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しあわせになるために、生き残るために他人と比べない

六十年、死なずにこうやって生きてきたことはな、すげぇことなんだよと
『マリアビートル』の往年の殺し屋がいうけど。

すげぇこと、ってスイスイ生きてきたわけではないってことだと思います。
スイスイでなく、ジタバタウロウロ。あちこちにぶつかったり、転び、溺れたり、深い井戸の底に沈んだり。誰かと比べて羨んだり嫉妬したり。

楽しいこともあるけど、苦しいこともいっぱい。
危険もいっぱい。

そんな中で、生き残る知恵と勇気を与えてくれるドキドキハラハラ、トライアスロンレースのような疾走感を楽しめます。

777   トリプルセブン 伊坂幸太郎

やることなすことツキに見放されている殺し屋・七尾。通称「天道虫」と呼ばれる彼が請け負ったのは、超高級ホテルの一室にプレゼントを届けるという「簡単かつ安全な仕事」のはずだった――。時を同じくして、そのホテルには驚異的な記憶力を備えた女性・紙野結花が身を潜めていた。彼女を狙って、非合法な裏の仕事を生業にする人間たちが集まってくる……。

そのホテルには、物騒な奴らが群れをなす!

角川書店

今回の伊坂名言は、「他人と比べた時点で、不幸は始まる。やれることをやる」です。他にも「恩知らずは運に見放される」とか「資本主義」だとか刺さるフレーズはたくさんあるけど。

七尾くんは、「ついてない」ということを他人と比べず、「ついてない」ということを自覚し、警戒して「やれることをやらなくては」と奮闘します。

不測の事態が起こることには慣れている。達観しているんだから、こちらは。

自分を認めて、弱みを強みにしています。

たとえばトライアスロンレース。スイムが苦手だったら自転車で、ランニングで頑張ればいい。他の選手と比べず、自分との戦いです。しあわせでいたいから。

たとえば、容姿。他人と比べたらキリがない。わたしはわたし。リンゴはミカンになれない。リンゴはリンゴ。しあわせでいたいから。

たとえば、note。文章の上手い人はたくさんいます。比べない。学ぶ。羨まない。わたしは、そこじゃないから。それで秀でることを目指しているわけじゃないから。作家になりたいわけじゃない。収益って苦手だから。楽しみたいから。しあわせでいたいから。

生き残りたいから。

七尾くんのように、心の準備をする、予想する。想像する。
転んだら、そこにあるものを拾う。

やれることをやる。

言葉にすると簡単だけど、難しい。
だけど、そうでありたいと願うことはできます。

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