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小説のあらすじを考えるたった1つのコツ

ライトエンタメ作品を出版している方や、ネット小説サイトに発表している方はお分かりだと思いますが、「あらすじ」はタイトルと同じくらい重要です。

ですが、あらすじについて考え違いをしている人も多いように感じます。

今回はあらすじの考え方をご紹介します。



あらすじの重要性

noteに小説を載せている方にはあまりピンと来ないかもしれませんが、あらすじほど重要なものはありません。

何度も同じことを書いていますが、作品が読まれるか読まれないかは、内容の良し悪しとは関係がありません。

なぜなら、読者は、内容を読む前に読むかどうかを決めるからです。

読む前に決めるので、当然ながら、内容は関係ないのです。


内容が関係ないとしたら、私たちは何を見て、その本を読むかどうかを決めるのでしょうか?

もちろん、タイトルとあらすじですね。

みなさんもタイトル(とあらすじ)を見て、読むかどうかを決めているはずです。


このように、作品の成功を左右する重大なあらすじですが、考え違いをしている人がプロにもいます。

いま新人の編集者さんとあらすじを作っているのですが、その方も大きな考え違いをしているようで困ってしまいました……

プロの編集者さんでさえ考え違いをするのですから、おそらく多くの人が同じ考え違いをしているはずです。


その考え違いとはこうです。

「あらすじは作品の内容を伝えるものだ」

これは完全に間違った考え方です。


あらすじは作品の内容を伝えるもの?

あらすじは、作品の内容を伝えるものではありません。

ここを勘違いしている限り、良いあらすじは絶対に書けないでしょう。


この勘違いをしている方は、こんな感じであらすじを作ってきます。

  • 物語の情報をできるだけたくさん入れようとする

  • 物語の情報をできるだけ網羅的に入れようとする


とにかく、物語の情報を、話の最初から最後まで、出来るだけたくさん入れようとするのですね。

すると、だいたいこうなります。

  • 情報量が多すぎる

  • いらない情報が多すぎる


これは典型的なダメあらすじです。

あらすじの良し悪しで、売り上げが何倍も変わります。

つまり、こういうあらすじを作ってくる人が担当さんだと、作家の利益が大幅に減るのです。

これは(作家の)生死に関わる重大な問題ですね笑。


では、どうすればいいでしょうか?

コツは簡単です。

あらすじとは何かが分かれば、すべて解決します。


あらすじとは何でしょう? それは……

「読者を釣るためのエサ」

です。


あらすじとはエサである

身も蓋もない表現ですが、あらすじとは「読者を釣るためのエサ」です。

もうちょっと言えば、読者に「これ買ってみよう!」と行動を促すのが、あらすじの役目です。


行動を起こさせないあらすじには、何の意味もありません。

その新人の編集者さんも、ここを完全に勘違いしているようです。


物語の内容を正確に伝えても仕方がありません。

読者をその気にさせることがあらすじの役目です。

情報がてんこ盛りで、ポイントも絞っていないようなあらすじなら、いっそない方がマシなくらいでしょう。


あらすじは、読者に本を買わせるため(読ませるため)にあります。

ですから、「読者がこの本を読みたくなるようなこと」だけ書けばいいのです。

この一点だけ心に留めておけば、ズレたあらすじを作ることはないはずです。


おそらく真面目な人ほど、「内容を網羅して、正確な情報をできるだけたくさん紹介しよう」と思ってしまうのでしょう。

そういう方向けに、あらすじを作るときに念頭に置いておくといいことを、いくつかご紹介します。


あらすじを作るときはこんな風に

同じことを何度も言いますが、あらすじに書くのは、「読者がこの本を読みたくなるようなこと」だけです。

それ以外のことを書いてはいけません。


以下のようなことを念頭に置くといいと思います。

  • ウリだけを書いて、ウリにならないことは書かない

  • 情報量を下げる

    • 規定文字数を全部使おうとしない

    • 一文を長くしすぎない

    • 漢字をたくさん使わない

    • 造語を使わない(誰もが分かる標準的な言葉に直す)

  • 物語をぜんぶ説明しようとしない

    • ただロジックは通した方がいい

  • 読者の気分がよくなるところまで書く

    • おいしいところを書く

    • ネタバレになってもいい

  • ややこしい設定などを書かない

    • 複雑な事情などは省いていい

  • 作中にないセリフを書いてもいい

    • 雰囲気が伝わるならそれでいい

  • 嘘をついてはいけないが、出す情報と出さない情報は選んでいい

    • ネガティブに受け取られそうな情報は出さないでいい


誤解を恐れずに言えば、内容に関する正しい情報を書く必要はありません。

嘘を書いてはいけませんが、良いところはきちんと伝え、良くない部分(売れ線でない部分や過酷な設定など)は書かなければいいのです。


このように、あらすじとは、言わば広告のようなものです。

多くの人に読んでもらうための仕掛けだと考えると作りやすくなるでしょう。

あらすじで困っている方は、ぜひ意識だけでも変えてみてください。

それだけで見違えるようなあらすじを書けるようになります。


今回のまとめ

「小説のあらすじを考えるコツ」でした。

  1. 作品を読むかどうかはタイトルとあらすじだけで決まる

  2. あらすじは作品の内容を伝えるものではない

  3. あらすじとは読者を釣るためのエサである

    1. 「これ買おう」と行動を起こさせるのがあらすじの役目

    2. 「本を読みたくなるようなこと」だけ書けばいい

  4. あらすじ = 読んでもらうための仕掛け

ちょっと新人編集者さんのあらすじが良くなかったので、記事にしてしまいました笑

こういうことは編集部で教えてあげてほしいのですが、忙しくてなかなか難しいのかもしれませんね。

それではまたくまー。


(2023.8.17追記)

出 雲太(いず うんた)さんに記事を取り上げていただきました!
ありがとうございます!

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