見出し画像

【壱ノ怪】星月ノ井、千年の刻待ち人(21)

21:かぐら、玉響に涙す


“死者と話すことができないか?”


自分の言葉に小舞千さんは力強く頷いてくれた。
全部話すとは限らないが、重要な手がかりはきっと話してくれるはずだ。と。


何かが抜け落ちている。


彼らにとって重要な何かが。


そのキーワードが回収できなければ、
あるいは、何かキーになる行動を起こさなければ、
次のストーリーに進めない。
RPGならば・・・ゲームならそうだ。

それがなければ先に進めない。
不自然な点を探す。
正に、RPGの基礎だ。


小舞千さんはすっと庭にいる母親と思しき女性の方へ向き直った。
女性は大変疲れた出で立ちだった。顔も髪も疲れ果てている。
身なりを整えればかなり容姿端麗に思える。

と、小舞千さんが自分に顔を向けた。


「鎌倉に繋がる、切通し・・・。と言ってます。
かなり渋っていますが・・・そこに何かあるようです」

「辛い思い出があるのね・・・」


藍子さんが何もまだ聞いていないのに涙ぐみながら何度も頷く。


「行ってこい。2人とも。そこに・・・この家族の真実があるんだろう」


益興さんがそう微笑みながら言う。


「でも、切通しって7つもあるけど・・・」

「極楽寺の切通しじゃ。小舞千」


狐少女が間髪入れずそう答えた。


「え?何で分かるんだ?」


「私を何だと思っておるのじゃ。あの者から伝わってきておる」


いつもならここでかなりのドヤ顔を披露する彼女だったが、
神妙な顔から全く変わらない。真剣な顔だ。


「時間が無い。早く行くぞ神楽。その後神社に行くようなことでもあれば16時までがタイムリミットだ。神社的にも、お前の冬休み的にもな」



「・・・」


烏天狗の言葉に、一瞬その真意を考えてしまった。


「・・・今日は、ゲームと思って思いきりやるんだろ?」


自分は、そう言いながら笑う烏天狗の目を見ながら真剣に言った。


「・・・言っておくが・・・俺は、仕事には手を抜くがゲームでは手を抜いたことはねぇ。レアアイテム、隠しダンジョンまでやり尽くした上に必ず連続で2週目もやる主義だ」


そう言って玄関へ駆け込む。
烏天狗がフッと笑って腕を組む。


「面白ぇ奴だ」

「烏天狗さん。佐竹さんの言ってる意味が分かるんですか?」


小舞千の問いかけに烏天狗は言い切った。


「さっっっっっっぱり、

分からねぇ・・・!!」


それには全員がっくりときた。



ここから先は

5,325字

¥ 100

ご興味頂きましてありがとうございます。書き始めたきっかけは、自分のように海の底、深海のような場所で一筋の光も見えない方のために何かしたいと、一房の藁になりたいと書き始めたのがきっかけでした。これからもそんな一筋の光、一房の藁であり続けたいと思います。どうぞ宜しくお願い致します。