セリフでやりがちなミス〜小説のちょっとしたコツ
小説のちょっとしたコツや小技をご紹介するシリーズ。
今回は「セリフでやりがちなミス」です。
やりがちなミス
小説を書き始めたばかりのころは、いろいろ失敗するものです。
初心者の方がセリフでやりがちなミスには、以下のようなものがあると思います。
誰のセリフかわからない
〜が言った。が続く
冗長、または説明的すぎる
それぞれ見ていきましょう。
1.誰のセリフかわからない
1つめは発話者がわからない問題です。
ネット小説やライトなエンタメ作品などでよく見かけます。
特にネット小説では、会話文の前後に空行をはさみ、セリフを一塊にする傾向がありますから、わりと頻繁に見かける印象です。
こんな感じですね。
セリフの応酬が地の文なしで続くと、誰が話しているのかわからなくなります。
こういうセリフを読んでイラッとする人は多いでしょうね。
誰が話しているのか推測しなければならず、負担が掛かるからです。
対処法はあたりまえですが、誰が話しているか書くことです。
ごく単純に言えば、すべてのセリフに発話者を書けばいいですが、それだとくどくなりすぎます。
ですので、読者を混乱させない最小限の情報を示すと考えればいいでしょう。
上の例で言えば、こんな感じでしょうか。
最後の2行のセリフは、どちらがどちらかわかりません。
ここも丁寧にやるなら、どちらが話しているか書いた方がいいですね。
もちろん
といった風に書いてもいいです。
2.〜が言った。が続く
2つめは「〜が言った」問題です。
逐一発話者を書き、かつ表現のバリエーションを考えないときに起こります。
表現が繰り返されると、韻を踏むように感じられ、無用な意味が生じます。
文章に規則性があると、不自然な印象になるのです。
対処法は、適当に表現をバラけさせることです。
こういうときこそ類語辞典などを使いましょう。
同じ表現が続かないように言い換えるのです。
一文の中だけでなく、近くに同じ表現が繰り返されていないか確認するといいですね。
たとえば「言った」の言い換えには
口を開いた
話しかけた
尋ねた
答えた
怒鳴った
問いかけた
叫んだ
声を出した
などがあるでしょう。
発話者がわかるときは省略するなどすれば、さらにバリエーションを増やせます。
またバリエーションという意味では、間接的な話法を使ってもいいですね。
3.冗長、または説明的すぎる
3つめは冗長になる、または説明的になる問題です。
日常的な会話は支離滅裂なものなので、そのまま書こうとすると冗長なものになります。
日常ものを書いている場合に起こりがちかもしれません。
「現実でのリアルな会話を入れれば、物語がリアルになるはず」と考えるかもしれませんが、そう簡単ではありません。
どのような物語を書きたいかによって、現実の混沌さをどの程度入れるかは調整しなければならないでしょう。
勘違いしている人もいるかもしれませんが、現実は混沌であり、フィクションは秩序的です。↓
ですから、がちがちのフィクションを書くなら、セリフも理屈が通ったものが必要であり、やや現実的な話を書くなら、曖昧なものを混ぜても問題ないということになります。
一方、セリフが説明的になりすぎる場合もあります。
これは上の図でいうと、フィクションを意識しすぎた結果起こることかもしれません。
情報提示を意識すればするほど、セリフは不自然になっていきます。
説明しすぎると、緊迫した場面でもおかしみが漂ってしまいます。
セリフで説明しすぎになるのは、それまでの間に情報提示をしていないからです。
ですから、情報は小出しにしておくというのが常識的な対策でしょう。
とはいえ、ネット小説や私がいるエンタメジャンルなどでは、セリフで説明するのも悪くないと思います。
読者が地の文を読むとは限らないからですね。
セリフだけを飛ばし読みする読者も比較的多い気がしています。
ですので、話がわからなくなるくらいなら、多少おかしくてもセリフで説明する方がいい場合もあると考えています。
この辺りのバランスは、ジャンルの読者層によって変える必要があるでしょう。
今回のまとめ
小説のちょっとしたコツ「セリフでやりがちなミス」でした。
初心者の方がやりがちな失敗がある
「発話者がわからない」「〜言った。が続く」「冗長すぎ、説明しすぎ」
発話者問題 → 最小限の情報で発話者を伝える
言った問題 → 「言った」を言い換えてバリエーションをつくる
冗長すぎる → 現実的なセリフを入れすぎない
説明しすぎ → 情報を小出しにしておく
セリフはできるだけ自然な方がいいですが、自然にしすぎると情報量が減るので、そこは意識する必要がありますね。
それではまたくまー。