マガジン

  • 春夏秋冬

    僕が振られた四季の話

最近の記事

わかってるじゃんって話

街は暗くなり、街灯の明かりだけが照らす時間に私は彼と散歩をしている。 嫌なことがあった日の夜、私は決まって眠れなくて、そんな夜に彼は決まって私を散歩に誘ってくれた。 9月とは言え、残暑も消えかけているこの頃の夜は冷えるというのに2人ともサンダルで外に出る。 歩き始めると彼は楽しそうに身振り手振りを使いながら私の方を見て、決まってよくわからない話をする。 今日もよくわからない話を聞かされた 「海が青いのってさ、空が青いからなんだよ。ほんでね、空が青いのってさ光の中の青

    • 物語のリクエストをしていただいた方へ

      前回の投稿から長らく空いてしまった。 リクエストをしていただいているにもかからわず更新することは本当に申し訳ないと思う。 文として書いている時は少し偉そうになってしまうのは許していただきたい。ここに書いている気持ちは本当で、できれば文の内容のみを受け取っていただきたい。 これほどまでに遅くなってしまった理由が2つある。 ひとつは少し忙しかったということだ。 就職活動などと生々しく、それでいて面白みもなくただの言い訳にしかならないもののせいで書けなかったというのだ。

      • 空に呟く

        ブツブツ呟くゾウさんからのリクエストです ・・・・・・・・・・・・・・・ 仕事終わりに彼女と待ち合わせた2人での帰り道。 彼女の笑いは止まることはなく、小さなことでも大袈裟に笑った。箸が転んでもおかしい年頃とは言うが、彼女の人生の場合ほとんどがその年頃なようで笑顔を絶やさなかった。 明日の朝ごはんを買おうとスーパーマーケットに寄る。チェーン店ではない田舎のスーパーだ。隣を歩く彼女の一歩前に出てドアを開ける。僕がドアを支えているうちに彼女はサッと中に入り、そして僕も後を

        • Sheep

          眠れないよもさんからのリクエストです ・・・・・・・・・・・・・・・ 失恋というのもおこがましい。 今日、気になっている男性と知らない女の子が相合傘をして歩いていた。私はその二人とすれ違ってしまった。たったそれだけのことであるから付き合っていると断定することなどできないのだけれど、その知らない女の子というのが明らかに私よりもかわいい。私と比べてしまうことこそが間違っているかもしれない。好みのタイプであるかどうかということなど関係なしに誰もがかわいいと口をそろえて言うだろ

        わかってるじゃんって話

        マガジン

        • 春夏秋冬
          2本

        記事

          受け取らない秋

          春夏秋冬というなら春に始まる。 投稿日だとすれば夏なのだが、僕の初恋は秋に始まる。もっと言えば秋に始まり秋に終わるのだが、そんな話をここに書いていこう。 とは言ってもやはり出会いは春。 小学校で仲良くしていた友人とは中学で別れたものの、徒歩1分でたどり着く彼の家へ行くことは容易で、その容易さが心理的にも僕たちを近い存在にしていた。 当時中学生の僕に携帯電話やスマートフォンなどという文明の利器は無かった。しかし憧れていたのだから、iPodという電話のできないスマートフォ

          受け取らない秋

          夏の放課後

          僕の好きな子はちょっと変で、1度も良い雰囲気になんかならない。今日も教室で2人。夏が終わるのももう間近というころだった。彼女が窓を開けると噴き出したみたいに外から夏の風が吹き、カーテンが大きくなびく。外見る彼女は外の眩しさに目を伏せたまま振り向いた。「学校のカーテンって汚いらしいよ」と言う彼女はいつも通りで花火に誘いたい僕はいつもより口数が少ない。

          夏の放課後

          君がいる夏休み

          君がいる学校と君がいない夏休み。どちらも捨てがたい。そんなことを考えていても明日からは夏休み。終了式を終えて掃除が終われば帰るだけ。数ヶ月不自然に積み上げた君との関係は今日のためだ。「花火。一緒に見に行かない?」もし言えたら始まるだろうか。大学生の僕にはもう来ないのだけれど。

          君がいる夏休み

          特別な日

          私が生まれた日は雨だったと母が言っていた。 私の名前には「雨」という文字が入っているからそんなことだろうとは思っていたのだが、「雨夏」で「ゆか」と読ませる。 母は世間でいう天然というやつで勘違いなどは当たり前で同じ間違えを何度もすることがある。そんな母に対して「母さんがそう言うなら」といって母の言ったことを叶えようとする父は健気だなぁといつも感心させられた。半分は哀れみである。 そんな母は「梅雨」は「つゆ」と読むのだから「雨」は「ゆ」と読むのだろうと思っていたらしく。夏

          特別な日

          半分本当

          彼女と別れてから1年を迎える。 付き合い始めた日など覚えていなくて、それでもなぜか別れた日は覚えているのだから喜びは悲しみで上書きすることができるのだと思う。 マガジンというからには一度で終わらないひとくくりの話がいくつかあるということだと想像できるだろう。 そのとおりで僕はこれから今までに振られてきた恋愛を書こうと思う。 普段妄想ばかりしている僕がノンフィクションなんてナンセンスじゃないかという批判は受け付けない。 僕が書くうえでそれを事実だとか事実ではないだとか

          半分本当

          7月8日

          「織姫と彦星って普段何してるの?」 仕事終わりに寄ったスーパーマーケットの中は七夕の装飾がされて、午後9時をすぎたところで今日が七夕だったと気づく。 「我が家の織姫様は今日も酒盛りをするようですが。」 そういって皮肉るも「飲まなきゃやってられね~」なんて言いながら僕の分を合わせて4つ僕が持つかごに入れる。 「小学生の頃はいじられたね〜。」 「懐かしい話をするね」 何の話かといえば僕たちの出会いとも言える話で、僕たちは小学校が同じで1年生で同じクラスだった。それなり

          大丈夫なわけない

          彼女と同棲を始めて半年くらいの今、当初の家事分担はどこかへ行き、いつの間にか僕が全任されていた。 仕事の終わり側に上司に仕事を任されていつもより帰りが遅くなった。 家に帰ると彼女がソファで横になりながらテレビを見ていた。僕に気づくと「お腹すいた!」と言ってくる。いつもは家事も終わり二人でソファに座りいつも愚痴を聞いてもらったりしている時間だ。 (おかえりも無いのか)と少し腹がたつ。 仕事がうまくいっていないこともあったのだが、いつもならなんてことないことだった。彼女に

          大丈夫なわけない

          彼の優しさ

          自分勝手にもほどがある。 そう言われて振られた。 私もいくらか彼に譲歩していた部分はあったしそんな風に振られるだなんて思ってもみなかった。 付き合って数年たってのもあってこんな理由でかと拍子抜けして後に振られた理由を友達に言ってみると 「気の強い方は皆さんそうおっしゃるんですよ」 なんて取ってつけたセリフのように言った。つづけて、 「彼氏が気遣ってくれてることとかちゃんと気づいてあげてた?」 そういわれたが心当たりがあればすでに感謝している。 高校を卒業して大

          彼の優しさ

          クッキー

          クッキーモンスターって名前は直球過ぎではな いだろうか。財布につけたストラップをみて思 う。買ってから3年目にはいる自転車をひいて 歩きながらかんがえているといつもの自転車屋 につく。自転車のブレーキはききにくくなり、 タイヤはすり減って内側のチューブが見えてい るほどになっていた。店に入り見慣れない女性 の整備士がいつもきたときのように、 「どうしましたか?」と聞いてくる。 新しい人が入ったのかなんて思いつつ、チューブの交換とブレーキなどの点検をお願いする。「しばらくお

          クッキー

          恋をすれば変わるらしい

          学校が見え、あと少しと言うところでザーッと雨が降ってきた。梅雨に入ってからはいつもこんな調子で、天気予報は傘のマーク。もちろん一日中雨なんてこともないのだが、学校帰りに突然雨に降られてしまうなんて事もあった。 完璧主義とまではいかないが、忘れ物はほとんどしたことがなく、それどころか備えに備えを重ねるのだから雨を見ても「あぁ、靴が汚れてしまう」と思う程度で、すぐに傘をさし、備えが役に立つことに少しの満足感を覚えていた。そんな気持ちに水を指すように慌ただしく隣を駆け抜けていくや

          恋をすれば変わるらしい

          パピコ

          仕事終わりにサークルの飲み会だと言う彼女を迎えに行った。彼女は僕の1歳年下の大学4年生で、僕がいたサークルの後輩だった。 今日の飲み会というのもそのサークルだった。普段は飲んだ彼女を仕事終わりにわざわざ迎えに行くなんてことはしないのだが、就職以来顔を出していなかったのでちょうどよかった。 飲んでいるという店の近くで待っていると、店の方からワイワイわいわいと人が出てくる声が聞こえてくる。真っ先に出てきたのが僕の彼女で、リクルートスーツに身を包んでいる姿は初めてで去年の自分を

          似た者同士

          カップルにしては色気もなく牛丼とビール一杯の晩餐。牛丼を掻き込むように食べる彼女を見ながら僕はビールを飲んでちょっとした話題に僕のどこが好きなのか聞いた。彼女は口を指差して僕に鏡を見せながら「そーゆーとこ」と言う。僕は慌てて口を拭ってから「同じだね」と言って彼女の頬についたご飯粒を取る。

          似た者同士