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2022年に実施したことまとめ(社内編)

2022年は新商品を出す、というツイートをしていました。

実際、三田理化工業の久々の新製品として、一般医療機器、ドライパスチャライザー HMP-4を上梓しました。

ただ、これは私の入社前から開発がスタートしたもので、ようやく世に出た!という感じです。ここから毎年新商品が出せるよう、引き続き商品開発を進めていきたい…ところですが現在の事業計画では新商品開発は一旦立ち止まり、既存のQCDを改善することを優先します。
それでは、2022年の実施したことのまとめです。

1.自社の状況(2023年1月)

当社は大阪に本社がある創業72年の医療機器製造業です。機器事業と消耗品事業の2つの事業部があります。
機器事業部の主力製品は哺乳瓶の洗浄機、滅菌機です。国内で唯一、病院での調乳に関わるすべての製品を提供しています。設計、製造、販売、アフターサービスを自社で一貫して行っています。
消耗品事業部ではクリーンルームで注射薬容器、哺乳瓶を洗浄滅菌し販売しています。

社員数は50名弱、売上は5-10億円の間です。
2017年からkintone、slack、2021年1月からGoogleWorkspaceを導入しました。
ISO9001・ISO13485(医療機器)を取得しており、品質文書はほぼすべて様式・台帳管理がされています。
私は2020年1月から専務取締役・消耗品事業部長、2022年11月から機器事業部長兼務となり、全事業部の責任者となりました。


2.25年ぶりの新しい技術部長

4月に、25年ぶりに技術部長を交代しました。
これまで社内で育成したり、外部から登用しても上手くいかず、社長が兼務し続けていましたが、前職で医療機器の品質保証の責任者をしていた方と縁があり入社後6ヶ月で技術部長に就任頂きました。
この交代により①技術部門の見える化②品質関係のデジタル化が進みます。
社長から新しい技術部長への引き継ぎを通して「あれ、これおかしくない?」「無駄じゃない?」と技術部長が隣席の私に共有してくれるので、これまで理解が進んでいなかった技術部門の状況が私にも分かるようになりました。
また、これまで医療機器の品質保証領域のデジタル化は問題が起きると怖くて控えていたのですが「進めましょう」と言って頂き、kintone導入初期のようにデジタル化が進みました。

そして、技術部長の交代により品質保証体制の見直しが行われます。
品質マネジメントシステムの規格であるISO9001だけでなく、医療機器製造販売に関わるISO13485を取得している当社は、設計・製造に関する手順・記録の保管は義務です。技術部長は入社後すぐに社内監査を実施し、不足がある点を指摘、是正してくれました。
それでも足りず、今年のISO外部審査では不足を指摘され、是正しました。
2003年のISO9001導入後、三田理化工業の品質は飛躍的に向上しました。しかし導入から20年が経過し、形骸化が至るところで起こっています。その結果、導入後に入社したメンバーの理解が追いついていません。私自身、ISO9001に対する認識の甘さがあり、取締役としての至らなさを恥じました。

このことから、技術部長と私が中心になって、もう一度自分たちの品質マネジメントシステムの再構築を進めることにしました。

3.文書管理をkintoneで

上記の品質マネジメントシステムの見直しの一貫として、手順書の改訂をしやすくするため、これまで紙で保管していた手順書の管理をkintoneにしました。その結果、文書管理の手間が格段に減りました。

合わせて管理職から改訂を進めるよう働きかけたことで、手順書の改訂件数が前年の2倍になりました。これまで実際の作業変更に手順書の改訂が追いつかず古く負債になっていた手順書を、資産に変える仕組みを作りました。

手順書の改訂件数が2倍に!

4.仕入先情報のデジタル化

これも品質管理の一貫ですが、当社では仕入先の情報を都度更新しています。関係者へのヒアリング結果を紙とエクセルでまとめていました。仕入先の評価表を紙で各部署へ配布、回収し集計した結果をまた紙で提出する…その結果毎年新しいファイルが生み出されていました。

基幹システムと別で住所管理もしてたので、この作業も廃止した

基幹システムからCSVデータでkintoneに仕入先マスターを共有します。また、そのマスターから仕入先評価を入力するアプリを作成し、各担当者にkintone上で評価する仕組みをつくりました。

仕入先情報のkintone化
仕入先評価のkintone化

この結果、この工程の紙は全て無くなり、1年で4日分、残業の多い事務担当者の工数を削減することが出来ました。数字上は少ないかもしれませんが、勤続25年の担当者がこの変化を全社の発表会で嬉しそうに話してくれました。

この変更で、納品先、得意先、仕入先というパートナー全てをkintoneに集約出来ました。

5.定価表のkintone化

「定価表は得意先に提出するので紙じゃないといけない」と社長が以前言っていたが、営業は「定価表を出したこと無い。見積で出します」との回答だったのでkintoneに。
定価表というタイトルのエクセルがいくつか保存されていて、どれが最新情報か定かじゃない。という不安を解消しました。製品のマスターデータとも関わってくるのでこれまでは手を出せませんでしたが、価格改定の際、社内で混乱が生じる前にkintone化を進めました。

6.その他諸々kintone化

①社内のサービス、デバイス、アカウントのkintone化

これまで一人情シス的に自分が動いていましたが、このままでは自分の時間が確保できない…と考えkintone化しました。毎年の支払いや更新を忘れがちなのでその手順も記載しました。特にHPのSSL証明書の更新を忘れがち。

②お気に入りアプリ

ブックマーク、ショートカットを使わない人向けに、登録したリンク、アプリがkintoneのポータルに表示されるアプリを作りました。

③新入社員日報

これまで新入社員が提出した紙の日報に、上長、社長が順番に手書きでコメントを書いていました。リアクションが遅い、上長以外は指導しても読めない。その日報をkintone化したことで、先輩社員が誰でも見てコメントが出来、新入社員と全社のコミュニケーションツールになりました。

④顧客への品質文書のkintone出力

これまでRepotone U proというkintoneの有料プラグインを用いて帳票を出力していたのですが、kintoneではハンコは押せません。
押印した文書を顧客に提出したい、という問いへの答えが無かったのですが、別のアトツギkintoneユーザーから「押印したPDFを様式登録すればいいじゃない」とアドバイス頂きあっさり解決しました。

長年の悩みがあっさり解決した瞬間

ステータスが「承認済み」になったレコードだけ、押印済みの品質文書が印刷する仕組みを作りました。ハンコは押すもの、という固定観念に縛られた自分の頭の硬さを痛感しました。

⑤出荷判定

当社は兵庫県西脇市の工場で生産した製品を大阪の本社で出荷判定します。工場から作業記録PDFを本社の判定責任者へメールで送付します。判定責任者が印刷、サインし再度スキャン、PDFに名前をつけて送り返す。その紙の出荷記録は保管。ということをしていました。判定責任者もこの作業に1ロットあたり30分ほどかかるため頻繁にしたくない。ズルズル遅れて提出から4日後に出荷判定される、ということがありました。これをメールの代わりにkintoneでデータを送り、サインの代わりにボタンをクリックするだけで承認出来るようにした結果、最大4日かかっていた承認フローが11分で完了しました。
また、判定責任者の作業時間が年間で136時間削減できました。

出荷判定アプリの効果

このアプリはとてもシンプルですが、課題認識から運用開始まで2週間で出来たことに満足しています。

7.工場長兼務

消耗品事業部の工場長が体調を崩し、休むことになりました。現場作業も多く在宅勤務もできず、とりあえず私が事業部長と工場長を兼務することになりました。
これまで二人三脚でやってきた工場長不在の影響は大きく、精神的にもきつかったですが、この期間に今まで把握しきれてなかった製造フローの理解が進んだこと、工場の整理、業務分担の見直しに手を付けることができました。
結果的に2週間だけの工場長兼務でしたが、工場長とのコミュニケーションがしやすくなったと、勝手に思っています。

8.太陽光パネルの設置

薬液瓶の洗浄滅菌を行う工場(開発センター)では、クリーンルーム内部を清潔に保つ必要があり、そのためには電力を消費します。その分を少しでも賄えればと思い、工場の天井に太陽光パネルを設置しました。

太陽光パネルの設置の様子

合わせて建築後10年が経過した工場の外壁、屋根の洗浄と修繕を行うことで、虫対策、景観改善を行うことが出来ました。
※クリーンルーム内に虫が入ると全室大掃除となるため虫対策は必須。

9.事業計画の作成・スタート

2022年の前半が品質に対する守りの戦いだとすると、後半は攻めに転じるための準備期間でした。
これまで単年度の部門目標しかなかった会社に、中期事業計画を立てることを決めます。
毎年、黒字か赤字かでしか議論が進まず、長期的な目標を組織で共有出来ない。新商品開発に積み上げがないに危機感がありました。ISO9001によって、品質の長期目標はあるのですが、経営の長期目標はない、というアンバランスな状況に違和感がありました。ですが、自分だけで計画立てても誰もついてこなければ絵に描いた餅。これは入社直後に大いに先走ってすっ転んだ経験から学びました。
7月に入り社長に、自分の考えをプレゼンし、現在の消耗品事業部だけでなくもう一つの機器事業部の事業部長も兼任させてほしいと伝えました。この場ではかなり失礼を言いましたが、最終的に社長は私の主張をほぼ受け入れてくれました。

じぶんがやりたいことを説明した上で事業承継できるかを確認したかった

当社は自社年度の初め、11月に全社発表会をします。その場で事業部長交代、そして中期事業計画を発表することを決めました。そこまでに各部門長(といっても4名)に説明、各部門目標の立案を間に合わせました。
プレゼン資料の大半は「そもそもなぜ事業計画が必要か」を訴えかける内容でした。コピーライターの友人に添削をお願いし、自分の考えをどう伝えるか、心の中を削り出しながら作りました。
そして11月4日に事業計画を全社発表。

2022年11月4日 梅田スカイビルにて

発表時の社員のリアクションはあまり良いものではありませんでした。何かが動いた気もしない。ただ、そこは織り込み済みだったので、この後の動きで示すしかありません。

10.全事業の責任者として


11月から全事業の責任者になりました。ここから新商品、新規事業をバンバン出して…というと全然ありません。打ち出した方針は、既存事業のQCD(品質・コスト・納期)の改善。地味ですが、眼の前の案件に人もコストも場所も目一杯使っている状況では新しいことに挑戦しても続かない。この5年間の経験から、まずは地道なカイゼンを積み重ねます(まだやってるの?と言われるかもしれませんが)
事業計画・事業部長交代から2ヶ月ですが主な3つのアクションを紹介。

①クレーム完了件数が過去最多

責任者が交代した時は、停滞中の課題を解決する機会と考え一つ一つ精査していくと、過去最高のクレーム完了件数となりました。(グラフの右端)
※発生件数が増えたわけではありません。

クレーム完了件数推移(月別)2022年11月が最多

②週1時間、部門目標の時間を確保

これは部門長が自ら動いてくれたのですが、目の前の案件に忙しい担当者に1週間に1時間、長期のQCDのカイゼンに取り組むよう時間を確保しました。1月から開始でどうなるかわかりませんがこの意思決定をしてくれたことだけでも、事業計画を発表して良かったと思っています。

③会議の削減

会議を一つ廃止しました。当社の機器事業部は、金曜日に技術部だけの会議、月曜日に技術部管理職と営業部門の営技連絡会がありました。技術部の管理職が週2回時間を取られる、似た話を繰り返すことから、この2つの会議を金曜日に集約し、前半は技術部だけで技術課題を議論、後半に営業も交え案件の進捗確認を行うように変えました。一番忙しい技術部管理職の時間を確保、意思決定の迅速化につながりました。

11.3つ積み上げて10段下がる

2022年10月期の決算は前年度と比較し減収となりましたが、なんとか増益、2年連続で社員の皆さんに期末賞与をお渡し出来ました。
また、2021年12月から2022年12月という期間においては退職者ゼロと、5年前は20%を超えていた離職率がついに0%になりました。
これまでの全社の取り組みが数字となって現れたことはとても喜ばしい限りです。

ただ、どれだけアクションを起こしても問題・課題は山積しています。外部環境による資材の値上げ、調達の遅れ、国内市場の縮小…
社内でも、古い製品のクレームや、品質マネジメントシステムを見直すことで出てきた問題点など、過去の対応に時間が追われました。
極めつけは設計Gのリーダーの退職。2022年末に、勤続10年の設計Gのリーダーが退職することになりました。これから設計にさらに力を入れようと事業計画を作成する最中の退職届に、思わず夜、川を渡っていました。

デジタル化を進めても、ノウハウや経験はまだまだ人に残っていますし、完全な属人化の解消は難しい。ちょっとづつ積み上げても、まだまだ一人の退職のダメージは大きく、中小企業の根本的な部分は解決出来ていないと感じました。

だからといって、これまでの取り組みを変えるわけではなく、積み上げるしか出来ません。事業計画で掲げた10年後のビジョンに向けて、今年はこの階段をこれだけ登る、この部署はここまで進む、という一段一段積み上げていきます。

「一生は今の積み重ね」家の壁に貼ってある。書:妻さん

12.まとめ

今まではとりあえず目についたところからパッチ的にデジタル化を進めてきましたが、このままではダメだと気付いた2022年でした。
ISO9001の品質マネジメントシステムは、製品だけでなく組織の仕組みやデジタル化、経営にも当てはまる考えだと改めて気付く事ができました。まずはISO9001をベースに会社の仕組みが回るようにしていきます。巨人の肩の上に立って遠くを見る、という考えで、既存の良い仕組みはどしどしパクります。
手間が掛かるし、遠回りしてるかもしれませんがとりあえずこのやり方で2023年も進んでみます。
また、入社直後から実現したかったビジョンと事業計画も策定することが出来ました。これまでは一人で作って発表して終わり、という感じでしたが、友人に協力を依頼したり、事前に部門長とすり合わせたり、事前に力を借りれるようになりました。また、出してからのフォローも今のところ出来ています。
2023年は、もう一つ役割が増えることになりそうですので、それまでに更に組織、個人としてもっと成長します。

このような発信を続けることで、サムネイル画像の大阪産業創造館でのセミナーに繋がったり、自分の頭の整理が出来ているので、今後もできれば続けたいと思います(継続苦手なので3年続いただけでも褒めたい!)

ご覧いただきありがとうございました。

わぁわぁ言う取ります。お時間です。さようなら。


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振り返りnote

大阪市在住の89年生まれ 父親経営の中小メーカーに在職。 グロービス経営大学大学院卒業 事業承継や、組織の変革、文系から見た社内システムの構築について掲載予定 好きなもの:サッカー(ガンバ大阪ファン)、漫画(オールジャンル)