キラキラとピリピリ 綿矢りさ「ひらいて」
女子高生の複雑な恋心!?と、歪んだ感情を描いた、綿矢りさ「ひらいて」(新潮社、2012年)
刺激的でゾクゾクが止まらない、それでいて、なんだか自分の高校生活を思い出して愛おしくなる、そんな作品でした。
あらすじ
高校生の愛は、ある日同級生のパッとしない男子に衝動的に惹かれる。
彼と距離を縮めようとするが、そこで彼女の存在を知る。次第に、愛の感情の矛先は思いもよらない方向へ……
前半の恋の描写、主人公愛の敏感かつ歪んだ感情の描写が美しく、印象的でした。
甘酸っぱさと、まっすぐな恋心が伝わってくるお気に入りの一文です。
次第に、愛の恋心が向かう矛先はずれていって、歪んでいって、戻れなくなって。その過程にゾクゾクするとともに、惹きつけられました。
でもその歪みが、行動や思考よりも、感情が先立つ高校生らしさにも感じました。ちょっと高飛車気味で捻くれていた愛が、初めて知る感情に振り回されている姿に、愛おしさが積もっていって……。過激な展開でも甘酸っぱさや淡さが伝わってきて、自分の高校生の頃を思い出したりもしました。
高校生ってなんか特別な期間ですよね。小中学校とは違って、学力で集まるからなんとなく、似た空気を持つ人たちが多い。それでいて、クラスや、学校という枠が強いからこそ、お互いを牽制し合っている感覚がある。だから、大学生みたいに個性を曝け出すこともためらわれる……。
なんでもできる!二度と戻らない青春!っていうキラキラ感と、互いの感情や行動に対して、敏感になり、複雑な感情を抱いていくピリピリ感。どちらも入り混じった不思議な空間だったなと思いました。そんな空気感を、この本からも感じました。
もう、途中から、なんでこんな話が思い浮かぶのか!?と思わず頭を抱えたくなるほど、惹きつけられた作品。
「ひらいて」ってこんな美しい響きを持った言葉だったんだな、と気付かされました。
ここまでお読みいただき、ありがとうございました!
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