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小説

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例えばある朝いつものように 2

例えばある朝いつものように 2

2.

電車は多摩川をこえたあたりで加速した
水面がキラキラと反射するものだから僕はそれに心奪われた
色んな速度でそれはやってきては僕を通り抜けていった
なぜだかわからないが君に会いたくなった
顔はどうしてだか憶いだせない
いつもの口癖と、匂いだけがやたらに鮮明にこびりついている
ラベンダーのある町からやってきたサヨナラがトレードマークの女の子

僕が駅に着いたのはちょうど正午を過ぎたぐらいだった

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例えばある朝いつものように

例えばある朝いつものように

1.

「少しだけ昔の話になる」
そう僕は僕に言っていたら6月が言った
「そろそろ次のページを
歩き始める頃なんじゃないかい」
そんなふうにして僕の右手は夏の入り口に触れた

君はいつもよくわからない文字の
書かれた服やスリッパなんかを買う
よくある、どこにでもありそうな
いわゆるなんとなくオシャレに見える
そういうやつを

それが玄関に無造作に置かれている
朝は早いからきちんと並べることができな

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