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クラウドプラットフォームを活用したセンサー・設備制御・人ネットワークシステム|スマホが取り持つ人と建物の相互コミュニケーション

大浦 理路 
日建設計 デジタルソリューションラボ
コンサルタント

日建設計は、エクシオグループ、WHERE、オムロン、神田通信機、X1Studio、内田洋行と、オフィスにおけるクラウドプラットフォームを活用したセンサー・設備制御ネットワークシステムの構築に取り組んでいます。センサーから取得した人の位置情報や建物内の温湿度、照度などの環境情報をクラウドプラットフォーム上に統合し、空調や照明などの建築設備を連携することで、快適かつ効率的に環境を形成し、働き方改革への対応や脱炭素社会の実現に寄与します。

全体最適化と相互コミュニケーション

従来、 空調・照明・防犯・防災・日射遮蔽・映像音響などの建築設備では、各システムが独自にセンサーを設置しており、相互無関係な個別最適に制御されてきました。これに対し、より快適に、より効率的に建築空間を運用し、生産性向上や脱炭素化を促進するためには、全体最適化を可能とするシステム開発が必要となります。

図1  従来システムと本協創システム

本協創は2020年にスタートし、現在、浸透しつつあるビルOSのような”クラウドプラットフォームを利用したセンシングと制御のオープンな連携”の端緒になると考え、ネットワーク、センサー、設備制御などの連携による建築空間の統合的な全体最適化の実現を目指していました。
その後、日建設計東京オフィスのカーボンニュートラルを目指し一層の省エネルギーを必要とする中で、建物側の最適化だけでは限界があることが分かりました。これを受けて、建物を使う人にも行動を起こしてもらい、建物の使い方にまで踏み込んでエネルギーを削減するという方向性を模索し始めました。センサーによって環境や行動を計測し、設備制御によって建築を操作し、アプリによって建築の提案と人の指示を伝達するという相互コミュニケーションが可能な、建築と人が相互に作用を及ぼす双方向的な関係の実現も目指しています。

図2  要素技術の連携イメージ

要素技術と各社の役割

図3  各社役割

位置情報に基づく照明・空調制御

本協創では、まずサーモパイル型人感センサーやスマホ等の位置情報を利用して、脱炭素に寄与する照明制御を実現しました。従来の照明制御技術は、焦電型赤外線センサーが人の位置を正確に把握出来ないということと、動きのない人を検知できないということが課題としてありましたが、温度に基づいて900×900mm単位で人体検知が可能なサーモパイル型人感センサーを利用して、在不在と通過を判断する照明制御を行っています。

図4  在不在と通過を判断する照明制御

また次のステップでは、空調との連携に取り組みました。これまでの照明・空調制御は滞在人数に依らず、一様で快適な環境を提供していましたが、スマホの位置情報に基づいて、無人の空間は照明・空調を停止し、人数の少ない空間は照明・空調の設定を緩和する制御を試行しています。

図5  滞在人数に応じた照明・空調制御

環境行動アプリとのさらなる連携を目指す

これまでの多くのシステムは、各設備が独自にアプリケーションを保有し、アプリケーションが乱立することでユーザーの使いやすさを損なうという煩雑性がありました。また、ユーザーがその場所に居なくても制御ができてしまうという課題もありました。
そこで今回、位置情報の可視化に加え、照明の表示と制御を一つのスマートフォンアプリケーションで行える仕組みとして「統合UIアプリ」を構築しました。フロア内のエリア毎に、明るさや色温度の調整、シーンの選択など細やかな設定を可能とします。位置情報に基づき、アプリで操作を行うユーザーが居るエリア内のみ、制御可能としています。

図6  統合UIアプリのイメージ

また今後の方向性として、空調の表示と制御の追加と、統合UIアプリから空調・照明の停止や緩和を行ったことを環境行動アプリAsapp※1で評価すると共に、Asappからユーザーに停止や緩和を行う提案を通知し、環境行動を促す機能の追加を企図しています。カーボンニュートラルの実現には、建物側の最適化だけでなく、個人の環境意識に基づく行動が重要であると分かっており、誰もが簡単に設備制御を行える本ツールをAsappと併用することで、さらなる行動変容の促進を目指します。

プレスリリース
※1 日建設計が開発したオフィスワーカー一人ひとりの仕事中のCO2排出量と削減量を可視化することによって、環境意識を醸成し、環境行動を促すスマートフォンアプリケーション「Asapp (アサップ)」(特許出願中)

※2 プレスリリース(第1報):ワークプレイスの有効利用と室内環境の最適化を目指す
クラウドプラットフォームを活用したセンサー・設備制御ネットワークシステムの協創
 

※3 プレスリリース(第2報):クラウドプラットフォームを活用したセンサー・設備制御ネットワークシステムの協創~照明・空調設備制御連携とAI活用検証を開始~

※4 プレスリリース(第3報):クラウドプラットフォームを活用したセンサー・設備制御ネットワークシステムの協創(第3報)
人の位置情報の可視化や照明の表示・制御が可能な統合UIアプリを実装、環境行動アプリAsapp※1との連携を目指す

大浦 理路
日建設計 デジタルソリューションラボ
コンサルタント
2015年、東京大学大学院建築学専攻を修了後、日建設計に入社。入社から2018年まで設備設計に従事し、2019年よりデジタルソリューションラボにて、人工知能を用いた空調制御やヒューマンセンシングによる空間趣向性の分析など、建築における最先端技術利用のシーンを試行・実践している。

共同開発チーム
・株式会社日建設計:全体統合と建築・ワークプレイスへの適用および環境行動アプリ
・エクシオグループ株式会社・株式会社WHERE:クラウドプラットフォーおよびBluetoothネットワーク
・オムロン株式会社:サーモパイル型人感センサーおよび環境センサー
・神田通信機株式会社:照明制御
・X1Studio株式会社:空調制御
・株式会社内田洋行:統合されたユーザインターフェース

クレジット情報
TOP写真:永禮賢

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