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憑き物使い・深見胡堂 殺人ラーメン後編

殺人ラーメン 後編


余りの旨さに、気を取られ、気が付けはあの世一歩手前で、死にかけた。
しかし、何度も死の淵を経験し、そんな体の一部となった、呪いや、呪物どもが、まだまだ、この世の地獄が足りないと
俺を、簡単には殺させてくれない、体になっちまったからには、俺の前に見える、あいつをどうにかしなきゃならないようだ。
だが、俺は、ラーメン店の前で正気に戻った。
店内に入ろうとする、サラリーマン風の男性に声をかけられていたからだ。
「あんた、大丈夫か、目が白目で、口か泡を吹いて
立ち尽くしていたから、死んだかと思ったよ。」
「ああ、助かったぜ、ここのラーメンが上手すぎてあと少しであの世に行きかけた、あんたたちも。気をつけるこった。」
そう言って、この店を後にした。

この、ラーメン店を調査すると、怪しい所がいくつも見えてくる。
まず、従業員の出入り多い。外国人が多いの妙だ。
次に、仕入先が多いことだ、不穏な噂や、事件が絶えないからと推測される。
その中でも、沖縄県から届くクール便が気になった。
中身は、ヤシガニだ。ヤシガニは、島民は口しないと言われている。
そのヤシガニには、沖縄では口に入れない、理由がある。
名前からヤシの実を食べるように思いますが実は雑食で、食べない理由は
墓地のまわりの、ヤシガニが特別大きくなる、
どうしてか、ヤシガニは腐った肉も平気で食べる生き物で、
ハサミを使って墓を掘り返し、そこに埋められた死体を食べて大きくなる。
沖縄は、昭和の初めまで、土葬が主流だったからとも
言えるが、好んでその悪食した個体を食べる連中が居る。
この店で使っている
あのヤシガニが、沖縄産ではなく、隠岐の島産だと分かった、
道を外した連中が、裏でビジネスするために
隠岐の島の、無人島でこっそり、生け簀をつくり、ヤシガニを養殖し始めた。
このヤシガニの特徴はなんと人の死体の肉で育てられていることだ。
ようするに、裏稼業で出た、死体を処理するためと思ったが
人の肉で育った、ヤシガニの味は極上で病みつきになる。
一部のグルメ達には、幻の悪魔の身の呼ばれ、1キロ10万はくだらない金額で取引されるようだ。
その高級人肉ヤシガニ一月間隔で何匹もこのラーメン店に運び込まれている。
そして、その人肉ヤシガニの殻もミキサーにかけ、スープにしてまう。
そこで、考えた、ヤシガニの餌になった物たちの霊が、恨みを晴らすために、ラーメンを食べた客を殺した?
本当の所は、正直分からねぇ。

何故なら、この店と、ここの主人の奇妙なことは、かつてないほどだ、
調査で放った、式神、憑き物、達が、訳の分からないことを伝えて来る。
こんなことは、初めてだが、要約すると化け物が沢山住んでいるという事だ。


という事で、泥棒さながら、この俺自身が店内に深夜、忍び込むことになったが。
難なく裏の勝手口から入りこむ、簡単な良くある施錠は使い魔によって鍵がなくとも、ドアの隙間から入り込ませ中から開錠するだけだ。
明かりの点いていない、この店内の混沌さなんだ、
私の、右目は義眼だが特殊なアイテムでもある、呪具ではない
この俺の右目が、魔物や死霊等を見通す、霊眼、浄碧清眼がここの正体を見通すはずだ。
胡堂の右目が、青い月のような光を灯す。
「何をしに来た!」何かが語りかけて来た
人の、気配は無かった。
声のする方に、振り向くと
店内の奥の食器棚の一番上の右奥で
いかにも、中華どんぶりらしい、白ベースに赤い渦巻模様が淵を一周してる
あの柄は、雷紋(らいもん)と呼ばれ、中国の伝統的な模様で、昔から建築物や磁器にあつて
自然界の脅威の象徴である雷を表している、鬼を迷わせる迷路を表し魔除けの一種
中国では雷光や雷鳴は天の意志を表しているといわれ、おそれ崇めれたという。
大層な意味は持ち合わせているが
どこにもでもあるタイプのモノ
青白くぼんやりと輝き、それが3センチぐらい、宙に浮いて
左右に揺れている。
「主人よ、怪しい奴が来た、早く追いはらえっ!」
「おぉ、それも付喪神が喋るのか?」
これは、これは、珍しいものが居るじゃないか。
付喪神か、俺が、この裏稼業に入りたての頃、まぁ、半世紀前には、何度か見たことがあったが、
今では、まったくと言って良いほど、姿を見ねぇ、あの頃と人口も、物の数も、けた違いに多くなったし
物を、大事にする人間、ほぼ見かけなくなった。
つまりは、付喪神なるような、大事な品は、きちんと保管されて、人目のつかないところにある。
よって付喪神を見ることは、超レアということになる、
その付喪神が、持ち主と共同でラーメンのために命がけときた。

更に、異様な気配を感じる。
食器棚の横には、倉庫への入り口があった。
そこへ、吸い寄せられるように、進むと
その2畳ほどの広さの倉庫の右奥に、業務用冷蔵庫が
異様なオーラーを放っていた、平置きの冷蔵庫の天板の扉を開ける。
そこには、真っ青の調理されてないヤシガニが
びっしり冷凍されていたのである。
店主は、ラーメンに憑りつかれて、狂人と化していたからだ。
全てが、人肉ヤシガニのお陰だ、賄賂として十分だった。

2階から、階段がギシギシ音を立て、長身の青ざめた男が降りてきた。
すでに、右手には出刃包丁を持っていた。
今見ると、ファンタジーに出てくるモンスターゴブリンやオーガ似た顔をしているが
問題は肌の色、青緑色であり、あちこちの肌が破れている。
昼間見た時と様相が違う。
右手には出刃包丁が握られて、鈍い光を纏っていた。
「美味しいラーメンの為に、魂を悪魔に売った。
その所業の果てが、付喪神まで仲間するたぁ、大したもんだ
これが、ほんとの筋金入りってことは、認めるが
あんまりにも、度を越えてると思いもしねぇのか?」
「何を言ってる、俺は、まだ真のラーメンに達していない。
これから作り上げる。」
「おう、まだ上を目指すってか、だが、殺し過ぎなんじゃあねぇか」。
「人が死んだぐらい、どうでもいい、それよりも
もっとうまいラーメンを作らせろ、そして、
それを食べた、客が全員旨い、旨いと言って笑顔になるまで」
「まて、あんたのラーメンを食べて、旨いと言わない奴がいるのか?」
「いるぞ、グルメライターだが何だが、批評して挙句の果てには、80点と言いやがった、確かに、この丼ではなかったが。」
ヤシガニが、人肉を食べる、そのヤシガニ特別旨いを
自分の、体で確かめている、もはや、空極の求道者だ
だが、どうやってこの店主を止めるのか、
ヤシガニの違法、養殖で警察に、捕まえさせてと考えたが、
警察は賄賂として、人肉ヤシガニでいいなりになってるという事は、
警察、法律では、こいつを止められない。
いっそ、俺がこいつを雇うしかない、
この俺も、こいつのラーメンと人肉ヤシガニに魅了されている。
要は、特別な客専用の店を用意してやれば
この店も、店主も一般人には手が出せないし、潰れたことに出来る。
俺の隠れ家でも、与えればよい
「と言う訳で、引っ越すぞ店主。」
「俺は、それでも良いが、本当に私をこの店から移すことが出来るのか、試してみるがいい。」店主が言い放つと同時に間を詰めて来る。
俺は、背中の箱の封印の赤い組み紐を解く
俺の憑き物が出るよりも早く、
辺り一面に亡霊が地面から湧いて出だ。
あの時のグレーのスーツのオッサンの姿がある、
ここでラーメンを食べて死んだ奴らか、
ラーメンが忘れられず、ここに居ついたか?
地縛霊まで、ややこしい。
むむ、ここで死んだ客の数と合わねぇなぁ
そう言うことか、外国人の従業員も殺してラーメンの出汁にしちまったか、
付喪神は、問題なく、俺のコレクションに加えるとして
ここの地縛霊は、こいつで処理するか
この世には、ここのように、化け物の天国みたいな所があるように、
お前たち、相手に都合の良い、えげつないアイテムがあるんだな
歩き巫女と呼ばれた者たちが、日本各地を行脚して集めた、呪具の中に、外道箱が存在する。
まぁ、外道箱の一つよ、ここにある黒猿のような、憑き物を使役するための外道箱がある。
この白い金色の化粧がが施された、外道箱の力を見せてやろう。
ようやく出番だ!と背中の箱から飛び出して行ったのは、宙狐である。
この辺では、狐火とか言われているが、場所を変えれば
狐火を行逢神(不用意に遭うと祟りをおよぼす神霊)と恐れられた
簡単言えば、死神、見ただけで障る、死に至る力を持つ
さぁ、よく見て感じるがいい、箱から花火が如く
火花を散らして、まるで閃光ように輝く大きな一抱えほどの
白い球が現れた。
周囲を明るく照らすと、死霊共は、あっという間に消え去り
店主は、どんどん焦げて墨のように真っ黒く焦げ始めた。
「むっ、こりゃあやり過ぎた!!」
胡堂は、背中の箱の文字を指でなぞると、白い箱が少しずつ色を変える
下から上に向かって真っ黒に染まっていく。
「もったいない、使い方しちまったな、」
白い球は、黒い煙に変わりながら、黒に変わりつつある箱の中に入っていた。
店主が、朽ち果てる中
忘れていた、どんぶりの付喪神が動き
「お前も死ね」どんぶりが叫んだ!
どんぶりは、ポルターガイストを使い、ガスの元栓をレバーを動かし
コンロすべてに火を点けた、すると天井まで真っ赤な火炎が天井まで吹き上がり
油まみれの店内は、あっと言うまに火に包まれた。
「ち、結局こういう事か」そう言って、近く窓ガラスを蹴り割って外に出た。

そして、火の粉をまき散らしながら、ゴーゴーと燃える
ラーメン店を見ながら、幸いしたのは、この店が大きな敷地の真ん中にあり、
すぐ近くに、火が移るような建物が無いことか。
それにしても、依頼成功と言えるのか?
まぁ、一つあるとすれば、人肉ヤシガニの養殖場は乗っ取るとして
どう、報告すればいいのか、帰りにラーメン屋でもよって、帰ろうか。
しかし、あのラーメンもう一度食べたかったぜ、
舌なめずり、しながら自前の霊柩車に乗り込み
静かに、走りさった。

俺は、失念していた、陶器は熱に対する耐性が強いことだ、
焼却炉の中から、灰とともに、誰がが燃えるだろうと放り込んだ
陶器製のどんぶりが傷一つ無く出てきた事があった。

次の日、ラーメン店の火は、消防隊の力で鎮火した。
その焼け跡から、白い中華どんぶりが、何故か一つだけ残っていた。

殺人ラーメン 終わり。


深見胡堂と蜥蜴馬正面

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