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ぼくの王国 #5「チャンスは突然に」 |小説 ユニバーサル・カバラの物語 第一章

空手を教えるようになってから、ぼくはどこでも一目置かれる。5つ星レストランでは、若いというだけで怒鳴られることはもうない。オーナーは個室を利用する特別な客にぼくを紹介する。

「この男は、むかし人気を博した空手番組に出ていたあの子供ですよ」
高級な客は目新しいものに目がない。ぼくは世界的な大スターにも名前を聞かれる。レストランに高級な客がやってくると、ぼくは呼ばれて、てんてこ舞いの忙しさになる。


レストランの飲食フロアにあるエレベーターの扉が開かれる。エレベーターの中を埋めつくすような白い毛皮をまとった女が出てくる。女は熊より大きな毛皮のコートをフロントテーブルに投げやって、いつもの席に向かう。ぼくはすかさず最高級のシャンパンを持ち、窓際の特等席に向かう。シャンパンのコルクを勢いよく抜くと、トクトクと音を立てながら琥珀色の美酒でグラスを満たす。


毛皮の女は目をほそめて言う。

「あなたねえ、体中から野心をムンムン匂わせて、臭いったらありゃしないわ」

ぼくはシャンパンを注ぐ手を止める。

「申しわけございません」

「あら、なぜあやまるのかしら」

「お客様の大切なディナーを、ぼくのせいで台無しにしたのでしょうか」

「あなたは、こういう店に向いていないのよ」

女はさらりと言う。

「あたし、お店を一つ手放すことにしたの。あなた、その店を買うといいわ」

ぼくはひと呼吸おいてから。ゆっくり言う。

「いずれ、店を持ちたいとは、思っています」

「今買わなくてどうするの。人生なんて、いつどうなるかわからないものよ」

ぼくはオードブルの皿を引き取りに厨房へ向かう。フルコースをサーブする間、ぼくはなんども女と目を合わせる。女の微笑みの中にぼくはぼくの未来を見る。ぼくはいつだってチャンスを見逃さない。



レストランを買い取るために、ぼくは知っているかぎりのお金持ちに声をかける。お金持ちはぼくの挑戦を面白がり、少しずつ資金が貯まる。おじさんは、ぼくに何も言わない。ぼくのおかげで道場が儲かっていても、ぼくには一銭も支払われない。

祖国にいる母親から国際電話がかかってくる。

「おじさんが心配しているよ。オマエはあちこちからお金を借りまくっているそうじゃないか。わたしは困ったときにはおじさんからお金を借りている。だからオマエはお金を借りるようなマネはしないでおくれよ」

ぼくは言う。

「お母さん。ぼくはおじさんからお金を借りたりしない。心配いらないよ」

「それなら勝手にするがいい」

母親は言いたいことだけ言うと電話を切る。ぼくが小さい頃に家を出ていった母親はいつも突然電話をかける。母親は、ぼくが何をしているのか、聞くことはない。どうすれば母親がぼくに興味を持つのか、ぼくにはわからない。


→ …続きを読む(ぼくの王国 6「オンボロレストラン」)

前回の話はこちら。

​誰も読んだことのない、誰も書いたことのない、本当の成功の物語。
「ユニバーサル・カバラの物語」
秘密はここに。

制作
グッドニー ・グドナソン
中込英人
谷村典子

グッドニー ・グドナソン

モダンミステリースクールファウンダー
リネージホルダー メインイプシスマス

アイスランドの貴族の家系に生まれ、生まれてすぐに双子の兄を亡くす。以来兄の存在を通し、目に見えない世界とこちらの世界を同時に生きるようになる。 10代で英国のミステリースクールに招聘され、カバラ、ヘルメス学、古代エジプトやケルト、ドルイドマジックなどあらゆる魔術と形而上学を学び、最高位の魔術師となる。1997年にモダンミステリースクールを継承(当時はロッキーマウンテンミステリースクールの名称)。「No More Secret」の下、それまで秘密にされてきた真の形而上学の教えをオープンにする。現在は世界60カ国に広がるミステリースクールで教える一方で、DJとしてフジロックのステージに立ったり、ハリウッドの映画祭でプロデューサーとして活動するなど、多方面で活躍。まるでファンタジー映画や物語のようなその生き様を通し、あらゆる可能性と喜びを表現し続けている。オーロラエンタテイメント・エグゼクティブプロデューサー。
中込英人
モダンミステリースクール校長
リネージホルダー サードオーダーイプシスマス

世界中で形而上学を教え伝えるメタフィジックス・ティーチャー。幼少期より空手の天才少年と称され、大山倍達氏のもとで内弟子として研鑽を積んだ武道家でもあり、15歳で渡米した後、飲食店経営などで成功を収める。また、武道の実力を買われ、ダライ・ラマ14世のボディガードを担当。ダライ・ラマ14世から「スピリチュアルな道を人に説くもの」と称されたことをきっかけに、密教の学びを始める。密教行者として厳しい修行を積んだのち、30代で一時帰国。ミステリースクールおよび形而上学の学びと出会い、以降、スクールの拡大に全精力を傾け、2017年に最高峰の魔術師である「イプシスマス」の称号を得る。形而上学をわかりやすく、ユーモアを交え伝えるクラスは、国や文化を問わず常に笑いと活気に満ちている。著書『支配者(エリート)が独占してきた成功の秘笈』『MAX瞑想システム™️ー脳を鍛え可能性を引き出す究極の成功メソッドー』


谷村典子
作家・脚本家
日本シナリオ作家協会会員

成蹊大学卒業後、会社勤めの傍らで松竹シナリオ研究所卒業。2002年テレビアニメシリーズで脚本家デビュー。テレビ、映画、舞台で、幅広いジャンルの脚本や構成台本を担当する。
L.A.Fear&Fantasy映画祭他では、作品賞などを受賞。タロットをきっかけにモダンミステリースクールと出会い、形而上学の学びを深めている。Atelier ADITI主宰。http://atelier-aditi.jp/


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