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ヒストリー15 〜それぞれの思い〜

ネルソン邸宅内

客間。

《ベラ視点》

【ガチャ バタン】 

ベラ『ノックをしても、返事がなかったので
入らせてもらいました。』

ソファーに座り、うつむいている
ブラグの姿があった。
ベラはコップに水をいれ、ソファーの前の
テーブルに置き、ブラグの横に座った。

沈黙。

ブラグ『私は』

ブラグが口を開いた。

ブラグ『間違っていたのだろうか?』

ベラ『なにをですか?』

ブラグ『レオを、愛さなかった事をだ。
いや、違う、、
愛したくても、愛せなかったんだ。』

頭を抱えるブラグ。

ベラ『レオ様が〝紅の眼〟で生まれてきたのは
旦那様のせいでは、ありません。
全ては運命。神が決めたのだと
私は思います。』

ブラグ『神はなぜ、私にそんな試練を
与える?
ダウ教徒は、〝母体神テトラ〟に
選ばれた存在。神に救われる存在なのだ。
聖地〝デルフィ〟のミアジン大聖堂にある
〝ラスティマの天井〟にも、
私の名前は刻まれている。』

ベラ『・・・』

ブラグ『神は、私を見捨てたのか・・』

ベラ『旦那様。』

ベラが、ブラグの手に触れた。

ベラ『私は、聖地へ行く事も、
教会へ行く事も許されていません。
〝心〟という閉鎖された空間の中で
旦那様の事を祈ることしかできないのです。』

部屋に、秒針〔びょうしん〕の音が静かに響き渡る。

ベラ『例え、閉鎖された空間で祈る事しか
できなくても、私は旦那様を愛し続けます。』

ブラグ『・・・』

ベラ『奥様は何と言われたのですか?』

ブラグ『明日、レオを連れて
この邸宅を出て行く。』

ベラ『旦那様は、それでもいいのですか?』

ブラグ『あぁ。』

ベラ『レオ様を、処断しなければ
いつか、このネルソン家は解体されるかも
しれません。
それでも、お2人を黙って行かせるのですか?』

ブラグ『それが、私の償〔つぐな〕いだと
思っている。』

ベラ『・・そうですか。』

ベラがソファーから立ち上がり
開いていた小窓を閉めた。

ベラ『私は、、、
旦那様の妻になりたいと思っています。』

ブラグ『妻に?』

ベラ『はい、妻になって旦那様を
ずっと支えていきたい。』

ベラはブラグを見つめた。
ブラグはその目を見つづける事が出来ずに
目を逸〔そ〕らし、水を飲んだ。

ブラグ『今は、そんな事は考えられん、、
頭が、おかしくなりそうなんだ、、』  

ベラ『私も急いではいません。
旦那様も今は落ち着く時間と、
癒される時間が、必要なんだと思います。
その役目を、このベラにお与え下さい。』

ブラグ『・・・』

ベラは、扉の前に立った。

ベラ『このお腹の中には、新しい命が
宿〔やど〕っています。
旦那様と、私の子供が。』

ブラグ『!?』

ベラ『また明日の朝、声をかけさせて
いただきます。』

ベラは頭を下げて、部屋を出ていった。

ブラグ『・・子供?、ベラが私の
子を身籠〔みごも〕っている?』

部屋の中には、虚〔むな〕しく秒針〔びょうしん〕
の音だけが響いていた。

つづく。

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