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準備編1)タミヤ工作材料と使い方

はじめに


NIロボは主に(株)タミヤ(以下タミヤ)製の工作材料を使用してリンク機構ロボットを製作します.
本記事では準備段階としてNIロボが使用する工作材料の紹介とリンクロボットに応用する際のノウハウを著者なりの視点で解説します.
特に多用する(ロング)ユニバーサルアームとシングルギヤボックス(4速)および電池ボックスとこれらに付属するねじなどについて記述します.
牛乳パックロボの材料については別途掲載します.
タミヤの製品に関しては下記URLを参照してください.

注)NIロボは自身以外の如何なるメーカー,商社などから商品の販売やマーケティングを請け負ってはおりません.記事記載の商品中の部品の入り数,寸法などの一部の情報は著者独自に調査したものです.実際に購入する際はご確認の上,ご使用願います.


ユニバーサルアーム


リンク機構のロッドとしてユニバーサルアームを使用します.
ユニバーサルアームは直径 3mm の穴が 5mm 間隔で開けられた,幅 10mm,厚さ 3.5mm(実測値),長さ 170mm または 210mm のプラスチック製(ABS樹脂)の棒材です.
穴と穴の間に切断用の溝が掘られており,折り曲げることで簡単に切断できます.
ABS樹脂ですが,スチロール樹脂であるプラモデル用の接着剤で接着することができます(著者の経験).

ロングユニバーサルアーム

ユニバーサルアームは,長さ 170mm 4本入りのユニバーサルアームセット(ITEM 70183/70143)と,長さ 210mm 4本入りのロングユニバーサルアームセット(ITEM 69919/70156/70184)が販売されています.両セットとも灰色,オレンジ色の2色が選べ,ロングではさらに透明色が選べます.

ユニバーサルアームセット

ユニバーサルアームを用いることで穴加工を行わずに製作できるので設計通りに運動するロボットを容易に実現できます.
ギヤボックスを使用した工作では,プラスチックや木の板材,ユニバーサルプレート(ITEM 70098 など)をベースとして作る場合が一般的だと思われますが,NIロボでは加工が簡単で軽量化が図られるユニバーサルアームをロボット本体の構造材としても使用します.

ユニバーサルアームによる本体構造とリンク機構製作例

付属品

セットには M3 ビスとナットが付属します.種類,個数等はねじの章で紹介します.
ロングでないユニバーサルアームセット(ITEM 70183/70143)にはL字や円筒状の部品が付属しています.NIロボでは時折活用しますので,必要に応じてその都度紹介します.

ギヤボックス

ここでは主に使用するシングルギヤボック(4速タイプ)(ITEM 70137)(以下ギヤボックス)を紹介します.
モーターの回転数を出力軸の回転数に比率を以下の4通りに設定できます.
12.7:1
38.2:1
114.7:1
344.2:1
本記事では最後の 344.2:1 の一番低速な設定を用います.

寸法

ギヤボックスの詳細な寸法図を以下に示します.
単位 mm が表記されていない寸法は著者が実測したものです.
メーカーが保証した寸法でないので自己責任でご使用願います.

シングルギヤボックス(4速タイプ)寸法

クランク

付属するクランクの寸法を以下に載せます.この寸法も実測値です.
クランクを付属の六角棒の軸に装着した場合,軸端より2mmつき出ますが,
軸端の形状のばらつきなどで突き出す長さが異なる場合があるので,
クランクの軸方向の位置が多少異なっても作動するようにリンク機構を設計するのが良いと思います.

クランクの寸法

φ3の穴にビスをクランク軸として装着します.
内側の穴を使用する場合,これより外側や軸に対して反対側の部材が他の部品と干渉する場合,ニッパーなどで余分な部分をカットします.必要な部分を破損しないように不慣れなうちは少しづつカットするのが良いでしょう.カットした後はヤスリで形を整えると良いでしょう.

クランクのカット

クランクの装着は2つ同時にギアボックスを挟み込む様に行うと良いでしょう.その際,左右のクランクの角度を確認し,六角形の穴と軸がピッタリはまる位置で押し込みます.装着後クランク間の距離をチェックしましょう.ビスをギヤボックス側から外側に装着する場合には,予めクランクに固定してから装着します.一旦クランクを装着すると抜くのが難しいのでビスやクランクの装着のタイミングを入念に計画しましょう.

出力軸

ギヤボックスの出力軸は断面が六角形で3mmの穴を通る金属棒です.
付属のものは長さが 100mm です.
短いものが必要な場合,切断しても良いのですが,切断面の形状によってクランクがはまり難くなり位置がずれるとトラブルの原因となります.
そこで本記事では「3mm六角シャフトセット(ITEM 70252)」の使用をお勧めします.本セットには長さ 38mm,50mm,60mm,72mm のものがそれぞれ4本入っています.

六角シャフトセット

組み立て

ギヤボックスの組み立て手順の詳細は付属のマニュアルを参照して下さい.
NIロボではギヤ比 344.2:1 のDタイプを使用します.
六角シャフトへの六角ボスの取付位置ですが,マニュアルで長さ 100mm のシャフトに対して左右均等にシャフトが突き出る位置として,39mm が指定されていまが,NIロボでは短いシャフトを使用しますので異なります.
シャフトの長さを L とすると,六角ボスの位置 X は,X=(L-32)/2+4.5 で決定します.
なお,「あそび」があり軸にかかる荷重方向でずれが生じるので,1mm 以下の寸法の設定は厳密でなくても構いません.

六角ボスの位置

軸にグリスを塗布し,ギヤを挿入します.
これをギヤ一つ一つごとに行い,軸とギヤの穴の隙間にグリスを十分に行き渡らせます.
これは潤滑のみならず,組み立て時のギヤのすっぽ抜けの防止にもなり,作業性の向上にも寄与します.
ギヤの歯にもグリスを塗布します.特に小さい方のギヤの歯に塗布すると噛み合わさる大き方に行き渡るので効率的です.
歯間の潤滑は摩擦のみならず機械音を低減させます.
軸を本体に装着する前に2つの軸を組み立て状態の位置に配置して,同時に本体に挿入します.

ギヤの挿入

十分にグリス潤滑を行い組み立て,クランクを装着すると,モーターを装着する前であればでクランクを手で容易に回せます.
そこで,ロボットの脚をクランクへの装着し,クランクを回して作動をチェックした後にモーターを装着するのが良いでしょう.
その際,モーター軸につけたピニオンギヤの歯にグリスを塗布します.

電池ボックス

NIロボではタミヤ製のスイッチ付きの単三電池ボックスを使用します.
タミヤ以外の製品を用いた方が,組立の手間やコストがかかりませんが,NIロボットでは電池ボックス自体を構造の一部として利用したり,接着による組立を多用するのでタミヤの製品を用います.(市販の電池ボックスは難接着性のプラスチック性のものが多いです.)
ITEM70151 は2本用で,ITEM70150は1本用が2つ封入されており,どちらも逆転スイッチが付属します.

単3電池ボックス

後者は電池1本用のボックスを束ねて2本用のボックスとしても使用できます.

単3電池ボックス(1本x2)使用法

NIロボでは電池ボックスを構造の一部として利用し,2本用の使い方でもあえて ITEM70150 を使用する場合があります.
付属する逆転スイッチを組み立てるとき,マニュアルではスイッチ金具Cをスイッチのノブ3に装着してから本体2と結合するように描かれてますが,逆に3を2に結合した後に金具Cを取り付けた方が簡単に組み立てられます.

スイッチの組立順序

電池ボックスとスイッチの実測した寸法を下図に示します.

単三電池ボックス(2本用)寸法
単三電池ボックス(1本用)寸法(側面のノッチを除く)
スイッチ寸法

ねじ

タミヤの工作材料に付属する主なねじは雄ねじの直径(呼び系)が 3mm である M3 というサイズのねじです.

ビス

雄ねじは「鍋ねじ」または「ビス」と呼ばれる頭が丸い形のねじで,プラスドライバーで回します.
タミヤのねじは,マイナスドライバーでも回せるような溝が作られてますが,プラスドライバーの方が安定して回せます.
雄ねじの長さは,頭を除いたねじ部の長さを指します.
本記事ではローカルなルールとして,M3 ねじの長さを記号 L を用いて以下のように表記します.

M3L10長さ   10mm の M3 ビス

ビスのサイズ

ナット

タミヤの工作材料に付属するナット(雌ねじ)は,外形が六角形をした六角ナットです.
ねじ部の長さ(ナットの高さ)が一般的に普及している 2.4mm(JIS B1181 1種)より低い,1.8mm(同3種,実測値は 1.6mm)であることに注意してください.
NIロボでは付属品のナットを基本に設計していますが,付属品のみでは不足する傾向があります.隙間調整用として特に指定しない場合には1種を使用しても良いように設計しています.
ただし,1種,3種を混在させる場合には使用箇所を吟味してください.

ナットの種別

付属ねじ

本記事で使用する工作材料に付属するねじの種類と個数を示します.

ユニバーサルアームセット(ITEM 70183/70143)
M3L10 15本
M3L20 4本
M3L25 4本
ナット 15個

ロングユニバーサルアームセット(ITEM 69919/70156/70184)
M3L10 15本
M3L20 4本
M3L25 4本
ナット 15個

シングルギヤボック(4速タイプ)(ITEM 70137)
M3L10 2本
M3L15 2本
ナット 4個

ビスのみのセットも販売されています.

AO-7002 3mmビスセット
M3L6 10本
M3L10 10本
M3L15 10本
M3L20 10本
M3L27 10本
(ナットはゼロ)

3mmネジセット(30,40,50mm)(ITEM70181)
M3L30 6本
M3L40 6本
M3L50 8本
ナット 20個
ワッシャー 20個

付属品の M3L15 は本数が少ないので,NIロボでは M3L20,M3L25 で代用できるように設計しています.
ただ,ナットは不足するので別途入手が必要な場合があります.

接着剤

機械構造はねじ締結で組み立てると思い込みがちですが,適切に接着剤を使用すると設計の自由度が上がり,かつ組立性も向上します.
特にNIロボのように耐久性が求められないトイレベルの作品にはとても重宝します.

瞬間接着剤

NIロボでは瞬間接着剤をリンク機能の軸の固定に用いるので必要となります.

ねじによる関節の作成

瞬間接着剤の種類は豊富に出回っていますが,100円ショップで購入できるもので構いません.
平面の貼り合わせに用いる場合には30秒程度の時間で固定しますが,NIロボではナットの回り止めのためにネジ山に流し込むので硬化に時間を要します.そこで瞬間接着剤用の硬化促進剤の使用をお勧めします.タミヤからも販売されています
瞬間接着剤用のプライマリー(予め接着面に塗布して接着性を向上させる薬剤)で代用することもできるので,プライマリー単体もしくはプライマリー付きの瞬間接着剤を購入しても良いです(あくまで筆者の経験です).プライマリーは硬化促進剤同様接着後に滴下します(あくまで筆者の使用法です).

瞬間接着剤と硬化促進剤

プラスチック用接着剤

ユニバーサルアーム,ギヤボックス,電池ボックスとスイッチの固定に用います.
これらは一般にねじで固定しますが,寸法の都合やねじの緩みの防止,ねじの使用数抑制のために接着剤を使用します.
プラスチックの種類は ABS ですが,入手しやすいプラモデル(スチロール樹脂)用で十分強固に接着します.
瞬間接着剤を用いても構いませんが,意外に衝撃に弱いのでプラスック用をお勧めします.

おわりに

NIロボでは斬新なデザインのリンク機構ロボットの実現を目指していますが,同時に,難しい穴あけや切断加工を極力行わず,簡単に作成できてかつ確実に作動することも重要な課題としています.NIロボの note 記事が皆様の DIY ロボライフの一助となれば幸いです.次回から実際のロボット製作方法を紹介します!


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