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『月下の犯罪』を読む

1945年03月24日。

その日は月の明るい夜だった。オーストリア国境の町レヒニッツにあるバッチャーニー家のお城では、ナチとその軍属がパーティーの最中だった。その晩ユダヤ人200人の銃殺にこのパーティー参加者は加担する。参加者たちは悪びれる様子もなく、銃殺後パーティーを続け、ダンスに興じた…。

このレヒニッツでのユダヤ人殺害事件の首謀者とされる「ヨーロッパで最も裕福な女性」と言われた名門バッチャニー家のティッセン伯爵夫人の一族の子孫が、この事件を追いかける話。

追いかけるとは言え、この本は事件の謎解きではない。自分の先祖はなにをしていたのか?ナチのこと、シベリア抑留のこと、過去をひきづっている現在、そして未来。

あの時、自分はティッセン夫人の立場に立ったら、どうしていたのか?ナチに逆らえることはできたのか?

それは現在にも通じる話だ。見て見ぬ振り。傍観的な視点に立つことで責任を回避しようとしているのではないか?

現在は、過去からできている。