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「青瓜不動」宮部みゆき

 好きな作家の一人で、時代小説から、杉村三郎シリーズなど幅広い。理不尽、不条理をのみ込んで重たい心情を映しながら、ふっと息をつける感覚が好き。火車、小暮写眞館など。
 三島屋変調百物語九之続
語って語り捨て、聞いて聞き捨ての百物語
おちかを引き継いだ、聞き手は三島屋の富次郎
第一話 青瓜不動
 お奈津が懸命に一途に生き、枯れた地を青瓜で土を改良して畑にして、荒れ寺の洞泉寺が弱き者に拠り所となる。そして畑から不動明王が。薄幸の叔母のお萬、苗売の六助爺さんが心暖かい。時代物だけど、格差と差別が蔓る社会にも来し方を見守る人がいる。家を捨てたお奈津が、父の死後に想いに触れた時、心が波立つ。
第二話 だんだん人形
 悪代官の悪行は、独裁政権、ワンマン経営者と同じ。捨て子の一文が、肝っ玉が身体から流れ出す思いをかさねて、命からがら城下まで脱出する。辛い思いをして生気を失ったおびんちゃんから、精魂込めた武者の土人形を贈られ、お店を4度救われる。
 「たくさんの無念が、怒りのままに凝って怨念になってしまわないように。」
第三話 自在の筆
 欲が生みだすまやかしの筆。
第四話 針雨の里
 針の雨ではなく、雨が針となる風舞さん。
 第一話と第二話が好き。尊いのは人の念。

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