ねこのあくび

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最近の記事

「4月になれば彼女は」 川村元気

 何年か前に読んだ本。4月に映画を観て、再び読み返してみた。「億男」を読んでから一通り読み通した作家。完全な答えのない、悩みに共感する。  突然届いた昔の恋人からの、旅先から届いた手紙で始まる。医学部3年の写真部 副部長 藤代俊(フジ)と文学部の新入生の新入部員 伊予田春(ハル)。二人は出会い、恋に落ち、写真部のOB大島さんの片思いが絡みついて、永遠だと信じた恋は遠い昔に突然に終わった。  現在は精神科医の大学病院勤務医となったハルは、獣医の弥生と同棲しながら結婚式の準備を

    • 「スピノザの診察室」 夏川草介

       「神様のカルテ」を読んで好きだなと思った。漱石の草枕を愛読する医師の栗原一止の物語。松本の本庄病院の勤務医として、古びた御嶽荘に住まい、妻の山岳カメラマン ハルさんと紡ぐ心温まる話。シリーズを含めてすべて読んだ。  縁あって松本に住まうなか、「始まりの木」の柊の木を伊那谷まで見に行ったりも。  コロナと闘う「臨床の砦」「レッドゾーン」の2作品はタイムリーで、医師の矜持に頭が下がった。  夏川作品は、信州の自然豊かな情景に抱かれ、草花の息吹きが医療現場の喧騒に清涼感で和ませ

      • 「777」 伊坂幸太郎

         少しひねりのある作風が好き。東野圭吾より粘度があるのにスピード感があって読みやすいという感覚がある。多様な登場人物のそれぞれの考え、思いが作品に拡がりをもたせるが、短く切り替わるので軽快に仕上がっている。ゴールデンスランバーが衝撃的で他の作品も片っ端から読んでいる。  殺し屋から特殊能力持つ人物、独特な世界。想像もつかない設定に毎回驚かされる。魅力あるミステリーが沢山あるが、オー!ファザーの4人の父親が愛しく印象強い。  本を手にして777は、スリーセブンではなくトリプル

        • 「星を編む」凪良ゆう

           最初に手にしたのは「流浪の月」。2020本屋大賞「汝、星のごとく」を昨年読んで、いつになく感動した。その後「滅びの前のシャングリラ」も楽しく読めた。今回2023本屋大賞の「汝、星のごとく」の続編、アナザーストリーを読んだ。装丁が好き。淀む心に、澄み渡る寂寥感がある。  前作は、瀬戸内の島に住む高校生の櫂と暁海が、夢を抱き、挫折して悩み、SNSの嵐に翻弄され、誰かに支えられ生きてゆく。櫂と暁海の立場を反転させながら物語が進行する。  今回は櫂と暁海に関わった、北原先生の過

        「4月になれば彼女は」 川村元気

          「サミュエルソンかフリードマンか」経済の自由をめぐる相克 ニコラス・ワプショット著

           久しぶりに経済専門書を手に取った。「複合不況」宮崎義一、「資本主義の自壊」中谷巌の書のように理論経済と実証経済の歪を示唆してくれる。  ポール・サミュエルソンとミルトン・フリードマンは、ともにユダヤ人でシカゴ大学で学んだ。ニューズウィーク誌で永年コラムでの論争を重ねた経済学の巨匠で、ノーベル経済学賞の受賞者。  ハイエクとケインズの時代を経て、保守派でケインジアンとして「経済学」を著したサミュエルソン。ケインズの「一般理論」と共に経済学の教科書としての王道。一方、議論好き

          「サミュエルソンかフリードマンか」経済の自由をめぐる相克 ニコラス・ワプショット著

          「変な家」雨穴

          建築好きから、タイトルと表装を見て読んでみた。  フリーライターの筆者が、知人から中古の戸建て物件の購入にあたり、間取りが気になり相談されることからストリーが始まる。台本のような構成で、読みやすかった。  筆者が、間取りをホラーとミステリー愛好家で設計士の栗原さんに見せて相談する。栗原さんの間取りから浮かび上がる仮説を追う展開で、元住人の関係者が現れる。3つの変わった間取りから殺人事件の仮説が膨らんでゆく。  片渕家の本家と分家の確執から生じた怨嗟。擦り込まれた左手首の呪

          「変な家」雨穴

          松本城の桜と北アルプス

           国宝松本城に今年も春が訪れた。暖冬の年にもかかわらず、寒暖の振れが大きく、2月、3月に大雪に見舞われて例年より遅れての開花。  一輪では朧気でも、景色に溶け込むことで儚き美しさを漂わせる桜花。短い見頃が心に残る花。  老木の松本の桜は、弘前の絢爛さには及ばないが、深い藍に染まる天守を抱くことで独自の風景を作り上げている。白き雪の常念岳と蝶ケ岳が清々しい。

          松本城の桜と北アルプス

          「世界でいちばん透きとおった物語」杉井光

           題名に惹かれて手にとった。流れるような文章で読みやすい。  推理小説の作家の婚外子 藤阪橙真は校正の仕事をする母と二人暮らし。母を突然なくし、書店バイトで色褪せた日々を過ごしていたら、、、  一度も会ったことのない小説家の父が亡くなった。多くの女性関係があった見知らぬ父への感情はないが、長男と名乗る松方朋晃が現れ、未発表の原稿を探して欲しいと頼まれる。母親の仕事関係の霧子さんが協力してくれて、記憶の影もない父と関係のあった女性に会い、父の姿が形作られてゆく。  母親を捨て

          「世界でいちばん透きとおった物語」杉井光

          「魔女と過ごした7日間」東野圭吾 ラプラスの魔女3

           読みやすさと展開のスピード感が、ハリウッド映画のような東野圭吾作品はほぼ読んでいる。  彼の作品に度々登場する、特殊な才能を持つ羽原円華という魔女。元見当たり捜査官という警察官の父が殺害された。中学生の息子の陸真が、同級生の純也と謎めく羽原円華と脇坂刑事で事件を追う。  ゲノム・モンタージュという科学の未来に、マイナカード、ビッグデータの扱いについての問題提起。警察の威信と権威に歪められる事実。AIが及ばない熟練の技。闇カジノは非合法ギャンブルたが、合法のギャンブルとの線引

          「魔女と過ごした7日間」東野圭吾 ラプラスの魔女3

          「青瓜不動」宮部みゆき

           好きな作家の一人で、時代小説から、杉村三郎シリーズなど幅広い。理不尽、不条理をのみ込んで重たい心情を映しながら、ふっと息をつける感覚が好き。火車、小暮写眞館など。  三島屋変調百物語九之続 語って語り捨て、聞いて聞き捨ての百物語 おちかを引き継いだ、聞き手は三島屋の富次郎 第一話 青瓜不動  お奈津が懸命に一途に生き、枯れた地を青瓜で土を改良して畑にして、荒れ寺の洞泉寺が弱き者に拠り所となる。そして畑から不動明王が。薄幸の叔母のお萬、苗売の六助爺さんが心暖かい。時代物だけど

          「青瓜不動」宮部みゆき

          「くもをさがす」西加奈子

          「くもをさがす」西加奈子

          「くもをさがす」西加奈子

           雲を探すだと思い本を手にした。蜘蛛なんだ、あれっと思いながら読み始めた。カナダ バンクーバー湿疹で病院へ。くもに噛まれた虫刺されと診断。気になった胸の痼が乳がんと判明。「まさか私が」病に寄り添い歩む生活が心に沁みる。現地の会話まで軽快な関西弁で綴られ、読み手の沈み込む辛い感情をふわりと支えてくれる。作家ならでは、随所に本、歌詞、ニュースクリップが挟み込まれてアクセントになっている。  私は幼児の頃、盲腸で一泊手術入院の経験しかない健康な身体を親から授かり自身でケアしてきた。

          「くもをさがす」西加奈子

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          温泉 南アルプス市

          温泉 南アルプス市

          温泉 南アルプス市 天恵泉白根桃源天笑閣

          甲府駅から15キロ、30分ほどの山の中の素朴な日帰り温泉。地元のおじいちゃん、おばあちゃんの憩いの場。市外の人はクーポン使って500円。熱湯、普通と水風呂の3種。源泉かけ流しでトロッとした肌触りが心地よい。サウナ代わりに熱湯と水風呂を交互入るのがお勧めとある。肌が生き返る実感。泉質がおすすめ。山を下ると左手に富士山が見送ってくれる。

          温泉 南アルプス市 天恵泉白根桃源天笑閣

          木挽町のあだ討ち 永井紗耶子

          木挽町のあだ討ち 永井紗耶子

          [木挽町の仇討ち]永井紗耶子

          今日読み終えた。関係者5人の語りと、最終章の主人公の話しが加わり全てを繋げ完結する。流れるような文章が清らかすぎて、2章位まで物足りなさを感じていたが、後半に至り心に沁みる。出自は人生の所与。自身の人生を如何に生きるか。芝居小屋に流れ着いた5人の [来し方]生き方が語られ、主人公の菊之助へ寄せる人情模様。武士を貫いた菊之助と、武士を捨てた与三郎と篠田金治。人は流されることに悩み、ふとした瞬間に、[行き方]生き方を見つけるのではないか。心通わせる徒を得て。

          [木挽町の仇討ち]永井紗耶子