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座布団の上の宇宙〜阿鼻叫喚〜

YUKI似の彼女ができる、というなんの根拠も保証もない謳い文句にまんまと騙され落語研究会へと入部したわたくし。

そこに待っていたのはもちろんYUKI似の女の子ではもちろんなく、一年生稽古という阿鼻叫喚の地獄絵図でした。

私が入部したのは日本大学芸術学部の落語研究会、当時でも50年以上も続いている伝統ある部活でした。(もちろんそんな事は露知らず笑)

現在メディアでも大活躍中の立川志らく師匠や春風亭一之輔師匠といった第一線で活躍する落語家はもちろん、多くの著名人を輩出してる名門です。

そういった歴史ある部活ですから、昔からのアナクロな慣習がだいぶ残っており

そのうちの1つに、一年生は「道具屋」という古典落語をイチから覚えるというものがあります。

それもマンツーマンで先輩が丁寧に教えてくれるといった生優しいものではなく

簡素な台本を渡されて、たったの一回、見せ稽古といって二年生の先輩が通しで見してくれるだけ。あとは自分で覚えてこい形式のスパルタでした。

平日週3回の稽古日にはランダムで一年生が指名されて先輩、同期の前で1人必死に覚えてきたものを見よう見まねで披露をします。

それを先輩達が、言葉の一言一句、言い回し、抑揚、キャラクターの付け方、扇子の使い方、上下の切り方といったポイントが間違っていないかひたすらに指摘し続けるという流れでした。

ただこの一年生稽古、技術的な指摘を言われるならまだいいのですが、暴力こそないものの、人格を否定する暴言に次ぐ暴言の嵐(笑)

「こんなこともできないで生きてて恥ずかしくないの?」 

「え、君まだいたんだ、いつ辞めるの?」etc…

こんなのは序の口でこれ以上は日芸落研の名誉のため書けません。笑

そんな環境ですから稽古中に泣き出す者はもちろん、高座の上で退部を申し出る者など阿鼻叫喚の地獄絵図もいいところでした。

ミスコン準グランプリのT先輩の「君は落研だね!」の可愛い笑顔に騙され共に入部した同期が15人ほどいたはずですが、夏には半分になり、なんだかんだ最後まで残ったのは4人という、、、(笑)

かく言う私も、自分から辞めます宣言を2回、仮病で稽古をサボったことがバレてクビになりそうになること1回などいろいろあったのですが(笑)いつも土壇場で謎のストップがかかり(本当に不思議)なんとか続けられました。

ただ2年生になり稽古をつける側になって初めてわかるのですが、これほどにスパルタなのは、やはり人前で表現をする以上は一定の力量や素質がないと、その人自身が恥を書いてしまいますし

週に3日の稽古&自主練と相当な時間を落語に費やす事になるため、せっかくの大学生活をなんとなくや、楽しそうとノリで入ってきた人と選別する、といった理由がありました。

優しさにもいろんな形があるのだと教えてくれたのも落研ですね(笑)

いやはや書いていても当時のしんどさは手にとるように思い出せるのですが、それにも増して後々の経験の豊かさを考えるとやめなくて本当によかったなぁと言うのが本音です。

いま現在、もしかしたら、これを見てくださる人のなかでこの状況まじきついわ〜軽く死ねるわ〜といった状況にいる方もおられる方もいるかもしれません。

もちろん人によってしんどい具合、耐えられる具合は千差万別だと思いますし、生き死に直結することであれば、笑いながら逃げるという選択が必要な瞬間もあると思います。

ただそうでなければ、歯を食いしばって向き合ってみることで数年後にはそれが心の筋肉となり、笑っていられることもあるでしょう。

私はこれからもどんな困難も笑い話にする、後のネタにするくらいの気持ちで、立ち向かっていきたいと思います。

以上、自意識過剰青年が落語という座布団の上の宇宙で、阿鼻叫喚の地獄絵図に巻き込まれたところでお時間です。

お付き合いいただきありがとうございます。

P.S実は未だに夢で、全然練習してないのに先輩に稽古を当てられる夢を見ます。。。夢だとわかった時のあの安堵感。なんだか死ぬまで見続けそうな気がします(笑)












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