痴暴症:Humanity of Dead

痴呆症の治療に定期通院で病院に訪れていた男性が突然乱心。持ってきていた杖で、担当医師、看護士を滅多打ちにして死亡させる事件が起こる。しかし、それは終末の序章でしかなかった。

日本各地で痴呆症にかかっていた老人達による暴力事件が相次ぐようになる。

緊急医療対策チームが結成され、「突発性暴力痴呆症」の原因究明が進められる。発症者の老人は常に凶暴になるのではなく、また、老人同士では暴力に及ばず、一定の条件で発作的に発症することが分かった。また特定の発生因子が脳細胞中に見つかるものの、対処方法は分からずじまい。

その間にも、事態は日本全国で急速に悪化。特に在宅介護の発症者や、一人住まいの発症者を原因とした殺傷事件は異常な数に達した。対策に関する国会答弁中に、高齢議員の発症者が出て、暴力を振るったあげく、殺人の様子が中継放送されるにいたり、警視庁は必要に応じて発砲もやむなしと秘密裏に各県警に伝達するまでに至った。

事態は更にエスカレートし、発症していない老人が家族に殺されたり、小学校では児童達も犠牲になるなど、街中で地獄絵図が展開される。

政府は自衛隊と警察による重点地域の封鎖、病状の有無に関わらず特定年齢の老人達の逮捕に踏み切ろうとするが、圧倒的な発症老人達の数の多さに劣勢を強いられるはめになり、とうとう、北海道、九州、四国は完全に発症老人達の支配下に落ちてしまうのだった。

当然、このパニックは日本だけでなく世界各地に蔓延していたのだ。

アメリカ太平洋艦隊極東海域に所属する原子力潜水艦Dementiaの艦長も発症してしまう。射殺した部下達で溢れている艦橋の中で一人、核ミサイルの発射ボタンに手を伸ばし…。

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