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『成瀬は信じた道をいく』

やふぅー٩( 'ω' )و
今回は、読んだ本の感想を書きます。

宮島未奈著 『成瀬は信じた道をいく』 (新潮社 、2024)


今作も地元ネタが炸裂。
1作目である前作「成瀬は天下を取りにいく」の内容が「成瀬あかりとは…」であるならば、本書は「その成瀬が…」というような内容だ。
前作よりさらに、全体的にスピード感のあるテンポの流れとなっている。
個人的に、2作目は笑い要素が多くなっている気がする。



あらすじ


ときめきっ子タイム

ときめきっ子タイムとは、大津市立ときめき小学校の「総合学習の時間」だ。
今回のテーマは、ときめき地区で活動している人。
小学校4年生の北川みらいは、自分の好きなゼゼカラ(成瀬、島崎のコンビ)を選ぶ。
成瀬に心酔している北川みらいの視点から、成瀬のストーリーが始まる。

成瀬慶彦の憂鬱

今作にて、初登場の成瀬の父。
成瀬がスマホを持っていないので、父慶彦のパソコンを共有で使用している。
ある日、パソコンの検索履歴を発見してから、父慶彦の苦悩と葛藤が始まる。
成瀬が大学受験を機に、1人暮らしを始める準備を密かに始めているのかもしれない。
しかし、大学受験は応援してあげたい。

父の視点から見る成瀬の話であり、
父親に愛され、父の苦悩を知るよしもない成瀬の大学受験の話。

やめたいクレーマー

フレンドマートを日々利用する、呉間言実(くれま ことみ)
お客様の声を響かせるものの、帰宅するとクレームを書くことへの罪悪感に苛まれる。
旦那の祐生は、言実とまったく正反対の性格だが、祐生の父はクレーマーである。
ある時、フレンドマートでバイトをしている成瀬に声をかけられた時から、彼女の生活は少しずつ変わっていく。

コンビーフはうまい

びわ湖大津観光大使選考会(大津市の観光PRボランティア)に選ばれた成瀬あかりと、篠原かれん。
篠原かれんは、祖母も母も大津観光大使に選ばれている3代目だ。
小さい頃から、そうなるべくしてなるような人生を送っており、インスタも複数アカウント持つような学生だ。
一方、成瀬は最近までスマホも持っていない。
連絡手段をきけば、自宅番号を教えられる。
その覚え方は、「コンビーフはうまい」。

真逆の2人が一緒に1年間、大津観光大使としてボランティアをする。
篠原かれん視点から見る成瀬の話と、篠原かれんの話。

探さないでください

ゼゼカラで成瀬の相方であり、小さい頃から同じマンションに住んでいた島崎。
今年も終わる年末、東京からサプライズで成瀬の家を訪れる。
玄関を開けてくれた成瀬の両親が不穏な雰囲気だったのは、成瀬の「探さないでください」という置き手紙が理由だった。
スマホも家に置いたままである。

ほとんどいつも通りに振る舞う成瀬の母と、じっとしていられない成瀬の父。
島崎は、成瀬の父と成瀬を探しに出る。
途中、北川みらい、呉間夫妻、篠原かれんにも会いグループチャットをしながら成瀬あかりを探す。


感想

今回は、笑い要素がだいぶ多かった気がする。

例えば「ときめきっ子タイム」では、最後北川みらいが成瀬と一緒にパトロールをするという微笑ましい展開になる。
成瀬は自主的にパトロールしているので、腕章は自前だと書かれている。
北川みらいがパトロールをすると言うと、成瀬はカバンから腕章を出す。
前作で、ユニフォームを買っていたところを思い出す。
何で予備持って(買って)んだよ!!と、思わず笑ってしまった。

今作初登場の成瀬の父親。
受験を控える子どもを持つ親は、子どもと同等なくらい緊張感を持つ。
突拍子もない行動ばかり印象に残りそうだが、成瀬は元々秀才タイプだ。
小さい頃から賞もたくさんもらっており、200歳まで生きる目標を持っているからなのか自己管理が徹底されている。
両親は、心配しなくて良いのだと思いつつ、やはり心配は尽きない。
父の葛藤と苦悩が面白いのだけど、さすがに試験日に知らない受験生を家に泊める成瀬の行動は爆笑するしかない。

成瀬の「探さないでください」。
今まで行けなかったスタンプラリーに夢中になる成瀬。
内密にしないといけないからと、頭良いのに肝心なところで、相変わらず不器用な成瀬が面白い。
成瀬1人のために、これまでの登場人物がかき集められて協力し合うのも面白い。
みんな成瀬を知っている。
けれども、その真意を的中出来る者はいない。


成瀬の「やりたいことが多すぎるから」というのは、最近読み返した佐倉準さんのマンガ「湯神くんには友達がいない」を彷彿させる。
やりたいことが多いから、スマホで費やされる時間がどうこうよりも、暇であるとか退屈であることがない。

最後の「探さないでください」で成瀬がけん玉を持ってNHKに出ていた話。
最近、私は職場で空き時間にけん玉をしていた時、「NHK出たら?」と言われたばかりだ。
私は成瀬のように秀才ではないし、あそこまで神出鬼没キャラクターではないと思う。
しかし、やっぱりどこか似ている。


笑えて、元気をもらえる成瀬あかりのストーリー。
本書を読んだら、滋賀県に行ってみたくなった。

おすすめ。


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