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ゴールデン街奇譚

ゴールデン街飲み歩き 最近、ひょんなことからゴールデン街で飲むようになった。 日々飲み歩くというような程のことではない。ただ、仕事や何かで近くに寄った際に、一軒二軒と店を訪ねて、数杯の酒を飲んで帰るというだけだ。 そうした飲み方がうまくいかない時には、気づけば朝ということもないではないのだが。 ほとんどは酒を求めているというよりは、 店に立っているスタッフの変わらぬ顔を見るためと、 入れ替わり立ち替わりの酔客たちとの愚にもつかぬ話から、時に一等真剣な話などを交わすため

    • ナミビアの砂漠を観てすごくいい映画だったので書きました

      人生には、自分でコントロールできることはほんの少ししか無い。反対に自分では変えられないことは理不尽なほど無数にある。 すべては流れ去ってしまうこと。 それでも人生は続くこと。 痛いほど自分は自分なこと。 じゃあ果たして人生は孤独な砂漠を彷徨うことなのだろうか。 この物語の主役、カナはたぶん町田だけじゃなくて世の中の色々な所にいるはずだ。そんな女の子。 心踊ることがあれば、お洒落して文字通り浮き足だって出かけていく。どこまでも優しい彼氏は、大切な居場所だけど、存在が正論す

      • 真夜中の恋はみな悲しい

        普通の人の唯一無二の恋。 ルッキズムや社会的なステータスに囚われない登場人物たちの恋愛を描き、人が恋物語に抱いているある種の綺麗な恋路という幻想にアンチテーゼをぶつけることで、本当の意味での恋を突きつける。 聖は冬子の反対側にいる対称的な(=世俗的な恋遊びをする)存在として配置されている。 タイトルは、フィッツジェラルドの『すべて悲しき若者たち』へのリファレンスか。他にモチーフがあるのかはわからない。 人に芯から恋するということは、真夜中に迷い込むことに似ている。ここでい

        • Dear 成瀬あかり

          拝啓 成瀬あかり様 拝啓 成瀬あかり様 西武大津店がなくなってしまってからのその後の滋賀はいかがでしょうか。 西武に捧げる夏を過ごしたあなたの住む街にも冬には雪が舞うのでしょうか。 それともあなたはすでに古都で黒髪の乙女のごとく爽やかに、鴨川の冷涼さにその健脚を浸しながら学究を謳歌しているのでしょうか。 はたまた何かのさだめで、東の赤い門の元に煌めいていますか。 それともその真っ直ぐな眼差しで今も琵琶の深い青さを見つめているのでしょうか。 いずれにせよ、あなたの持つ計り

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          夜露

          あれは確か雨の木曜日だったか。 それとも晴れた日曜日。 そんな風にいつか今日のことも思い出すのだろうか。 新幹線に揺られて、窓の外を眺めると知らない人達の暮らす知らない家々が見えた。その屋根に灯ったあかりはなぜか寂しげに見えて、遠い昔に別れた人を思い出す。 車内では、ブコウスキーの「郵便局」を読んでいた。 労働によって枯れていく1人の男の人生の話だと思った。 その最後には少しの逆転がある。 それは小説を書くということ。 芸術への復讐なのか、昇華なのか。 忙しい日々にすり減

          toys in the factory

          toys in the factory どこかにありそうなバンド名みたいじゃない? 工場で作られて出荷されていくおもちゃたち。 金髪碧眼の男の子を形どった人形。 買われた先で名前はケビンと付けられる。 女の子たちだって買われる。 女の子のいる店で、 シャツに残ったタバコの匂いや、お昼のお弁当の匂いで文句を言われて。 理想を求めるから失望するの? 生身の人に夢の中の好きな人を重ねるから、いつも最後にはケチがつくの? 人との出会いよりは別れの方をよく思い出す。 今日もまた

          toys in the factory

          ジャストアジテーション

          彼は根っからのアジテーターだった。 かつてある集会で言った。 「だから私にはあなたの立場も提唱されているご立派な説もしっかりとわかっているつもりです。 ただそこには行動が伴わなければいけない。 ここのところ私たちの文明では肉体性はすっかり鳴りを顰めてしまって、 病弱な知性ばかりが賞賛されているが、 頭の中で理屈ばかりをこねくり回していてなんになるのですか。 どんな立派な理論だって人びとの行動を変えれなければ意味がないのです。 だから、私たちは今まさに行動を起こす必要があるの

          ジャストアジテーション

          冬空

          冬の空気に吐き出すタバコの白い吐息、 駅前のセブンで買ったコーヒー、 空っぽの心で見上げた曇り空、 あの頃を思い出す 今以上にまだ何者でもなかった頃。 頼れるのはお互いの虚勢だけで 社会に空虚なパンチを打ち込んでた。 毎日。 至らない心 やって来ないヒーロー 優しくも卑怯な大人たち。 なりたいものなんてなかった。 理想の大人なんてのもいなかった、 出会わなかった。 変わってしまった今 あそこから本当に道が続いているのかと思うほど。 少しならお金も手にしたし、 分別

          あの夜の空はもう忘れたよ

          長かった横浜での仕事が終わり、 やっと解放されたのは23時の中野駅だった。 そこから東西線に乗って高田馬場まで帰る。 早稲田通りを東に向かって歩いていくと、高校時代によく通っていた映画館や今はもう店が変わってしまった飲食店が見えてきて少し懐かしい気持ちになった。 あの500円でピザを売っていたピザ屋さんは、 高校卒業の前後には店を畳んでしまって、今は小洒落たイタリアンレストランになっていた。 高田馬場は飲食店の競争が激しくお店の入れ替わりが激しい地域だけれど、ふとここで店

          あの夜の空はもう忘れたよ

          N対Nの無差別な消費戦争

          新宿区役所に向かう途中、 歌舞伎町の方から機械的な女性の声で注意喚起のアナウンスが聞こえてきた。 中高生がメンチカの働くコンカフェでお金を使い込んで借金を作るのが問題になっているから行き過ぎた推し活に注意するようにとのこと。 いったい誰が何に対して注意しろというのか。 大久保公園沿いには今日も女性たちが無表情に一定の間隔でたっている。 その容姿に値札が付けられ消費される。 守ってくれる大人はいない。 この社会は病んでいると思う。大人も子どもも。 そんなことを考えなが

          N対Nの無差別な消費戦争

          明日雨が降らなかったら電話して

          僕と雫が出会ったのは、大学二年生の頃だった。 たまたま同じ授業を履修していた僕らは、その授業でいつも隣合わせの席に座り、 授業中のディスカッションなどを通して、顔を合わせればちょっとした会話をするような仲になっていた。 忙しい大学生活が過ぎゆくのは早く、 気がつけばあっという間に学期末の試験が差し迫っていた。 試験の準備に追われながら、これが終わったら新宿の行きつけの店に飲みに行こうと約束した。 同学部だったはずなのに、 その授業があった学期が終わると学校で雫を見かける

          明日雨が降らなかったら電話して

          知っているけれど行ったことのない場所のイメージ、あるいは光が丘を失うこと

          平日の昼間にカフェでお茶するマダムたち、 買い物に興じる家族連れ、 なんとなく平和な日本の日常の光景。 どうして仕事もなく、 飲んだ翌日に昼まで散々寝て、 今は光が丘なんかにいるんだろう。 いや、つまり流石に光が丘なんて。 まあいいや。高島平じゃないし。 喫茶店に入り、トーストに齧り付き、コーヒーを啜る。時刻は午後3時39分。 気分はまだ朝ごはんだ。 やりたいことをやり終えて、書きたいことをやっと書き終えて、 帰りのバスに乗ると窓の外にはすっかり暮れきった街並み。 雲

          知っているけれど行ったことのない場所のイメージ、あるいは光が丘を失うこと

          出会いだけが人生じゃないように別れだけが人生なわけじゃない

          I want to go somewhere, but not just anywhere. Anyway, anyhow, life just doesn't seem to be so fun without you. French said c'est la vie. That's life. Yeah, that would be true or it wouldn't. The thing is that my life is the best that I

          出会いだけが人生じゃないように別れだけが人生なわけじゃない

          傲慢と善良

          人が人を想うという個人的なことと、 結婚という社会的な制度の干渉。 ここにも個人と社会の対立がある。 他人を鏡として映して その中に自分を見ること。 その自分を高く評価する自己愛。 自分に見合う人を"選ぶ"という態度にみえる傲慢さ。 他者から与えられる存在で、 その社会/家族/環境が与える外的な軸を 内的な基準として受け容れること。 その他者にとっての理想の枠の中で生きるという善良さ。 二つの軸が対立するのではなく、 傲慢さの中から善良さが現れ、 善良さの白が徐々に傲慢

          傲慢と善良

          今年も1年

          昨年もまた、 たくさんの人に会いました。 人の話をちゃんと聴けた時もあれば、 そうじゃない時も多くありました。 ちゃんと向き合えた時もあれば、 向き合えてないことも多々。 みんな、それぞれに悩みや問題を抱えていて おれにはわからないことばかり。 年が明けてなにが変わるわけでもないけど、 祈るには、願うにはちょうどいい時節だから。せめて。 一生に一度、 たった一晩出会って酒を飲み交わすだけだったとしても あなたが唯一無二なことには変わりないから。 明日には、あなたにち

          今年も1年

          ふと

          渋谷から乗った朝の田園都市線、 差し込む朝日、 読み返して思う、 文章にはその人の匂いがある、 でも匂いのしない言葉も好きだ。 自分の中には、 感情の伴わない 空っぽの 日本語と、 さらに遠いところにある すかすかの英語。 キリンジが鳴ってる。 流れゆく日々、忘れえぬ人たち。 コーヒーが飲みたい。