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【ねこ好きの本棚】#4 ペットと出会う遊園地があるって知ってた?

はい、こんにちは🐾
今回紹介する本は
『世界のアニマルシェルター、保健所は、犬や猫を生かす場所だった。』
本庄 萌 著

です。

本書は動物法学者である本庄さんが巡ってきたうちの7か国(アメリカ・イギリス・ドイツなど)のシェルターについて可愛い動物たちの写真とともに紹介された本になります。

保健所や動物保護施設のシェルターと聞くと
・辺境にある隔離施設
・殺処分される場所
・かわいそうな動物達がいる場所…

など明るいというよりは少し暗いイメージを持つのではないでしょうか??

ですが本書の最初たった10ページも読めばそんなイメージは吹っ飛びます。なんなら文章読まずに掲載されてる写真だけ見ても飛びます 笑

本自体も大変読みやすく、まるで友達の旅行日記を読んでいるような
肩ひじ張らずにサクッと読めるものになっています。

どんな人におススメかと言いますと
・動物が好きな人
・保護施設から犬猫を引き取りたいけど不安な人
・動物学校の学生
・動物系のお仕事をされている人

に特におすすめです!

今回は次のような流れで解説していきたいと思います。


ではまず

保護施設に暗いイメージを抱いてしまう理由

です。

もともと日本で行政管理の動物保護施設が作られた理由は
「狂犬病の予防のために野良犬を収容し殺処分するため」です。

狂犬病とは主に犬やその他哺乳動物に嚙まれることで感染する
致死率100%の感染症です。

そして押さえておきたいのは現在の日本の犬猫の殺処分数です。
こちらは環境省が発表している2021年度の数になります。

21年4月~22年3月までの犬猫の収容数と殺処分数

犬猫合計で1万4千頭もの犬猫が殺処分されています。

このように
行政の引き取り=死
というイメージが強く人々に反映されていることがネガティブなイメージを抱く背景なのかもしれません。

実際、民間保護施設の多くは、殺処分数される命、救える命を救うために創設されたものがほとんどです。
ですがそこで止まっているとネガティブなイメージのままになってしまう。

本書を読むと
海外ではその先へ
未来に向かってポジティブに施設を運用している姿と、
日本はまだネガティブな現状から抜け出せないでいる状態
というのが浮き彫りになるように見えます。

そのため今日まで多くの人々は
保護=かわいそう、保護施設=暗い場所
というイメージのままなのかもしれません。

保護される理由自体は飼育放棄や多頭飼育崩壊など悲しいものが多いですが
その施設やそこで働く人々は実はそうではないことの方が多いのです!

ではいよいよ海外の施設や人々がどんな様子なのか見ていきましょう!

シェルターはまるで遊園地

本書に登場する海外のシェルターには共通点があります。

それは
・ボランティア、職員の人が楽しそうに働いていること
・建物自体が明るく開放的な作りであること
・清潔であること
・市民が利用しやすいつくりであること
です。


施設やそこにいる人々がポジティブで明るければ、そこに来る人も必然明るくなります。ディズニーランドに行ってネガティブな気持ちになる人はいませんよね?
海外の施設は保護される暗い背景を微塵も感じさせないほどまるで遊園地のようにポジティブな場所なのです。

ちなみにボランティア(volunteer)とは
ラテン語の「ボランタス(Voluntas)=自由意志」
という言葉が語源とされています。
ボランティアとは自らの意思で自発的に活動する人のことです。
やりたいと思ってやっているので活き活きしているのも頷けます。

では彼らが働く施設が具体的にどんな作りかというと建物の構造自体では
色使いは明るい黄色や赤を取り入れた看板が多く、建物自体も高さや広さがあり、太陽の光がしっかり入る明るい空間になっています。
また案内図やキャッチコピーもポジティブで見やすいものが多いのが特徴です。

皆さんも引っ越しする時などは日当たりを気にする人も多いのではないでしょうか?常時薄暗い部屋よりは明るい部屋のほうがいいですよね?

本書に登場するベルリン(ドイツ)にある保護施設ティアハムでは
大きな蓮池があったり、ツタなどの植物、樹木が敷地内にたくさんありり、ます。

また広い空間は人々に与える印象だけでなく、犬が散歩できたり、それぞれの個室空間で十分なスペースをとることにもつながります。

動物福祉先進国の海外では動物のQOL(Quality Of Life)が特に重要視されており、ストレスなく彼らが過ごせるスペースの確保というのも、そういった配慮からなるものです。


市民が利用しやすいつくりというのは
・動物病院が併設されている
・犬のしつけ教室の開催
・ペットグッズの販売

などが挙げられます。

動物病院が併設されていることで、そこは動物学校や獣医学生の実地研修の場としても活用できます。手術をし、動物病院業務をシェルターがある環境でこなすことで、保護施設というものがより身近になります。

ペットを飼っている人にとっても、ここに行けば、治療もでき、生活に必要なものも手に入り、ペットの相談もできます。

そうして大人たちにとって身近な施設は、やがて子供にも伝わっていくという、ポジティブな流れが生まれるスンポーです。

シェルターが出会いの場

日本ではシェルターと譲渡会や出会いの場である猫カフェなどは施設として分かれていることが多いですが、海外では建物や部屋としては分かれていても敷地や枠組みとして分かれているものは少なく
シェルター≒出会いの場
でもあります。
これもシェルターが身近になっている一因でしょう。


アメリカのシェルターでは実際に猫と遊べるように6畳ほどの部屋がいくつもあったり、『子猫カメラ』という、子猫の様子が観察できるカメラと部屋があります。
実際にシェルターにいる猫と触れあれることで譲渡数の増加につながっているようです。

また犬や猫が譲渡されても人の生活に慣れやすいよう
部屋は犬猫への生態的配慮だけでなく、家具やカーペットを置くなどして
人の生活を想定した部屋にされています。

海外の面白い工夫と取り組み

では次に海外のシェルターで施設の運営や譲渡数を上げるために行ってる斬新な取り組みや事例をピックアップしたいと思います。

①まるで離婚後の養育費のような、元の飼い主から飼養費をもらう
スペインにあるバルセロナ市営シェルターでの制度です。

ここではペットを飼えなくなり受け入れてほしいという飼い主さんからの要望を受け入れる代わりに、毎月一定額の飼養費を次の飼い主さんが見つかるまで払ってもらうというものです。
この制度の良いところは2つあり
1つは飼い主さんがやむ得ない事情で飼えなくなってもその犬のサポートをすることができる(愛を注ぎ続けられる)こと
2つ目は運営資金をまかなうことができる

ことです。

またこの施設の面白いところは自然保護区をまるっとシェルターとして管理し、犬も猫も自然の中で放し飼いにしているところです。
日本だと非現実的ですが、飢えや外敵の脅威がない中で自然に触れさせてあげるというのはストレスがかからず、かつ運動不足も解消できるという素晴らしいものです。

②動物の行動学に基づいた部屋の設計
こちらは香港のシェルター。
イギリスのシェルターを参考に作られたもので犬猫の生態を反映し、彼らに都会でもストレスなく過ごしてもらえるように工夫が施されているつくりです。
具体的には
・来訪者のにおいを犬が確認できるよう犬の高さに肉球型の穴があいている
・猫の部屋に行くと扉を開けたときにピアノの音が鳴る
・相性の良い猫を一つの部屋に入れ遊べるようにする

またアメリカ同様こちらの施設にも動物病院と犬猫のしつけカウンセリング
の2軸をビジネスとして同施設で行うことで運営費をカバーしています。

③スポンサー制度
日本の大阪にある私営保護施設アークでは、保護施設にいる動物のスポンサーとなり飼育費を寄付したり、施設に訪れ定期的に散歩させることのできるスポンサー制度というものを取り入れています。
この制度のメリットは
1.住宅事情や出張が多いことで動物を飼いたくても飼えないひとにも飼う体験をさせてあげられること
2.飼おうかどうか迷っている人に飼うイメージを持たせてあげられること、3.実際に動物と触れ合っている姿から施設側が適正飼養者になれるか判断しやすいこと

が挙げられます。

やっぱり飼ってみたけど、イメージと違ったなどがないようにするセーフティーネットの役割を果たしてる斬新な制度と言えます。

④動物事件を防ぐ8つのプロセス
こちらはアメリカで採用されている動物虐待および、凶悪犯罪事件を防止するためのものです。アメリカでは刑事事件を起こす犯人を分析し、過去に動物虐待をしていたり、自らが虐待されていたという背景があることが多いことを明らかにしています。

それ踏まえ8つのプロセスとは

1.ヒューマンエデュケーション(教育)➡学校等での教育
2.獣医師の目➡動物の状態を見て虐待かどうかを行政に進言する
3.市民の通報➡市民が虐待かもと思ったら相談でなく通報する
4.虐待現場への立ち入り調査➡警察や保護団体職員が連携し調査する
5.保護動物の診断、治療➡保護された動物の治療
6.動物事件の裁判➡刑事事件として動物関連事件も重く扱う
7.動物のメンタル&肉体ケア➡遊びや日々のケアを根気強く行い人慣れ
8.出会いの場の創出➡あらゆる手段で出会いの場を作る

私が日本でも私たちがすぐできることして
1.7.8が実行しやすいのではと思います。

日本は法律上動物が『物』扱いです。そのためどうしても裁判やまた実際の事件の調査は難しいものがあります。
なのでできることはまず予防すること、そして動物のセカンドチャンスを作るサポートをすることではないでしょうか。
1で言えば学校に訪問したり、学校で動物を飼育、また職業体験など
7は保護猫カフェや施設に行って動物と遊ぶ、また施設等をSNSでシェアすること
8は譲渡会の開催や、施設のアピールの仕方をポジティブにすること
などができます。

動物と触れることは子供の情操教育や精神疾患への回復に良い効果があるとされ、アメリカでもグリーンチムニーズという職場体験とセラピーを兼ねた施設があるほどです。

動物保護と国民性

ここまで海外の事例等を様々紹介しましたがなぜこんなにも日本と違っていたり斬新な発想が出てくるのでしょうか。
それは国民性の違いにあることが本書から見てとれます。
特に印象的なのはに欧米は『正しくない』、日本は『かわいそう』
という論理的か非論理的かというところです。

ドイツでは憲法で動物の地位を確保しており、アメリカでは善悪を規定し、市民により通報を行ったりと論理的に善悪に働きかけ、仕組みを作っています。

対して日本はその点があやふやで「かわいそう」とどこか他人事のように外から見ているような立ち位置で止まってしまっています。

友人といるときに募金をしたり、保護猫のボランティアをしていることを話すと、「優しいね」とか「偉いね」と言われることがありますが、ここにも他人事とみるか、社会のこととして向き合うかが出ているのではないかを思います。

動物の安楽死にもそれが如実に表れています。
海外では助かる見込みのない病に侵された動物や狂暴すぎて手を尽くしてもしつけができない犬などは安楽死になりますし、飼い主もそれを選択します。対して日本は病に侵されても何とか延命させようとしたり、安楽死=悪の意識が深く根付いています。

助かる見込みがない場合、安楽死させる方が延命に使う人員や資金を次の命につなげられることに使えますが、そこを「かわいそう」という一点でさけるのはいささか疑問があります。

勘違いしないでほしいのですが、安楽死は最善を尽くしてもどうにもならない場合にのみ行い、全力で助けに行く姿勢は貫く、ところはお伝えします。

しかし欧米もはじめから今のようであったのではなく、ビクトリア女王の一言や、動物福祉を訴える絵本、刑事事件の犯罪者の過去を分析すなど様々なきっかけがあり今につながっています。

日本にもそういうきっかげが生まれること、アピールの仕方を変えていくことでよい方向に変わる可能性はきっとあるはずです。

最後に

動物を愛する人、そうでない人へ伝えたいこと


です。それは
「フラットな気持ちで動物と今彼らがいる場所の事を知ってみませんか?」
ということです。

『知る』ということは愛すること、問題を解決すること、あるいは新しい知見を得ること、全てのことに必ず必要なプロセスです。

動物のことを知れば彼らへの愛はより深まるでしょうし、なぜ彼らが苦しんでいるのか、またなぜ保護団体へ寄付が必要なのかなども分かると思います。

そして重要なのは『フラットな気持ちで』というところです。
本書の最後に紹介されている、ある言葉があります。

「ありとあらゆる問題の根底にあるのは、他者の価値を低く見るという考え方である」  ポール・ファーマー 

2者の間で一方を下に見ていては相手のことを真に考え思いやれないために良い関係など築けるはずもないでしょう。
これは人間関係にも言えることです、下に見られた方はいい気分はしないはずです。
フラットにバランスよく物事を見て知り、想像すること、動物に限らず大切なことです。

そして動物やそこで頑張る人に、私たちがたとえ動物の仕事をせずとも差し伸べられる手を持っていることを私たちは知っています。

・1円寄付をする
・軽い気持ちでボランティアをしてみる
・保護施設や保護猫カフェ、譲渡会などのことをSNSでシェアする

少しでも保護施設や動物に対するイメージがポジティブになってくれたり、手を差し伸べてもらえたら嬉しいです。
そこは彼らを愛し、その愛を広げる、笑顔にあふれる場所なのです。
そして動物が私たちに暮れる贈り物も多大です。
癒しや愛、精神の回復、子供の情緒の発達、飼い主同士のコミュニケーション、などなどたくさんあります。

まずはぜひフラットな気持ちで知ってみてください。

海外のシェルターや施設は
猫と遊び、犬を散歩させ
出会いの場でもあり
病気を治す、また学生の職場研修の場とも
子供の教育の場ともなっています。
正に市民にとっての遊園地のような学びの場のようなそんな明るい開けた場所なのです!
そして日本にそういう場所はあります。
それが猫カフェや本書で紹介されている日本のシェルター。

きっとあなたやあなたの人生を豊かにする、あるいは笑顔にするものに出会えるはずです。

それではまた来週😸

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