マッピング解法で解く!私大現代文《4》──関西学院大学(前編)
❖武者修行の旅,関西に乗り込む!
関西にやってきました。
「関関同立」の一角を担う関西学院大学,2021年度一般選抜全学日程(2021年2月2日実施)【国語】大問1[評論]がお相手です。傍線部問題を中心に,前編で2問,後編で3問を取り上げます。
難易度は前回までの青山学院大学より1~2段階上がり,標準レベルの設問を中心に構成されています。数多くの問題を解いて経験値を上げ,マッピングスキルに磨きをかけていきましょう。
ちなみに「え,マッピング解法って何?」という方は,以下の記事から入って本シリーズ「青山学院大学編」にざっと目を通しておいてください。
❖ダイレクトマッピングで釣果あり!
問四から行きます。
傍線部「 より多元的なガバナンス(状況)」に着目し,その言い換え表現を選択肢中に探します。すると・・・・・・
「多元的」を「さまざま」,「ガバナンス」を「統治機構」と言い換えている選択肢イにスッと目が行きます。
他の選択肢には傍線部に相当する言い換え表現がなく,ダイレクトマッピングでイが正解の最有力候補に躍り出ました。
❖念のため「詰めの解釈」に踏み込むと・・・
ただ,イの「近代国家の枠組みにとどまらない」が傍線部と対応していないのが気になる人もいるでしょう。「言い換えマップ」で検証してみます。
本文では世界史を「身分制社会」「近代国家」「その後」の3つに分類しています。冒頭の「その後」に対応するのが「さらに」のあと,「近代国家を基本原理としつつ」発展した国々,すなわち現代の国家と解釈できます。現代の国家には,日本,アメリカ,中国,ロシア,EUなど,確かに「近代国家の枠組みにとどまらないさまざまな統治機構が存在」しています。
・・・・・・というように,本文に戻って詰めの解釈をすれば,選択肢イが正解であることを確信できます。
❖「詰めの解釈」に踏み込む前に潔く撤収!
ただ,このような詰めの解釈を誰もができるとは限りません。さらに,実際の試験ではそこまでの時間的余裕がなく,本文に戻って検討するうちに出口の見えない迷路にハマってしまうこともあります。
この設問の場合,選択肢イに対抗し得る有力な選択肢がないと分かった時点で,イを正解と認定してかまいません。貴重な時間を費やし,危険を冒してまで「詰めの解釈」に踏み込む必要性が薄いからです。
マッピング解法は,「危険を回避しつつ手際よく設問を処理する」「解釈に自信がなくてもどうにか正解する」のがモットーです。多少気になることがあっても,解釈に自信がなければ思い切り良く! 詰めの解釈に踏み込む前に潔く撤収しちゃいましょう。実際,正解はイです。
❖結果や理由を問う設問では「隠れ傍線部」を設定!
続いて問五です。
問五では,「傍線部『***』とあるが,その存在は何をもたらしたか」と問う,つまり「傍線部を原因とする結果」を聞いています。なので傍線部には「結果」が書かれていません。しかし,本文の中で結果について触れた箇所が必ずあります(そうでなければ問題として成立しない)。
マッピング解法では,本文中で「結果」が書かれている箇所を実質的な傍線部と捉え,「隠れ傍線部」として設定します。
傍線部の結果や理由を問う設問では,〔作業①〕をパスします(傍線部に結果や理由が書かれていないため)。しかし,あとはほぼ同じ。すなわち本文中の「隠れ傍線部」を設定する〔作業②〕と,選択肢の言い換え表現を「隠れ傍線部」の中に探す〔作業③〕で正解を仕留めに行きます。
❖選択肢と「隠れ傍線部」をマッピング!
実際にやってみましょう。
傍線部「諸身分を隔てる想像力の壁」は,直後の文の「その壁」とイコールで結べます。この一文の「人々」と「意識することもなかった」は,次の文ではそれぞれ「人民」と「思い浮かべることもなく」に対応しています。
下の言い換えマップで確認してください。
「人々」と「人民」で始まる2つの文には「人々(人民)がどうなったか」の結果が書かれていますので,「隠れ傍線部」として確定できます。
このあとは,〔作業③〕《選択肢──隠れ傍線部》マッピングで正解を当てに行きます。結果を下の言い換えマップで示します。
❖他の選択肢をざっと眺めてから撤収!
どうでしょうか。選択肢ハ「それぞれの身分について推測することができなくなり」は隠れ傍線部の2カ所(赤の下線部)と対応し,「各身分がそもそも不平等であることもわからくなった」はちょっとヒネっていますが,隠れ傍線部「主人と対等になりうるとは思いもよらない」を一般化した言い換え表現にもなっています。
他の選択肢をざっと眺めると,イに「推測することができなくなった」とありますが,そこに至るまでが隠れ傍線部と対応していないのでバツ。
前回お話ししたことですが,“地雷原”を避けつつ素早く正解を仕留めるために大切な基本原理を改めてまとめ直します(ただし例外もある)。
というわけで,深い解釈に踏み込むことなくハを正解とします。実際の正解もハ,ちゃんと仕留められましたよ。
残りの設問は後編で。次回またお会いしましょう!