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虹乃ノラン
2024年5月10日 20:44
第一章動かない猫「いってきまーす!」 スニーカーを履いて玄関から飛び出すと、四月の風が頬をなでる。通いなれた道を歩いて今年で六年目。満開まであと少しの桜と日差しが、気持ちいい。 急にぽかぽかしてきた陽気のせいなのか、ベンチで眠りこけてるお年寄りや、バスが来てるのにぼーっと立ち尽くしているスーツ服のお姉さんなんかで目白押しだ。 大人になると忙しすぎて、みんな疲れちゃうのかな。 そんなこと
2024年5月13日 15:10
第四章黒野時計堂 白髪頭で、伸びっぱなしの無精ひげ。ニッコリと笑うしわくちゃの顔は優しそうだ。「ここはどこですか? 僕たち猫を追いかけてたら、いつの間にかここに来てしまって」「立ち話は、老人の私には堪えるよ。中でゆっくり話をしよう。さあ、みんな入って」 お爺さんはニコニコ顔でそう言うと、白猫をつれてお店の中へと入っていった。「ちょっと! あのお爺さん、絶対普通じゃないわよ⁉ あたしは行
2024年5月14日 11:35
第六章スカーフェイスを追って(1) ライオン公園はとにかく広い。園内マップが描かれた大看板の前で、紅葉が振り返る。「手分けした方がいいよね? 通信機もあるし。でも誰がどこに行く?」 黄道区は、海のある北側と南側で緩やかな高低差がある。南側のここ獅子丘町は山に面して緑も多いし、高台は見晴らし最高。起伏を活かした遊具やジョギングコースも運動に最適で、黄道区一大きなライオン公園がここに作られたの