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【エッセイ】旅動画を作ろう⑦─旅動画(2日目)とその後─(『佐竹健のYouTube奮闘記(49)』)

 8月15日。旅動画の二日目の収録が行われた。

 この日の新潟の天気は快晴で、気温は37℃くらい。そのせいか、昨日よりも日射しは強いように見える。

「37℃」

 暑すぎる。私だったら、命の危険があるということで、この日は中止して、別の予定にする。

 それでも後輩は、元気たっぷりに車内でトークをしながら、次の目的地を目指していく。

 対する山と画面を超えた向こう側の東京の天気は曇りで、気温は32℃。30℃以上という灼熱の季節には相応しい気温ではあるが、いつもの35℃以上の狂った気温よりは遥かにマシである。

 それでもこの日も暑いので、言うことを聞かないフラフラな体を起こした私は、エアコンをつけた。そしてベットで横になって、配信を見ることにした。


「我々は阿賀野市へとやって参りました!」

 阿賀野市へと入った。

 灼熱の日射しに照らされた昔の名残を留めた商店街の中を、車は駆けていく。

「阿賀野市って、なんかあったっけ?」

 画面の向こう側で、後輩はつぶやいた。

 クイズ作りで阿賀野市を取り上げていた私は、

『阿賀野市には瓢湖があるよ。冬には白鳥とかが来る湖なんだけど、どうかな? 今は白鳥はいないかもしれないけど、鴨とかはいるかもしれないから、行ってみるのもアリかもね』

 と提案した。

 阿賀野市には、瓢湖という湖がある。

 瓢湖は新発田藩が作った溜め池。後に白鳥が再飛来する湖ということで、ラムサール条約に登録された。人工の湖という意味では、所沢の狭山湖や戸田とさいたま市の境にある彩湖と同じだ。

「いいね!」

 後輩は賛同した。そして、せっかくだし、ということで、瓢湖を目指すことにした。

 途中道に迷ったり、駐車場がわからなくて探したりといったアクシデントもあったが、何とかたどり着くことができた。

 瓢湖に降り立った二人は、餌を買って、湖に撒いた。

 撒かれたエサは、湖の表面にプカプカと浮かんでいる。そこへ餌のにおいを嗅ぎつけた湖畔にいた鴨たちが大量にやってきて、浮かんでいる餌を食べた。

 そして、後輩と相方は餌をまたさらに遠くへと投げた。だが、エサをやっている途中で、配信が切れた。

 単にスマホの電波が悪いからだろうか? それとも、異常すぎる熱さのせいだろうか? よくわからない。


 道の駅へ寄ったあと、クイズタイムとなった。先月私が夕方図書館に込もって私が作ったクイズだ。

 クイズは初っ端からすんなり解かれてしまった。2問目もそうだった。

 3問目は、しっかり機能していた。問題は、新潟県加茂市の別名についてだ。

 加茂市は、古風な街並みから「小京都」の一つに数えられている。

 この加茂市についてだが、少し気になることがある。それは、

「加茂」

 という地名である。

 京都にも読みが同じ「賀茂」という地名があるが、何か関係があるのだろうか。あと、加茂川という川も流れているが、名前だけでなく雰囲気が少し京都のそれに似ている気がする。

 そう思い、後で調べてみたのだが、どうも地元に上賀茂神社や下鴨神社の神を祀った神社があることが由来らしい。また、小京都と呼ばれる所以は、京都と同じように三方を山に囲まれていることからだそうだ。

 4問目と5問目もあっさり答えられてしまった。クイズの難易度がほとんど機能していない。

 まあ、私の問題作りの難易度が少し甘かったから、仕方ない。そう自分に言い聞かせて置いた。

 それと、配信を見ていて、一つ気になったことがあった。それは、クイズの選択肢が印刷された紙の文字が反対になっていたことだ。どうやったら反対になるのやら。それでも、無事に印刷できたようなので、ひとまずよかった。


 夕方辺りに私のよく知る新潟を走っていた。

 田んぼには、青い稲が植えられている。その真ん中に道路があって、車が右から左へと流れるように走っている。

 のどかな郊外の道路を抜けると、今度はところどころに店とかがある大通りに出た。

「埼玉によく似てる」

 私は風景が大通りのそれに変わったとき、心の中でつぶやいた。

 無駄に大きいだけの店の看板。一定間隔にある駐車場の広いコンビニ。

 東京からそこそこ距離のある埼玉に風景がかなりそっくりだ。具体的な地名を言うなら、新座や志木、富士見、川越の中心部から外れた辺り(駅とか観光地から離れたとこ)といったところだろうか。とにかく、都心とか駅の近くから離れた埼玉のそれによく似ているなといつも思う。

 車は大きな店の看板と時々コンビニのある郊外の町並みを過ぎ、新潟市の中心地へと入っていった。

 たくさん通る車。そして、先ほどよりも控え目な飲食店やスーパーの看板。もちろんコンビニや飲食店もしっかりとある。だが、明らかに先ほどの光景と違うのは、ところどころ大きな建物があったり、高速やバイパスの高架をよく見かけたりすることだろうか。

(見れば見るほどそっくりだ……)

 配信を見ていて、さいたま市と蕨の境にある首都高の通っている場所に似ているな、と私は思った。国道の辺りは戸田市周辺に少し似ている気がする。

 そんな中を、後輩とその相方は、雑談をしながら二日目の宿である新潟駅前付近にあるホテルを目指していった。


   ※


 三日目は所用があったため、旅の終末を見届けることができなかった。どうしても外せない用事がこの日あったからだ。だから、男の料理がどんなものだったか、見届けることができなかった。

 後輩の話によれば、新潟市から燕市に移動し、そこで予約していたキャンプ場を借り、男の料理を作ったとのことだ。

 男の料理を見届けることができなかったのは、とても無念である。3ヵ月制作に関わってきた身として。


   ※


 旅動画の撮影が終わって1週間ぐらいが経った頃だろうか。宅急便で私の家に段ボールが届いた。送り主は、後輩だった。

(何だろう?)

 そう思いながら、おそるおそるガムテープを開ける。

 段ボールの中には、新潟駅前のバスセンターのカレーと村上牛のそぼろ、赤からラーメン、そして有名なイタリアン焼きそばの箱が入っていた。あと、謎の封筒が一つ入っている。

(ありがとう。大事に食べるよ)

 私はそう言って、箱に入っていたものを冷蔵庫にしまった。

(この謎の封筒は何なのだろうか?)

 私は、お土産と一緒に同封されていた謎の封筒の中身が気になった。

 後で後輩に聞いたのだが、後輩曰く、お守りは相方からのお土産だ、と話していた。万年体調不良の私を気遣い、健康のお守りを買ってきたのだとか。

「本当にありがとうございます!!」

 これしか言葉が出ない。

 送られてから数日後、後輩と相方の二人への感謝の意を込めて、私は送られてきたお土産の一つイタリアン焼きそばを作る動画を出した。


   ※


 現在、後輩は配信のアーカイブをまとめて動画を作っているらしい。今年の終わりにはできるかもと言っていたので、とても楽しみだ。

 下の宣伝欄に彼のリンクを貼っているので、もしできたなら見てあげて欲しい。


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