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筑波大の大学院で日本の近代史(社会史・文化史)を、同比較文化学類で日本研究コースの担当…

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筑波大の大学院で日本の近代史(社会史・文化史)を、同比較文化学類で日本研究コースの担当をしています。 このnoteでは、いただいた本や仕事・研究で読んだ本、授業で話すための小ネタ集、その他教育研究活動の一部の紹介をしていこうと思っています。

マガジン

  • 樗牛研究余録

    筆者の高山樗牛研究のなかで出会った、論文にはしていないけれど気になる挿話などをご紹介します。

  • 訪問先の記録

    歴史と文化にまつわる、ここ行ってきたよ。という場所を、過去の訪問も含めてまとめています。

  • みちくさのしおり

    いただいた本や、仕事のために読んだ本、学生に勧めたい本を備忘のためにまとめています。

  • アカデミック・スキルズ小ネタ集

    調べ方、読み方、書き方、プレゼンなどのアカデミックスキルズに関すること、卒論・レポート指導の授業で使えそうなネタを集めています。

  • 書いたことと話したこと

    これまでの長尾の研究成果をまとめております

最近の記事

  • 固定された記事

note開設にあたって

こんにちは。長尾と申します。お読みいただきありがとうございます。 大学と大学院で日本の近代思想史を学んだあと、図書館に入って11年ほど勤めました。その後、大学に移り、現在は国際大学で留学生も含めた学生たちに日本史と日本文化を教えています。 専門は日本近代史・思想史・メディア史・図書館史や出版の歴史などです。 別途、ホームページを作っています。 複数の本をまとめて紹介するブログも書いています。 長らくTwitterを使っていたのですが、少し言いたいことを続けて書くとだ

    • 龍華寺と高山樗牛

      静岡県静岡市清水区にある高山樗牛のお墓がある寺。 初めて訪問したのは卒業論文執筆中の2001年の夏だったから、もう20年以上も前の話になる。 芥川龍之介が「樗牛の事」で書いている墓参りの話がある。これは、私の中でも結構印象的であった。こんな風に、何人もの青年たちが、かつてここに墓参りに訪れたのだと。 夏や冬(樗牛の祥月命日が12月であるため)に訪れることが多くて春先に行ったのは実は2024年の春が初めてだったのだが、天気の良い日に富士をのぞめるということを、このとき改め

      • 佐藤卓己『言論統制』増補版

        同僚の白戸先生と学生と一緒に図書館のセミナー室を借りて読書会を開いた。 2004年に刊行された同書の、さらに新たな史料を追加しての増補版である。鈴木庫三のエゴドキュメントの刊行と合わせて、鈴木について色々と考える機会になった。 飲みニケーションが嫌いでやりくりに没頭。マメに日記を記しながら、華美なブルジョア文化に敵意を隠さない。筑波山を眺めながら育った茨城の田舎出身の軍人を、読みながら好きになったり、嫌いになったりしつつ読んだという学生の声を聞いた。 また、海軍と陸軍、

        • 好きなことと役に立つこと

          人文系の教育と研究に関してこの頃思っていることを話す回になりました。 なぜかうまく話せない話題/友人の個展を見に行って/好きな仕事ができていいよね/好きなことを突き詰めた職業/問いかけに答える/「歴史が好き」のなかに潜む微妙さ/好きなことを役に立つことにするためには/自己表現と納得感の先にあるもの/期待してくれる人を増やしていく/会をつくる 続編です 前回の続き…/なぜ「人文系は何の役に立つか」と考え続けるのか?/そもそも社会が変わっている/国家須要の学とされた時代と現

        • 固定された記事

        note開設にあたって

        マガジン

        • 樗牛研究余録
          4本
        • 訪問先の記録
          23本
        • みちくさのしおり
          62本
        • アカデミック・スキルズ小ネタ集
          24本
        • 書いたことと話したこと
          18本
        • 日本近代の思想・文化小ネタ集
          26本

        記事

          昭和30年代~40年代に山形新聞に連載された高山樗牛の伝記(工藤恒治著)について

          昭和30年代から40年代にかけて、山形新聞に連載されていた工藤恒治の高山樗牛についての連載がある。 工藤は、1940年代に『文豪高山樗牛』という、樗牛研究必携の一冊を出している。ご覧いただければわかるのだが、高山樗牛の何月何日の行動までをあらゆる資料から網羅した、凄まじい本である。 こちらはクレス出版の花澤哲文編『高山樗牛研究資料集成』にも入っているのだが、その工藤が、戦後にまた新聞に連載していた高山樗牛伝ということになる。 しかもこの樗牛伝は2種類ある。 昭和36年

          昭和30年代~40年代に山形新聞に連載された高山樗牛の伝記(工藤恒治著)について

          石川県西田幾多郎記念哲学館

          日本を代表する哲学者、西田幾多郎の記念館が、彼の地元の石川県かほく市にある。 金沢から電車に乗って小一時間ほど。JR七尾線の宇野気駅で降りて向かう。 先日訪問したのはかなり暑い日だったので、駅から歩くだけで結構日に焼けた。 最初の展示室ではさまざまな哲学者たちの言葉が提示され、そこから色々な思索をめぐらせることができる。西田の語録がカードになって配布されているのもおもしろい。 二階は、西田の遺品や書簡などが展示されており、西田の交友関係が明らかとなる。 前に来た時は確

          石川県西田幾多郎記念哲学館

          満蒙開拓平和記念館(長野県下伊那郡阿智村)

          長野県下伊那郡阿智村にある。飯田駅からタクシーで30分ほど。2013年に開館した施設。 お盆の墓参りに合わせてようやく訪れることができた。 昭和のはじめ、日本から満洲国には多数の農業移民が渡った。満蒙開拓団である。 新天地での生活を夢見て渡った人々だったが、1945年8月9日のソ連軍の侵攻により満洲は戦場と化し、開拓団は広野を逃げまどい、あるいは集団自決を決意した団もあった。残留孤児として、戦後まで帰国できなかった人たちがいた。 長野県はそのなかで満洲に最も多くの開拓民を

          満蒙開拓平和記念館(長野県下伊那郡阿智村)

          <研究紹介>法科と文科(2020年)

          中野目徹編『官僚制の思想史』(2020年、吉川弘文館)に発表した論文。ここ数年間で書いた自分の論文のなかでは一番思い入れがあるものの一つ。 副題は「明治・大正期における帝国大学生の官吏志望」。 明治から昭和のはじめにかけて、帝国大学の卒業生のなかで「官僚になる」ということがどういうことを意味していたのか、それを意識の面から探ろうというのがメインテーマの論文です。 普段やってないのになんでそんなテーマを?と言われると、私の博士論文の課題である高山樗牛・姉崎嘲風が帝大出身であ

          <研究紹介>法科と文科(2020年)

          わたしにとっての「日本研究」

          「日本研究」関係の授業をしながら考えているよしなしごとを 秋の授業に向けて/日本研究って何?という質問/哲史文の学問のなかの日本/外からの目線/比較という手法、歴史という手法/私の関心/ベルツの観察/明治30年代の人文学の形成/学際的アプローチと地域研究/固定化したものの見方を作り替える/日本研究の目的/簡単じゃない、手間がかかること/歴史学から日本研究にどう貢献できるか? 言及した本です 所属コース概要

          わたしにとっての「日本研究」

          「知の基盤」としての帝国図書館

          『日本史研究』2024年7月号に拙論が掲載されました。 石川で中田邦造展を見てきました/地域の読書会の歴史/日本史研究と図書館史研究との対話/『帝国図書館』に寄せられた質問に答える/まだまだ検討しなければならないことが多い/学問の「タコツボ化」と図書館/『図書館書籍標準目録』のこと/近年の研究動向/これからの課題

          「知の基盤」としての帝国図書館

          サブスク時代

          最近カラオケに行ったあと考えた話です。 カラオケに行った話/サブスクとYoutube/多様化?/イエスタデイ・ワンス・モア/アニメのリバイル/40年という時間の物差し/円本ブーム/零れ落ちるもの/マイナーなものに宿る時代感覚/こそが保存している時代特有の感覚/誰がそれを保存するのか/歴史は役に立つのか

          サブスク時代

          論文のさがし方(日本史関係)

          日本史の論文のさがし方とか先行研究の整理の話とかをしました。 回顧と展望/日本歴史関係雑誌論文目録/日本史に関する文献を探すには(リサーチ・ナビ)/日本史のコア・ジャーナル/日本史文献事典・展望日本歴史・研究事典/プロの専門性とは?/プロのプロたるゆえんとは/研究者と論文を50本説明できるか/修論の参考文献/研究動向のなかに自分を位置づける/対象の上位概念を考える/どういう分野と対話できるのか考える/研究レビュー自体が面白い論文はあり得る リサーチ・ナビ「日本史に関する文

          論文のさがし方(日本史関係)

          近代日本思想案内

          鹿野政直『近代日本思想案内』(1999年、岩波文庫)を紹介しました。 高校日本史をやっていなくても読める日本近代史の本/岩波文庫の解説/最強の入門書/思想の捉え方/民衆思想史の立場/文学作品の思想性/思想の歴史を見る意味/構成

          近代日本思想案内

          論文・レポートの書き方本紹介

          アカデミックライティングの授業を持っていたとき、授業づくりの参考にしていた本を紹介しました(新刊が続々出ていますが、概ね、2023年までに刊行された本を対象にしています)。 以下の本を紹介させていただきました。 木下是雄『理科系の作文技術』(中央公論社、1981) 清水幾太郎『論文の書き方』(岩波書店、1959) 木下是雄『レポートの組み立て方』(筑摩書房、1994) 小川仁志『5日で学べて一生使える!レポート・論文の教科書』(筑摩書房、2018) 佐々木健一『論

          論文・レポートの書き方本紹介

          読書国民の誕生

          永嶺重敏『読書国民の誕生』(2023、講談社学術文庫) ※初版『〈読書国民〉の誕生』(2004、日本エディタースクール出版部)について紹介します。 学生時代に影響を受けた本/読者研究の視点/地方の読者/図書館の普及/「想像の共同体」/ 使っている資料の面白さ/『帝国図書館』の利用者/「読書国民」は本当に明治に成立したのか? 録音時に未読でしたが、読者はどこに行ったのか?について、大澤聡氏の最近の議論も 関連:B.アンダーソン『想像の共同体』 あわせて

          読書国民の誕生

          苅部直『小林秀雄の謎を解く』

          *ヘッダーは「近代日本人の肖像」より 新潮選書の一冊。 紹介文には「気楽な随筆に見えた雑誌連載『考へるヒント』は、実は徳川思想史探究の跳躍板だった。モーツァルトやベルクソンを論じていた批評家が、伊藤仁斎や荻生徂徠らに傾倒したのはなぜか。その過程で突き当たった「歴史の穴」とは。ベストセラーを読み直し、人間の知の根源をも探る試みであったことを明らかにする、超刺激的論考」とある。 1960年代、出版界が歴史書ブームに沸いていた。 本書はその中に小林の思索を位置づけ、徳川思想

          苅部直『小林秀雄の謎を解く』