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気になる本たち「感性に従え!」

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自分の書評、気になった書評をまとめています。
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2019年12月の記事一覧

取るべき未来は自由なのか平等なのか?それとも?『欲望の民主主義』(丸山俊一)を読む

取るべき未来は自由なのか平等なのか?それとも?『欲望の民主主義』(丸山俊一)を読む

#2020年の未来予想図

これは第二次世界大戦後のイデオロギーの話ではない。この一冊を読んで、「自由か平等か」という問いは古くも新しいものなのだと感じた。

ハイエクが唱える新自由主義を推し進めた、1980年代のアメリカとイギリス。その両国に象徴される自由の追求は、2020年を迎える前に「分断」という形でしっぺ返しを食らっている。自由を強力に推し進めた結果、富める者と貧しい者の格差は広がり、トラ

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『保守と大東亜戦争』(中島岳志)を読む

『保守と大東亜戦争』(中島岳志)を読む

大東亜戦争を始めたのは、日本の保守政権だったのか?

大雑把なイメージでは、保守勢力がイケイケドンドンで戦争への道をひた走っていったイメージが有るのではないだろうか。翻って今でも、「戦争をやりたがるのが保守政党」だと思っている人も多いだろう。

この本では、戦前の保守の論客の具体的な発言や執筆を通して、保守勢力が軍国主義に抵抗し強い嫌悪感を持っていたことを証明する。

二・二六事件や盧溝橋事件のこ

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『月下の犯罪』を読む

『月下の犯罪』を読む

1945年03月24日。

その日は月の明るい夜だった。オーストリア国境の町レヒニッツにあるバッチャーニー家のお城では、ナチとその軍属がパーティーの最中だった。その晩ユダヤ人200人の銃殺にこのパーティー参加者は加担する。参加者たちは悪びれる様子もなく、銃殺後パーティーを続け、ダンスに興じた…。

このレヒニッツでのユダヤ人殺害事件の首謀者とされる「ヨーロッパで最も裕福な女性」と言われた名門バッチ

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『韓国内なる分断』を読む

『韓国内なる分断』を読む

タイトル見た時「よくある韓国トンデモ本?」と思ったけど、読んでよかった本。

「南南葛藤」という言葉をご存知だろうか。本文にもある通り、「葛藤」という言葉は日本語では心のうちのモヤモヤのような意味で使うが、韓国語では闘争、戦いのような意味になる。南南、つまりは大韓民国の国内での闘争という意味で使われている。

シンプルに分ければ、保守派と進歩派の闘争という意味なのだが、それは大義名分では「この国を

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2019年版買ってよかったもの④『武器になる哲学』を読む

2019年版買ってよかったもの④『武器になる哲学』を読む

どんな本でも読むべき最適年齢というのはないと思うけど、この本は50を過ぎた今出会ってほんとに良かったと思う一冊。言葉の一つ一つが「そうだよなぁ」と腑に落ちるとともに自省の念を抱かせる、読書の醍醐味を深く感じられる本です。

この本には、アリストテレス、マキャベリ、ルソー、ウェーバー、ナッシュ、ボードリヤールなど50人の哲学者のエッセンスを読みやすいように、それぞれ5ページぐらいにまとめられています

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「多様性」って言葉に身構えなくていい~『ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー』~

「多様性」って言葉に身構えなくていい~『ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー』~

こんばんは。師走になりましたね、、

最近、大学の講義室では暖房が導入されたのですが、空気が悪いところが苦手な僕は本当に死にそうです。マジで。

そもそも朝寒すぎて外出たくないし

そんなわけで読書の冬。

今月1冊目はブレイディみかこさんの『ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー』。

最近はビジネス本を読むことが多かったので、小説を息抜きに読もうと思っていたところで本屋さんで見つけ、ビビッ

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『科学者はなぜ神を信じるのか』を読む

『科学者はなぜ神を信じるのか』を読む

「先生は科学者なのに、科学の話の中で神を持ち出すのは卑怯ではないですか」この問いに端を発して、科学の歴史に欠かせない人物たちが神との関係をどう捉えてきたのかを整理した一冊。ブルーバックスらしく、若い人にもわかりやすい文体で書かれています。

星の不自然な動きを見て地動説を確信し、教会と対峙したコペルニクス

万物の創造主である神のことを知るには、数学で理解できる宇宙を読み解かなければならないとした

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