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野菜の生産から販売までを体験して学んだこと

この夏、「SHIBUYA TSUTAYAからニッポンフードシフト」で開催された「食のインターンシッププログラム」に参加した上智大学4年の猪俣みなみです。
 
昨今では、野菜の価格高騰のニュースがよく取り上げられています。日々、スーパーで見る野菜の値段は変動し、私たちは目に見える影響を受けているのも確かです。地球温暖化のせいなのか。その原因や影響についてまで知らないのが一消費者としての現実なのかもしれません。
 
今回、7日間の生産者・青果店体験を通して消費者として学んだこと、日本の農業について思うことをお話しします。

活動初日、代官山青果店さんにお邪魔しました。それぞれの野菜の梱包方法を工夫するだけでなく、カラフルな野菜を上に、暗い色の野菜を下に配置するなど陳列方法にもこだわりを持っていらっしゃいました。毎日来店するお客様のために新しい野菜を入荷し、飽きさせない工夫をされています。

 

また、賞味期限が近い野菜をお弁当に、果物をフルーツサンドにしてフードロス対策にも取り組んでいらっしゃいます。スーパーなどで並ぶ一般的な野菜や果物とは違い、こだわりを持って選別を行うことで、信頼のあるお店づくりをされています。一つ一つの商品に調理方法や特徴が書かれたポップが貼られているため、買い手も参考にしながら購入ができるため、より「ここで買いたい」と思わせてくれる工夫施されています。生産者の努力を直接消費者に届けることでより安心安全を提供してくれています。
 
次に、生産者体験として三浦半島で農業をされている青木農園さんに伺いました。7月下旬の炎天下の中、青木さんは2時間以上ほとんど休まずに収穫をされていました。

広大な敷地を運営されている青木さんは365日、一日も休まずに、様々な種類の野菜を育てていらっしゃいます。農協を通さずに直接、有名イタリアンレストランや都内の料亭などに卸すことで青木農園さんでは収益を安定させることができています。また、代官山青果店さんなど販売者の方と直接的な繋がりを持つことで、生産者のこだわりまでを消費者の方に伝えることができています。しかし、現実としてここまで自立している農家の方は少なく、直接的な評価などを受けられる機会はほとんどないそうです。農家さんはこだわり抜いた野菜を愛情を持って生産しているのにも関わらず、スーパーなどに並ぶ時には全て同じ商品として扱われてしまいます。
 

陳列されている野菜だけを見ると忘れてしまいがちな生産者の方ですが、日々休みなく私たちの食を支えていただいていることを身をもって体験できました。
 
私たちは次に「大田市場」に伺いました。

広大な建物の中に並べられる数えきれない量の段ボールにただただ圧倒されました。海外から来た野菜や果物から北海道で採れた野菜まで様々な種類の野菜が並べられていました。業界用語が飛び交う仲卸市場の中を素人の私が歩いていると、自分とは縁の遠い世界であることを痛感させられました。

知識や体力が必要なだけでなく、それぞれの店舗との関係性も同じくらい大事とされています。気候変動によって野菜の出荷数にも影響があるため、「市場」という横の繋がりが強い場で値付けを行うことで、生産者の方にも還元される価格調整がされています。生産者と消費者の間の立場である「市場」を見学する中で、適正価格の難しさを痛感させられました。

それぞれの体験を通して実際の生産における労働量と私たち消費者が持つ意識のズレについて考えさせられました。生産者体験から販売の現場までを体験する中で、それぞれのステイクホルダーが持つ「工夫」を見ることができました。ひとえに、「野菜を育てる」と言ってもそれ自体が高度な技術を伴い、様々な工夫が凝らされています。そして、色々な人が密接に関わることで私たち消費者の手に届いているのです。農業を発展させていくということは自分達の食を支えることに直接的に関わることなのかもしれません。現状の価格高騰は燃料高騰化など外的要因が主であり、生産者に還元される形での価格上昇ではありません。私たちの食を担保し、農業そのものを支えるための価格の上昇は今後の私たちの生活のためにも必要な過程ではないでしょうか。

ということで、今日は旬の国産の白菜を使った鍋を家族みんなでつつきながら、農業について家族で話し合ってみたいと思います。