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日本近代の思想・文化小ネタ集

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日本近代史の授業などで話す小ネタです(タイトル画像はNDLイメージバンクの井上安治の東京名所絵より)
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記事一覧

田中稲城の死

2月22日は帝国図書館長、田中稲城の命日である。 拙著『帝国図書館』にて田中退任をめぐって…

negadaikon
2か月前
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柳田國男の「濫読の弊」(1927年)

昭和2年(1927年)12月に柳田國男が書いた「濫読の弊」(成城学園編『全人』17号)という文章…

negadaikon
1年前
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泉鏡花と赤門派

『論集泉鏡花』第7集(和泉書院、2022)所収の鈴木啓子「本郷台の青春挽歌―『湯島詣』と赤門…

negadaikon
1年前
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「学生」と「生徒」

高校と大学での違いについて、1年生向けの必修授業で毎年喋っている気がする話題である。 高…

negadaikon
2年前
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「知の巨人」の時代

思うところがあって少々「知」という言葉の用法を集めている。 そのうちに「そういえば戦前日…

negadaikon
2か月前
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内村鑑三と上州

内村鑑三に「上州人」という漢詩がある。 上州人は無智で才能も無く、気性は強いが無口で人に…

negadaikon
3か月前
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「十万二十万の上流社会」

国語学者の上田万年は、日清戦争のさなか、1894年10月8日に哲学館で行ったとされる有名な講演「国語と国家と」のなかで、こういうことを言っている。 この前段は、漢文を学校で教えるかどうかみたいな話をしていて、絶対に研究するなと言っているわけではなく「高等教育としては、そのまさしく硏究せらるべきを主張するものなり」といい、漢学のようなものは、「國民の何十萬分の一にのみ、必要なりと認むる學科にてある」というのである。国語国字問題のかまびすしい時期のことである。 気になったのは

加藤高明と田中稲城

これもあまり本筋に関わらないので拙著『帝国図書館』には書かなかった話。読者の方からご質問…

negadaikon
8か月前
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昭和前期政治家の愛読書

拙著『帝国図書館』(中公新書)執筆中に調べていた新聞記事で、「ああこれ面白いなあ」と思い…

negadaikon
8か月前
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岩倉使節団と熱中症

大学の演習の授業で『米欧回覧実記』を読んでいると、いろいろと発見がある。史料は有名どころ…

negadaikon
8か月前
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帝国図書館官制公布の日は国会図書館開館記念日ではない

拙著『帝国図書館――近代日本の「知」の物語』をお読みくださった皆様に厚く御礼を申し上げま…

negadaikon
1年前
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古典から遠く離れて?

院生のころ、これで自分が日本思想史の研究者らしくなれたのではないかなと思ったのは、古本で…

negadaikon
1年前
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書籍館のほんとうの開館日

2022年は一応150周年ということもあるので、人々の思い込みやネットの情報はなかなか間違って…

negadaikon
2年前
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紙を破り取るのは誰だ

帝国図書館の蔵書中の高山樗牛の本が熱心(??)に読まれていた証拠と言えるのかもしれないが、現在国立国会図書館デジタルコレクションで見られる樗牛関連図書には、書き込みが多い。 ひどいとページごと破り取ってるものがあるのだが、特に多いのが、代表文集を集めた『文は人なり』の大正七年の増補版だ。書き込みが多数あり、あちこちに欠落のページが認められる。事故本のシールも貼ってある。 頭に来たんだろう。後の読者が「紙を破り取る者は誰ぞ」「紙を破り取るものは誰ぞ」と書いてある。 大事な