見出し画像

創作Q&A「長編が書けないんですけど…」

大学の授業や、小説の勉強会で出た質問に改めて答えてみるシリーズ。

今回の質問は「長編が書けないんですけど、どうすればいいですか?」です。

前回はこちら。↓


今回の質問

勉強会に参加してくれた作家志望者さんからの質問です。

「長編が書けないんですけど、どうすればいいですか?」


その人は短編をいくつも書いていて、ちょっとした賞も取ったことのある実力者でした。

ですが、長い話が書けずに悩んでいたようです。


同じような悩みを抱えている方もいるかもしれませんね。

さっそく、原因と対策を考えていきましょう。


質問への回答

短編は書けるのに長編が書けないのは、

「アイデアだけで書いている」

というのがそもそもの原因かなと思います。


ちょっと遠回りして説明していきましょう。

成果物を出すには、「アイデア」「ロジック」「表現」の3つが必要です。

創作に必要な3要素


アイデアを出し→ロジックで詰め→表現する、という3つのプロセスと捉えてもいいですし、アイデア力・ロジック力・表現力という3つの能力だと考えてもいいです。

小説で言えば、

  • アイデア:アイデアを出す

  • ロジック:ストーリーやキャラを構築する

  • 表現  :文章にする

です。


ところで、この3つの能力を言い換えると、次のようになります。↓

  • アイデア力: 発想する力 = 瞬発力

  • ロジック力: 構築する力 = 持久力

  • 表現力  : 出力する力 = 身体能力


アイデア力とは、パッと瞬間的に閃く力のことです。

言い換えると瞬発力ですね。

アイデアに偏った人(アイデア型の人)というのは、たとえれば、短距離走者のようなものでしょう。

ですから基本的には、短い枚数で勝負する短編が得意です。


一方、ロジック力とはコツコツと構築していく力のことです。

言い換えると持久力ですね。

よって、ロジックに偏った人(ロジック型の人)は長距離走者であり、積み上げていく長編が得意です。


以上を踏まえると、おそらく、この方はアイデア型の人なのでしょう。

切れ味の鋭いアイデアを出し、それを短い枚数で表現することに長けています。

ですが、短距離走者がマラソンが苦手なように、長編には向いていません。

長編を書くには、瞬間的な力ではなく、長く走り続ける持久力が必要だからです。


したがって、まずは、自分がアイデア型であり、瞬発力タイプであり、そもそも短編向きなのだと自覚することが最初の一歩です。

自分の現状がわからなければ、改善することもできません。

それがわかった上で、少しずつロジック方向にシフトしていくのがいいでしょう。


よって、質問への回答はこうなります。

「自分がアイデア型だと自覚し、ロジック方向へシフトしていく」


そのためにできる試みとしては、以下が良いと思います。


連作から始めよう

短編ばかり書いてきた人が、いきなり長編を書くのは難しいかもしれません。

ですので、短編だけど長編の要素も含んだ連作短編を書くのが、最初のとっかかりとしては良さそうです。


連作短編はミステリなどではよくあります。

一章ごとに話が終わりますが、全部読んでみると、すべての繋がりが見えて、大きな謎が解けるようになっている作品です。

これなら、一章ごとに短編の要領で書きつつ、全体的に長編になるよう構成すればいいので、短編から長編への橋渡しとしてちょうどいい練習になると思います。


長編が文庫換算で240ページくらいだとすれば、50〜60ページの話を4つか5つ書く感じで考えればいいでしょう。

だいたいにおいて、連作の最後の話は、主人公本人の話か、主人公に深く関係する話になるものです。

主人公の話が解決することで、全体的な謎が解けるように構成すれば、物語を上手く着地させることができるでしょう。


短編向きの人と長編向きの人

もちろん短編しか書けなくても、創作するのには何の問題もありません。

ですが、新人賞を目指したり、書籍化を目指す場合は、短編では難しいです。

短編の賞もありますが、賞の数自体が少ないですし、受賞しても短編で本を出せるわけではないからです。


ですので、作家を目指すなら、いずれは長編に挑戦するしかないと思います。

その点では、アイデア型の人は、最初は苦労するかもしれませんね。


ここで、アイデア力・ロジック力・表現力の3つの能力について、もう少し補足しておきましょう。

もちろん、3つの能力が高いレベルで揃っているのがベストです。

こういう人は、ある種の天才と言えます。

いずれ世に出ることは間違いありません。

なぜなら、世間が放っておかないからです。


ですので、逆に言うと、3年くらいがんばってまだ世に出ていないなら、3つの能力が揃っていないと考えた方がいいです。

だいたいは2つの能力をほどほどに持っているものでしょう。

作家志望者は、たいていの場合、表現力は持っているので、

  1. ロジック型 = ロジック力 + 表現力

  2. アイデア型 = アイデア力 + 表現力

の2つに大きく分かれると思います。


私は前者ですから、長編向きであり、結果が残せるのは足りない要素、つまり良いアイデアが出せたときになります。

一方、後者は短編向きですが、出したアイデアを上手くストーリーとして構築できたとき、良い結果が出るはずです。


つまり、両者は上手くいくときの条件が違うのですね。

このことは、ある程度わかっておいた方がいいでしょう。

何をすれば上手くいきそうなのか、目安をつけられるからです。

この機会に、自分がどちらのタイプなのか考えてみるのもいいですね。


今回のまとめ

今回の質問:「長編が書けないんですけど、どうすればいいですか?」

回答は「自分がアイデア型だと自覚し、ロジック方向にシフトしていく」でした。

  1. 創作にはアイデア力、ロジック力、表現力の3つの能力が必要

  2. アイデア力に偏ったアイデア型は、瞬発力に秀で、短編が得意

  3. ロジック力に偏ったロジック型は、持久力に優れ、長編が得意

  4. 短編しか書けない人は、自分がアイデア型だと自覚する

  5. その上でロジック方向にシフトしていく

  6. 連作短編を試すのがオススメ

  7. 連作なら、短編を書きつつ、長編構築の練習になる

  8. 短編しか書けないと、受賞や書籍化は難しい

  9. 自分がロジック型かアイデア型か知っておくと、上手くいくときの条件がわかる

先輩作家さんの中には、3つの能力が揃っている方が何人かいます。

そういう方は何度もヒットを出せるのですね。

毎回、すごいなあと思っています。

それではまたくまー。


(2023.3.20追記)
わーい!



(2023.3.16追記)
公式マガジンとは違うようですが、自動的にこちらにも載るのでしょうか。

よくわかりませんが、やったー!


(2023.3.15追記)
やったー!

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?