#15 【NPO法人にいまーる】 職員インタビュー vol.2 (後編)|臼井千恵
※前回の記事の続きです。まだ前編をご覧になっていない方は先にこちらをご覧ください。
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揺り籠から墓場まで
━ にいまーるは就労支援事業からスタートしたというお話でしたが、現在ではグループホームの運営も行っていますよね。グループホームはどのような理由から始めたのでしょうか。
かめこやを創った理由はいくつかありますが、大きく二つ。
一つは手楽来家での日中の支援では限界があったからです。日中に支援したとしても土曜日・日曜日や夜の時間帯を考えたときに、根本的な解決がなかなかできない課題もあるかなって思って。例えば、自分でお金の管理をできればいいんだけど、できない人もいる。やりたくてもできないことがある。
そういうできないっていう部分に対して、本人に努力を求めるだけではなくて、生活の場を変える、生活の仕組みを変えるという方法をとることで本人も過ごしやすいかもしれない。住まいの場の支援を通して、日中の支援もスムーズにできればいいかなと思ったのが理由の一つです。
もう一つは、何人かのろうの人から話を聞くと、やっぱり家庭のコミュニケーションが成り立ってないっていうか、ディナーテーブル症候群というのがあったので、ろう学校の寄宿舎みたいな、学生の寮みたいなものがあれば、手話が使える言語環境もあって、心身の安定にもつながるかなと思ったりとか。
大学にいたときに介護施設とかも見に行ったんですけど、ろうのための施設が少なすぎると感じたことも理由にあります。
聞こえる人のための施設はいっぱいある。私の実家の周りにもある。でもろうのための施設っていうと県に一つあるかないかくらいなので、そういう施設は増やしたいなっていうのもあったし、私が年を取って利用者になったときに行きたいと思える施設が今はないので、だから作らなきゃっていうのもありました。
━ 事業を拡大する際に考えていることや持っている信念のようなものはありますか?
元々にいまーるを立ち上げたときに、聴覚障害者にとって「いつどんな時でもアクセスできる拠点」を創りたいっていう話をしていて。
例えば今、放課後等デイサービスはないけれども、子供が生まれた親が「困った、ろうの子供をどうしよう」となったときに、にいまーるがある。次は子供が卒業した後、仕事をしたけれども結局うまくいかなかった、どうしよう、引き篭もるではなくて、にいまーるがある。それで次に自分が年を取ったときに仕事を辞めて、でどうするってなったときに、「にいまーるに行こう」みたいな。「揺り籠から墓場まで」という言葉もありますけど、常にいつでもアクセスできる拠点を創りたいなって思っています。
あとは、地方でもできるんだよっていうモデルになりたいとも思っています。
東京とか名古屋とか、都会はお金もあるし資源もある。足りないかもしれないけれど、田舎、地方と比べれば何とかできる。でも都会って少ないじゃん?地方の方が多いじゃない?新潟だからできないんでしょじゃなくて、新潟なのに出来るんだすごいねみたいな。
魅力のある街づくりにもなるし、新潟から発信できたらいいなって思ってます。にいまーるの見学をしたいっていう人を海外からも呼びたいですね(笑)。
今後の展望
━ 最後に、将来の目標を教えてください。
私も得意なことと苦手なことがあるので、例えば数字に関しては渡辺さんにバックアップというかサポートしてもらっています。一応経営者っていう肩書なんですけど、私一人で経営している感じではなくて、チームとしてやってるという感じです。
渡辺さんはいつもにいまーるにいるわけではないから、現場の実態とか現場の感覚を、私が言葉に変えて渡辺さんに伝えて、渡辺さんが数字をはじき出すみたいな、そういうように役割を分けて対応しています。
それが今までの10年。
で、今年からの新しい10年は渡辺さんだけじゃなくて、吉井さんとか横田さんとか、そういう若い人たちの力を借りていく。若い人たちにとっても自分の実力を試せる場っていうか、挑戦できる土台としてにいまーるを使ってほしいです。
今は渡辺さんも私も30代40代なので、20代っていう新しい視点を入れて、もしかしたら別の新しい可能性っていうか、新しい事業とか新しい道とか、そういうことも期待しています。
だから、にいまーるという一つのチームとして機能し続けていきたいなっていう想いがあります。
━ 臼井さん個人としてはいかがですか?
私の人生としては...。
今まで、にいまーるに人生をかけてやっているので、社会から見れば異端として見られることもあるし、今後どうするのかっていうふうにたくさん聞かれます。30代後半になるとね、なんだろう、女性としての生き方っていうかを聞かれますよ。子供を作らないのかとか、高齢出産というのもあるから、どうなのみたいな、聞かれます。
それで悩んだこともあります。、悩んだこともあるんだけれど、でもやっぱり、にいまーるに人生をかけてるので、にいまーるを通して、聞こえなくても大丈夫だよみたいな、安心して生活していく人が一人でも増えてほしいなと思います。
聞こえる人でも、今生きづらさ、生きにくさを抱えている人もいるじゃない?聞こえる人も人間で、聞こえているから完璧っていうわけではない。
聞こえに関係になく、にいまーるに関わった人たちが、安心して自分のしたいことを実現できる、そういうコミュニティを創るっていうか、維持していきたいなって思ってます。
もしかしたらにいまーるだけじゃなくて、また別の新しいコミュニティーを創ることもあるかもしれないけれど、根本的には、やっぱり一人でも多くの人が、生まれてきてよかったとか、生きててよかったって思えるようにしたいなって思ってます。
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インタビュアー/ライター:横田大輔
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編集:吉井大基
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