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虹乃ノラン
2024年5月14日 02:07
第一章駁論(1) 黒いアスファルトにこびりつく、汚いガムさえ流し落とすような大雨の降るある夜に、俺にこんな言葉をくれた奴がいる。「悪夢を食べると言われる獏って生物を知ってるだろ。俺たちの仕事は、獏みたいなもんだ」 毎日、毎日人間どもの欲望の抜け殻を拾っては集め、そして金を貰い、俺たちは生きている。「キツイ」「キタナイ」「クサイ」 昔、3Kなんて言葉があったが、考えてみれば、地球上で幸せ
2024年6月2日 19:53
駁論(3) 俺たちはこうして複数通話をしながら退屈をやり過ごしている。 幸いにも五人の勤務時間はだいたい同じ深夜だからだ。 だが以前の俺たちは、電話をするような仲じゃなかった。回収中に繋ぎっぱなしでイヤホン通話するなんてもっての他。こうして結束するに至ったのは理由がある。 どこの組織にもいるだろうが、『吊るし上げられる者』の存在だ。共通の敵と言ってもいい。俺たちに関して言えば、それは会社