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はずかしがりやさんの写真館~友人が女優になった瞬間~

衝撃の初対面から
約2か月が過ぎた。

八王子駅の改札口で、
りょうちゃんと待ち合わせの約束をしている。


わたしたちを引き合わせてくれた友人が
写真撮影をお願いしているのだ。

2人の好意で
わたしも同席させてもらえることになった。


駅から歩くこと20分。

撮影場所となるスタジオに到着した。

りょうちゃんに確認したところ、
駐車場の用意もあるらしい。


雨の日でも安心だと思っていたら、
「撮影は、晴れた日限定」とのこと。

自然光にこだわりたいそうだ。

はずかしがりやさんの写真館は、
一般的な記念写真スタジオではない。

りょうちゃんが考える
完全オリジナルのフォトサロンなのだ。


スタジオに到着後、
撮影の詳細を友人にたずねる。

「女優コース」に申し込んだとのこと。

少しだけ恥ずかしそうに
「今日は、女優のつもりで」と言っていた。

そうだ、
彼女も「はずかしがりやさん」だった。

はずかしがりやさんの写真館 「フォトサロン クルール」


スタジオは窓から明るい光が差し込んでいる。

照明器具は1つもない。

目に入るのは
白い壁と小道具のスツールのみ。

仕度する様子を見ていても
ヘアメイクをセットするための鏡のみだ。

女優コースなのに?
頭の中にクエスチョンーマークがわく。


友人は、
いつものようにメイクを直している。

りょうちゃんは、
友人の持参したワンピースを見ながら、
次々と小物を運んできた。

イヤリングや帽子、
サンダルにお花もある。


まずは、
着てきた洋服で撮影するらしい。

りょうちゃんが用意したイヤリングをつけ、
髪の毛をどうするか相談している。

雑誌をめくりながらイメージを共有して
「こんな感じいいかも」と、
まるで友達同士のやり取りだ。


和やかなムードで進む撮影


リラックスした状態のまま、
撮影は始まった。

友人は、
はずかしそうにカメラの前に立つ。

「手はどうしたらいいの?」

モデルとしての戸惑いを感じる。


一方、
りょうちゃんはマイペースだ。

カメラの不調があれば、
「なんでだろ?どうした??」と、
被写体そっちのけで語りかける。

自然体すぎて、
友人も拍子抜けしたのかもしれない。

一瞬で、
こわばった空気は消えた。


ヘアセットも手際よくおこなう


撮影の主導権は
ほぼ、りょうちゃんにある。

あくまでも、
彼女が「かわいい」と興奮するのが正解だ。

りょうちゃんが
洋服に合わせて
アクセサリーも髪型も変える。

ポーズも実演しながら指示していく。


文字にすると、
厳しく感じるかもしれないが、
全然違う。

「目線を下にしながら、肩の匂いを嗅いでみて」

「え?何?って感じで、こっち見て」

表現が独特で、
思わず吹き出してしまうのだ。


仕上がりの写真は自然なポーズ
撮影:photosalon_couleur


しかも、
誰よりも興奮しているのが
撮影している本人というカオス。

「いい!いいよ~!!」

「かわいい!!」

「そう、それ、○!※◇#△!」

しまいには、
カメラを手にしたまま
その場でジャンプして悶えている。

少し心配になる熱量は、
間違いなく「変態」だ。


撮影の間は、被写体に全集中


モデルである友人は、
りょうちゃんの姿を見て
大笑いしたり、
微笑んだりしている。

やさしくて、やわらかい表情。

小さな子どもや
大切な人に向けられる眼差しだ。

撮影の間、
友人を見て
「こんな表情するんだ」と何度も思った。

友だちにも、家族にも見せない顔。

もしかしたら、
自分でも見たことない顔なのかもしれない。


いつも見ている洋服を着ているのに、
カメラの前にいる彼女は
まるで別の人のよう。

まさに、女優だ!


撮影:photosalon_couleur


はずかしがりやさんの写真館では、
女優にしたてあげるのではなく、
女優として指示を出す。

考えてみると、
女優という職業は、
監督のイメージに合わせて
衣装もメイクも演技も決まる。

彼女たちが垢抜けていくのは、
プロの手助けもあるけれど、
半ば強制的に
新しい自分になるからなのかもしれない。

女優コースでは、
カメラマンの指示で演じた自分を
写真という形で目にする。

素人だった女優が輝く過程を
一般人も体験できる仕組みというわけだ。

はずかしがりやの写真館は、
かつてないコンセプトの
フォトサロンなのかもしれない。

東京都八王子市
はずかしがりやさんの写真館
フォトサロン クルール
公式 
Instagram


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