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保育園看護師のお仕事紹介シリーズ③『検便』

こんにちは!現役保育園看護師のチロです。

保育園看護師の仕事の楽しさや専門性を発信していく『保育園看護師のお仕事紹介シリーズ』

第3弾は、「検便」について解説していきます。

保育園で働いていると毎月当たり前のようにやっているので感覚がマヒしてしまいますが、一般的にはあまり馴染みがない習慣かもしれませんね。

そこで今回は、そもそも「検便」とは何なのか、保育園看護師が担っている検便業務について、検便業務上の注意点などをまとめてみました!

この機会に、ぜひ保育園看護師のお仕事紹介シリーズのバックナンバーもチェックしてみて下さいね!


「検便」とは

検便とは、簡単に言うとウンチを検査することです。

検便は、大きく分けると「細菌検査」「潜血検査」という2つの種類があります。

保育園で定期的に行っている検便は「細菌検査」です。その名の通り、便に含まれる細菌を検査します。検査する細菌は、赤痢菌、サルモネラ属菌、腸管出血性大腸菌(O-157等)が必須項目となります。いずれも、食中毒の原因菌です。

ちなみに、健康診断などで行う検便が「潜血検査」です。これは、大腸がんや消化管出血の早期発見を目的としているため、日頃保育園で実施している検便とは検査項目や目的が異なります。

保育園で定期的に「検便」をする理由

身も蓋もありませんが、一言で言えば義務だからです。

保育園では、食中毒や感染症予防のため食事の提供に関わる職員に対して定期的な「検便」が義務付けられています。

根拠資料としては「大量調理施設衛生管理マニュアル」などが該当します。興味のある方は是非チェックしてみて下さい。

検便の対象者は、調理を担当する職員だけではなく、調乳を担当する職員も該当します。ちなみに調乳とは、ミルクをつくることです。調乳に関するガイドラインも、保育園関係者は一読しておくと勉強になりますよ。

さらに、検便結果は監査(一般指導検査)でも必ず確認される重点項目のうちの一つでもあります。以下の抜粋資料にも明記されており、検便結果が適切にそろっていないと監査では厳しく指摘されます

食事の提供で最も留意しなければならないことは、衛生上の安全対策であり、調理や調乳を行う者については、施設における衛生管理及び食中毒予防を徹底しなければならない。特に、赤痢、サルモネラやO157等の感染症・食中毒の予防は極めて重要であり、調理従事者及び調乳担当者については、月1回以上 の検便を実施すること。また、雇入れの際及び調理又は調乳業務への配置換えの際の検便を適切に実施し、検便結果を確認した上で調理又は調乳業務に従事させること。 検便検査には、腸管出血性大腸菌の検査を含めることとし、10月から3月までの間には月に1回以上又は必要に応じてノロウイルスの検便検査に努めること。

保育所指導検査基準(東京都福祉局)

検便業務の実際

「検便」は、職員の健康管理と園内の衛生管理という2つの視点で管理する必要があるため、看護師が配置されている園では看護師が検便に関する業務を任されるケースが多いと思います。

毎月、決まった時期に検査用キットを配布し、職員に便をとってもらいます(採便)。後日提出された便を回収し、まとめて検査機関に送って検査してもらいます。

参考までに、自園では毎月第1週の水曜日に検査用キットを配布し、第2週の水曜日に回収、郵送しています。月によって、配布時期を早めたり、休日等が重なる場合は回収日をずらしたりしています。

検査結果が出るまでは大体1週間前後かかることが多いです。急を要する場合やノロウイルス検査を依頼している場合は、至急検査をしてくれるケースもあります。

後日、検査結果を確認し、検査すべき職員分の結果があるかどうか、検査に引っかかっている職員はいないかどうかを記録して、管理者の決済をもらっています。

ちなみに、検査が陽性の場合は検査機関から至急連絡が来ます。陽性が出た時点で該当職員は調理・調乳業務から外さなくてはならないからです。感染拡大防止の観点から迅速な対応が求められるため、検査機関は電話で連絡してくれるケースが多いと思います。

陽性となった職員は、前回の検便から1週間程度経過を見て再度検査し、陰性が確認できれば調理・調乳業務に復帰できます。1週間程度時間を置く理由は、仮に陽性確認時に即日採便して検査したとしても、まだ便の中にウイルスがいる可能性が比較的高いためです。検査には費用もかかるため、1週間前後時間をおいてから検査した方がコスパもよいです。

個人的には、検便は保育園看護師が担う業務の中でも重要度の高いルーティン業務だと思っています。

理由は2つあります。1つ目は、乳幼児が感染症や食中毒に罹患した場合、大人以上に重症化するリスクがあるということです。特に食中毒が発生してしまった場合、多くの園児や職員が罹患することになるため、その影響は甚大です。監査にて厳しく指摘される理由も納得ですよね。

2つ目は、職員が不顕性感染を起こしている可能性があるということです。不顕性感染とは、感染症に罹患していながら特に症状がない状態です。食中毒の原因菌や原因ウイルスをもっているのに自覚症状がない職員が調理・調乳・配膳等の業務を行った場合、その職員が感染を拡大させてしまう可能性があるということです。不顕性感染をあぶりだすためにも、定期的な検便が重要となります。

つまり、保育所において適切に検便が実施されているかどうかは、子どもたちの安全のために必要最低限のことをしているかどうかということです。

検便は当たり前にすべき業務でありつつ、それだけ重要度の高い健康管理/衛生管理業務でもあると自負しています。

検便業務の注意点

流行期はノロウイルス検査も実施した方がよい

食中毒の中でも、ノロウイルスによる感染性胃腸炎の流行は特に注意が必要です。感染力が強く、終息するまで時間を要します。そのため、感染性胃腸炎の流行期と重なる「10月~3月」は、ノロウイルス検査をすることが望ましいとされています。

通常の検査と比較すると検査費用が高いため、全職員を対象にするかどうかは園長や事務員とも要相談ですが、リスク回避のためにも検査することをオススメします。

一発回収するための工夫

毎月ルーティン的に行う業務なため、職員も慣れてくるとうっかり採便してくるのを忘れてしまうことがあります。

経験上、一発で職員全員分の検便を回収できると、とても嬉しいです。自分はほとんど毎月のように「○○先生!うんち持ってきた??」と誰かしらに聞いて回っています。うんち担当として、抜かりなく回収するための努力と根性が必要ですね。

陽性者が出たときの対応

また、陽性者が出たときの対応も、園内で話し合っておく必要があると思います。あるいは、園内のマニュアルに落とし込んでおくとより汎用性があってよいと思います。

さらに、陽性者は陰性が確認できるまで調理・調乳業務の担当から外したということを、記録に残しておく必要もあります。簡潔に、「〇/〇 A職員 ~陽性のため調乳、配膳業務から外して対応。×/× 再検査。陰性。調乳、配膳業務再開。」程度でよいと思うので、日付、人物、対応と経過について記録を残しておきましょう。

調理・調乳担当者のヘルプは前月分と今月分の記録が必要

人員不足や人員調整等のため、姉妹園や他部署からヘルプで調理・調乳業務に入ってもらう場合、ヘルプ職員の検便結果を二月分確認、記録する必要性があります。新入職員や異動職員、中途採用職員も同様です。可能なら就業する前に検査してもらえるとよいと思います。

職員全員検便のススメ

調理や調乳を担当する職員はある程度絞り込むことができるかと思いますが、配膳や食事介助をする職員も含めた場合、ほぼ全職員が該当することになるかと思います。

園の考え方にもよりけりですが、個人的には全職員検便することの方が望ましいと思っています。急な人員不足にも対応できますし、職員の不顕性感染の早期発見等にもつながるからです。

まとめ

今回は、保育園における検便業務の実際について解説してみました。

たかが便を集めて送って記録をまとめるだけですが、これらを遂行するためには専門職として感染症対策、衛生管理、健康管理などの様々な視点をもって業務にあたる必要があると思います。

検便についてはもっと細かい注意点やケースごとの対処法など様々あるため、もし何か気になることや質問・相談したいことがありましたら、ぜひコメントで教えて下さいね!

最後まで読んでくださりありがとうございました!


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