#89 新しい情報保障の形─ろう通訳とインターメディエーター─
こちらは、「ろう通訳」を取り扱った本です。
8月末に発売されました。きっと国内初の内容だと思います。
今年7月には、全日本ろうあ連盟から「ろう者による手話通訳に関する見解」が公表されました。
当法人でも、ろう難聴者およびろう重複障害者の支援現場において、ろう者スタッフが通訳のような形で支援することが時々あります。
手話通訳派遣制度を活用し、手話通訳者(聴者)に通訳してもらいますが、利用者さんによっては、手話通訳者の手話がわからない時があります。手話通訳者の技術によるものもありますが、どんなに上手な通訳者の手話でも理解が難しいろう難聴者・ろう重複障害者がいます。
そんな時、ろう者スタッフが、同じろう者の立場から「今の内容はこういう意味で、どちらがいいと思いますか」と説明を加えたり、イラストや写真を使って視覚的にわかりやすく示したりといった、言語通訳とは違った形での支援をしています。
ところで、今年7月に縁あってフランスとオンラインで繋いで講演会を開催しました。
フランス在住のルシル塚本夏子様とにいまーるとの共同で企画し、トゥールーズ第二大学の講師から「フランスにおけるインターメディエーターという専門職と養成」について、お話しいただきました。
ルシル塚本夏子様のプロフィール
https://www.deafstudies.jp/blog/detail/1946
トゥールーズ第二大学のジェローム・インベルディ・ルカ様およびジェレミー・セグア様から、インターメディエーターという専門職が成り立った経緯や大学での養成プログラム、実際の現場の様子などについて紹介いただきました。
フランスでは、通訳とは異なる方面から情報保障を行う「インターメディエーター」という職業が確立されており、高等教育機関(大学院レベル)での養成システムも整備されています。
一方、日本では、当事者を取り巻く社会資源や周囲の支援者の能力によって、受けられる支援に差があるのが現状であり、情報保障を含むろう難聴者の福祉はまだ完璧とは言えません。
高等教育機関でのソーシャルワーカーの養成はありますが、ろう難聴者の実態を反映したプログラムは全国的にまだ不十分であり、これは福祉現場で働く支援者の大きな悩みの一つでもあります。
言語通訳だけでは難しい課題を抱える方がいる中、フランスの講演会を通して、ろう者への支援を提供する専門職の価値を実感する機会となりました。
ジェローム様とジェレミー様、ルシル塚本夏子様、本当に貴重なお話をいただきましてありがとうございました。
日本とフランスの架け橋としてご活躍されているルシル塚本夏子様への問い合わせがありましたら、ぜひルシル塚本夏子様へよろしくお願いします。にいまーるとしても、今回の講演会を通して学びを深め今後の実践に繋げていきます
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