、課題をもらいました。

僕は既存の研究を調べて、自分の考えも含めて、3つ候補を挙げ、メリットとデメリットを紹介しました。

その候補は直ちに使われるわけではなかったのですが、その前段階のテーマを与えられて、研究をすることになりました。

ただ、日本の時と違ったのは、この分野では、何がわかっていなくて、どう証明すればいいのか、これが失敗だったら何をすればいいのか、という点について、研究者たちは理解しながらやっていました。

日本の研究者の著書を読んでも、分野が違っても、なんだか細々とした知識や当たり障りのない説明ばっかりです。
こんなこともあるよとか小さいコラムで書かれています。
面白さを伝えるためにやっているのでしょうか。

例を無作為に挙げると、宇宙生物学の本
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ひどいと自分の研究ばっかり書いてあります。一種のマスターベーションでしょうか。

海外の医学や科学研究の一線の人の著書を読むと、研究している分野の全体の方向性や限界、今どこを掘り進めようとしているのか、何が問題だと”著者は”考えるのか、といったことがちゃんと書かれてあり、読者でありながらも「こういう実験をしたらどうか」と言ったことが思いつき、あたかも自分もその分野に参加しているようです。


例えば、認知症の本

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つまり、わかっていること、わかっていないことの趨勢を説明できているのかどうかが違うのです。

もちろん全部が全部というわけではないと思いますが、同級生の誰もが、自分の研究の位置付けみたいなものが説明できなかったことを踏まえると、あるあるなのかなと感じます。

要するに、知識があって実験が(手技として)できても、何やっているかわかっていなかったら、研究の当事者意識が生まれないんですよね。

指示する側はわかっていたのかもしれませんが、それを教育することもなく
指示される側に手をとにかく動かせ(実験を進めろ)という感じで、
実験の進捗報告書を書かされ、
そのくせ大学院に進学しないというと、ハラスメントを受けるという終わっている状態でした。
(ハラスメントは僕がいた頃は常態化していました)

この状況で、研究職が魅力だと思う人が多くなるとは思えないです。
そんなわけで僕の学年では、研究を目指していたほとんどが研究職を捨てて、クソ外資系コンサル、獰猛な外資系投資銀行に就職しました。

面白いでしょうキャンペーンをしても、結局誰もついてこなかったわけです。
地上の楽園キャンペーンをしたかつての北朝鮮に近いですね。

印象ですが、日本の化学や生物学の研究者は、逆に能力が低い、優秀でない人が多いのかもと思いました。

でも、海外で研究したときは、見方が変わりました。
少なくとも研究室のメンバーは、自分で進めたいと思って自分の意志でいるので、
別に生産管理やノルマを設定しなくても、仕事は進んでいくんですよね。

僕の経験では、人間的な生活ができなくなるほど、強制されて仕事されることもなかったです。

海外の研究室はお金もなく治安も悪かったですが、自分が何をしているのか、どんな限界が待ち受けているのかを体感しながらやっていたので、早く知りたいという気持ちが強く、楽しかったです。

続く