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天傘ノココ
2022年8月12日 13:58
おばあちゃんを思い出すと、いつでも涙が出てくる。おばあちゃんが寝るときに、私をあやしながら、お前はやさしい子だよ撫でてくれる、あの少しの時間が好きだった。おばあちゃんが亡くなったと聞いて、私は胸が痛くなった。このおばあちゃんの亡骸である家に、帰りたくなった。だから、このページを読みたくないのに魔術書はそのページを見せた。ルーン文字でこう書いてあった。ᚣᛟᚢ ᚨᚱᛖ ᚲᛁᚾᛞ や
2022年8月9日 00:25
アカツキは、象嵌細工が嵌め込まれた食器たちの中にケトルを発見した。夕闇が迫る空を映したような、そんなケトルはよく見ると星が泳いでいた。「このケトルは空を映す鏡でもあるのね。そして災いや幸福を映す……」 煌めく睫毛で瞬きをするアカツキ。アカツキは、胸からこみ上げてくるものを必死に抑え込んだ。見ると、ケトルの蓋に白い月が浮かんでいる。「いけない、白夜が近付いているわ」
2022年8月8日 17:43
「大きな土鍋、薬品棚。これだけでも魔法の研究ができる。それにしてもかび臭い」 土鍋は底が見えないほど埃がたまり、薬品棚にはカビの生えた液体がこべりついていた。アカツキは唇を親指でさすり、考える仕草をした。「アブラカダブラ、この家をきれいにしておくんなさい」 癖のある唱え方で呪文を口にすれば、古代から伝わるアブラカダブラが功をなす。アブラカダブラは便利な魔法の呪文で有名なのである。
2022年8月8日 17:29
分厚い表紙には、長いこと埃がかぶっていた。いま彼女の手で払われたことにより、その表紙に刻まれた文字がすすけた明かりを灯す。誰も入らなかった閉架に彼女が来たことにより、魔術書と人間の歴史は再び幕を開けたのだ。「こんなところに独りでずっといたのね」 赤い小さな唇が動く。魔術書にまるで自分の仲間のように声をかけた彼女。名前は、柘榴ざくろと言う。 柘榴の手の中におさめられた魔術書は、ひとりでに