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ガラスのない水槽
こどもの頃、水族館の水槽のガラスが触れなかった。そこにガラスがあると思えなくて、触れたら水の中に入ってしまうと思ったんだよね。なんでだろう。
怖いことや不安に思うことって、多少のことは誰かに❝大丈夫!平気平気!❞とか軽く言われたり、えいや!って勢いつけたりしてどうにかなっていっちゃうものだけど、怖かった時の気持ちとか、えいや!って勇気だした時のこととか、いつでも思い出せるようにしておきたいな。
ノア・バームバック監督の『イカとクジラ』は、過去の恐怖と、今の不安を乗り越える。そんな映画。
1986年ブルックリン。元人気作家で教え子と同棲中の父親と、今人気作家で恋愛遍歴を息子たちに語る母親。両親の離婚からくるストレスをビールで解消する弟と、コンテストでピンク・フロイドを真似て優勝した僕。生きることに不器用な家族4人をちょっと切なく、おかしな物語。
こどもの頃怖かったものを、大人になってから見てみたらそうでもないことと同じで、親も偉大な聖人なんかじゃなくて、失敗を繰り返すただの人間。
博物館の巨大なイカとクジラのオブジェを前に、両親の呪縛を乗り越え前進するようなラストが気持ち良かった。
このワケあり家族見てて思ったのは、親が親でいられなくなると、子も子でいられなくなるのだろうね。
綺麗事ばかりでいられない人間たちを、え…そうなっちゃうの…?ってひと捻りある演出をしてるところに惹かれてグイグイ観ちゃう作品だった。
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