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虹乃ノラン
2024年5月14日 02:07
第一章駁論(1) 黒いアスファルトにこびりつく、汚いガムさえ流し落とすような大雨の降るある夜に、俺にこんな言葉をくれた奴がいる。「悪夢を食べると言われる獏って生物を知ってるだろ。俺たちの仕事は、獏みたいなもんだ」 毎日、毎日人間どもの欲望の抜け殻を拾っては集め、そして金を貰い、俺たちは生きている。「キツイ」「キタナイ」「クサイ」 昔、3Kなんて言葉があったが、考えてみれば、地球上で幸せ
2024年6月10日 10:54
駁論(4) イヤホンからコンビニの入店音が聴こえる。薄切りのロールケーキをミルフィーユ状にした「ミルフィーユ苺ロール」が今大ブレイク中の〝ファミラ〟だ。『おはよう! 久しぶりじゃないか? また夜勤のバイトに戻ったのかい?』 この声はハンサム。また店員の女を口説くつもりだろう。『なぁ? 今度飲みに行かない? 夜勤のバイトに復活したお祝いに俺に奢らせてよ!』 入りたくもないトイレを借りた
2024年6月10日 11:06
駁論(5) パッカー車を車庫へと戻し、報告書を提出するために事務所へ向かって歩いていると、事務所の前で、二人の男がタバコを咥えながら話しているのが見えた。一人がこれ見よがしにキンッと盛大に音を立ててライターの火を灯そうとする。 大して恰好良くもないのに、アンティークなのかただの中古なのかわからない、ミリタリーブランドのトンボ――ドラゴンフライのマークが付いた、古いオイルライターを大切そうに
2024年6月17日 11:40
莫迦(3) アトラスのナビに従って、俺はすぐに問題の店までたどり着いたが、その頃にはすでに事態は収束しそうな状況だった。「ジャスティス! 平気か?」 俺がパッカーを停めて駆け寄ると、ジャスティスは驚いた顔をした。「D.J.? 一体どうしたんだよ。ここはお前の担当じゃないだろ?」「あぁ、イケモトから話を聞いて心配になって様子を見に来た」 イヤホンからはしばらく黙っていたイケモトとアト