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日建グループ オープン社内報|私のこだわりの住まい②

夫婦でつくりだす「粋」

頭井秀和・野村奈菜子
日建設計 設計部門

ここは、都心にありながらレトロな雰囲気を残す街並みと、隠れ家的なグルメスポットの多さから、頻繁にTVや雑誌などで紹介されている場所です。
頭井夫妻は、2011年から築約60年の一軒家を借りました。同期入社で共に設計者というお二人は、入居時に大がかりなセルフリノベーションを行い、その後も改修を重ねながら、ご家族のライフスタイルに合わせて住まいを進化させています。入居から10年の歩みと今後の展望などについてお話をうかがいました。

築60年の古民家を借りてセルフリノベーション

――最初に、古民家に住もうと思ったきっかけを教えてください。
 
頭井:二人とも日建設計に勤めているので会社に近い所がいいという理由で近場の物件を探している時に、「リノベーション可、原状復帰不要」という古い住宅を見つけました。10年前でしたので私達も体力がありましたし、仕事の上でも勉強になるだろうと思い、セルフリノベーションを前提に借りることにしました。
 
―― 既存の住宅をどのように変えていったのでしょうか。
 
野村:今まで大きく3回くらい手を加えていますが、やはり住み始めの時が一番大がかりでした。1月くらいから住み始めたのですが、壁と天井を壊し、外壁周りの壁と床を貼るという作業を3月くらいにかけて行いました。既存の間取りでは1階がそれぞれ4畳半のダイニング、リビング、掘り炬燵付きの和室と細かく区切られていましたので、仕切りの壁をほぼ全部壊してリビング・ダイニングにしました。和室の押入れ部分にあった6本の柱は残して、アクセントにしています。

改修前(1階・2階)
改修前の室内
改修後(1階・2階)

―― かなり大がかりな工事だったようですが、工務店に頼むという考えはなかったのでしょうか。また、図面はどうされたのですか?
 
頭井:リノベーションを全て自分達でやったわけではありません。まるっと工務店さんにお願いするという選択肢もありましたが、賃貸物件ということもありなるべく外注費は抑えたいという気持ちがありました。結局水平に仕上げるのが難しそうな床と、トイレなどの水回りはプロにお願いしました。また図面は二人で実測を行い描きました。お互い設計者なので意見が異なることもありましたが、そもそも狭い空間で出費を抑えるという制約もあったので、意見がぶつかるというよりお互いに意見を出し合って形にしていったという感じでした。

古いものと新しいものを対比して両立させる

―― 制約の多い中で、こだわった点はどこでしょうか。
 
頭井:解体するからこそできる状況を作ろうと考えていました。例えば、和室の押し入れにあった6本の柱をあえて残したのは、新築で設計したときには起こらない状況ですし、空間的に面白いだろうという狙いがありました。もし構造的に可能だったら柱の上部を吹き抜けにしてみたかったのですが、影響が大きそうなのであきらめました。今、柱の奥の部屋は子供が使っていて、リビングと子供部屋をゆるやかに隔てるちょうどよい仕切りになっています。既存のものを残したという点では、すりガラスのサッシはそのまま残しました。私も妻も首都圏郊外で育ったので、人家が密集している環境は初めてだったのですが、すりガラスだと視線を遮りながらも自然光が入ってくるので、思った以上に外部環境を享受しながら生活ができています。子供が日の出とともに目を覚ます早起きになったという予想外の効果もありました。(困)
 
野村:リノベーションというのは単に建て替えるのではなく、元からあった古いものと新しいものが対比的に組み合わせることだと思っていますので、既存のものをうまく生かしていることに満足しています。

―― その他の部分でこだわった点をぜひ教えてください。
 
頭井: 2階のふすまの障子をはがしてポリカーボネートを貼ったり、押し入れは上から合板を貼って手掛けの部分を隠して壁のように見せています(実際は微妙な段差を設けて手掛けの代わりにしている)。窓も額縁をなくしてシンプルな納まりにしています。既存は砂壁でしたのでその上に直接施工することができる珪藻土で仕上げました。ちなみに壁を塗る時は、同期の仲間に手伝ってもらいました。
 
野村:壁面の切り替えも新旧で明確に分けました。天井を張り直した空間と天井撤去後そのまま現しにした空間とがありますが、ボード壁の上端は一律天井を張る部屋側に揃え、現しの空間側では既存外壁の裏もそのまま見せています。一部上端まで張る必要があった壁の上部は、既存外壁裏のトーンに合わせて塗装しました。
 
頭井:ポリカーボネートを貼った窓もそうですが、細かい改装は図面なしで採寸して行いました。最初は採寸ギリギリで製作してましたが、木材の伸び縮みによって仕上げが歪んでしまったりなど、トライ&エラーを繰り返して勉強しながら進めてきました。

これからのライフスタイルに合わせて住まいもさらに進化する

―― ライフスタイルの変化に合わせて対応できるのがセルフリノベーションの良いところだと思いますが、「今度はこうしよう」という構想はありますか?
 
頭井:一番は子供部屋問題です。子供が生まれてすぐの時は部屋全体に白いマットを敷いて明るい雰囲気に、そしてハイハイを始めたらソファの向きを変えてリビングまで出て来られないための仕切りにしたり、成長に合わせて変化させてきました。来年小学生になりますので、これを機に個室をつくるかを検討中です。作るとしたら柱の部分に壁を建てることになるかもしれませんが、そもそも個室が必要なのかという意識もあって悩んでいるところです。
また、リモートワーク時代に合わせて、仕事部屋のような個室をつくる必要性を感じています。現在は1階のリビングを学習・仕事の場所としていますが、夫婦で在宅勤務をしていて2人ともWeb会議になってしまうと大変です。1人はデスクのない2階の畳部屋に行かざるをえず、カメラをオフにしてゴロゴロしながら会議しないといけない(笑)。ここはぜひ改善したいですね。幸い、同時に在宅のケースは少ないので最悪の事態は免れていますが。

野村:リモート時代では会社が近いことは逆にデメリットかもしれません(笑)。何かあればすぐに行けてしまうので、つい出社してしまうんです。

―― 今のお宅も素晴らしいですが、借家ですからいつかは手放さないといけません。持ち家を、というお考えはお持ちなのでしょうか。
 
頭井:先立つものがあればいつでも(笑)。二人とも建築をやっているので、いずれは自分達で設計した家を建てたいという気持ちはあります。
 
野村:大家さんとしては、家を貸すのは私達で最後にするつもりだったようです。原状復帰しなくて良いという条件も、取り壊す予定だからと聞きました。
 
頭井:借りる時は不動産価格が今より低かったのと築60年ということもあり、家賃は相場よりだいぶ安かったです。それもあってなかなかここを離れられないのですが、正直我々が手を加えたことで「家」としての価値は上がっていると思います(笑)。今この家を出たら次に借りる人は得するのではないかと思いますね。ただ、大がかりなセルフリノベーションを若い時にやれたというのは大きな財産になったと思います。特に解体は、今やれと言われても時間的にも体力的にもできないと思います。子供の成長やライフスタイルの変化などを見ながら、これからどうするかを継続して考えていきたいと思っています。

※これは、2021年10月に社内報(日建グループ報)に掲載したインタビュー記事です。

頭井 秀和
日建設計 設計部門 アソシエイト
2010年入社、設計部門設計部に所属し専門は建築意匠設計。入社以来、学校・オフィスビル・研究所・工場・住宅など様々なビルディングタイプを設計。主な担当プロジェクトは「港区立小中一貫教育校 白金の丘学園」「早稲田大学高等学院 72-2、73、73-3号館」「全薬工業研究開発センター」「栗田工業 Kurita Innovation Hub」「武蔵藤沢の家」など。好きな言葉は「悪魔のように細心に、天使のように大胆に」。

野村 奈菜子
日建設計 設計部門 
2010年入社、設計部門設計部に所属し専門は建築意匠設計。入社以来、オフィスビルを中心に、ホテルや幼稚舎、住宅など設計。主な担当プロジェクトは「沖縄科学技術大学院大学CDC」「JR東日本ホテルメッツ東京ベイ新木場」「SMBC新橋ビル」「武蔵藤沢の家」「駒込の住宅」など。設計は潔さを、私生活は身軽さを意識して趣向を凝らす日々。

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