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ただ、やってみたかった。

今日のnoteはただの自慢話かもしれないのですが(笑)、私がこれまで大切にしてきた事というか、ここまで信じてきた人や物の話をつらつらと綴っていくので、お時間のある方はどうかお付き合い頂けたら嬉しいです。

さて、皆さんは映画館に行かれた事はありますか?もしくは、映画館の中まで入った事はなくても、映画館の前を通りかかった事はありますか?大抵の人は、少くともどちらかの経験はあるんじゃないかしら……?と思うのですが、いかがでしょう。

映画館って、屋内にも屋外にも映画のポスターが貼ってあるじゃないですか。外を通りかかって作品のポスターを見て「今これ上映してるのか〜!観ようかなぁ〜」とか、映画館の中で他の作品を観ようとする時に「あ、来月からこの作品やるんだ!観たいなぁ〜」みたいな感じで、ちょっと気持ちがアガるやつ。

で、昨年夏にプロデューサーを務めた短編映画『Veils』のポスターって、コレなんですよ。私の事をご存知の方は、それはそれはもう色々なところでご覧頂いているかと思うのですが、せっかくなので、もう一度よく見てみて下さい。

ものすごいローリエの数ですね!
(今日はその話じゃない)

こちらのポスター画像、映画祭でのノミネートの記録をしたローリエ(月桂樹)を載せているのみで、映画のタイトルはおろか、監督の名前も、キャスト・スタッフの名前も、作品の情報は何ひとつ入っていないんです。ただ、隅々までよく目を凝らすと下の方にQRコードだけ入っています。もしかすると、言われるまで気が付かなかった!という方もいらっしゃるかもしれません。

あと、映画館って映画のチラシも置いてあったりしますよね。気になるチラシを手に取ってあらすじを眺めたり、たまにはお家に持って帰ってみたり。なんなら私の部屋には今もフェイバリットな作品のチラシが貼ってあります。しかし今回は、チラシを制作する代わりにポストカードを作ってみました。

ポスターと全く同じ写真を使用していますが、ポストカードの方には映画祭のノミネートの記録も載せておらず、表面は主演2人の写真のみ。本当に、ただただ、写真のみ。

正直、宣伝媒体としてはダメだと思うんです。

だって、タイトルも入ってないんですよ?!なんのポスターなのか、なんのポストカードなのか全く分からないし、売り物なの?コレは貰っていいの?写真展のお知らせ?デザイナーさんの作品?アパレルのモデルさん?なんなの???みたいな。そもそも、このQRコードって本当に読み込んでも大丈夫?!みたいな怪しさもあると思うんです。

監督にとっても俳優部の皆さんにとっても、宣伝媒体としては使いにくいだろうなぁ、とは思っています。その点は申し訳ないと思いつつ、それでも私は、このメインビジュアルが完成した時に

この写真に、文字とか入れる必要ある?


と、直感的に感じたのでした。もちろん撮影は、我らが勝見里奈さん。ここ数年の私のお仕事において欠かせない人です。当然ながら、メインビジュアルの撮影時には

かつみさん「上の方にロゴとか入れますよね?」
『そうですね!ちょっと余白を持たせてもらえますか?』

とか

かつみさん「なにか前ボケを作りたいですねぇ」
『あ、じゃあ麦茶とか置いてみます?』
かつみさん「いいですね~。この植物も置いちゃいましょう~」

などなど、その場で打ち合わせもしていましたし、かつみさんも私も監督も、それぞれの頭の中で見ていたポスターの完成形はかなり近いものだっと思います。でも、撮影後に監督からのリクエストに合わせたレタッチを重ねてもらい、完成したメインビジュアルを見た時に私は

この写真に文字を入れるだなんて、
そんな無粋な事は出来ないわ!


と思わずにはいられませんでした。主演2人の表情や、幸せのかたちが見える空気感、構図と色味、全体のバランス、どこを取っても、ひとつの"作品"のように感じたからです。

しかしながら、主に映画館に貼られたり映画祭で掲示されたりするであろうポスターはともかく、色々な場所で配布するポストカードに関しては、どうにか宣伝媒体としての体裁を保ってほしいところ……。そこは、プロデューサーの立場としても、なんとかせねば!(笑)

という訳で、今度は長年のお付き合いであるデザイナーのemmyさんに「とにかく、この写真をこのまま使ったデザインでいきたいです!」と相談したのでした。

もともと、ポスターの制作時にも、普段よく見かける白地に黒い模様の入ったQRコードではなく、写真のブラウン系の色合いに限りなく寄せつつ、スマホで読み込める限界の色味でのQRコードの作成に挑戦して頂きました。お互いに何度も自宅のプリンターで印刷して、実際にスマホで読み込めるかどうかも確認しながら、どこまで色味を薄くできるのかを試したり、大きさや位置にもこだわって配置して頂きました。

最初のうちはロゴに似せて写真にレースのような縁取りのデザインを入れて下さったり、素敵なデザインを何パターンも提案して頂いたのですが、私は「やっぱり写真だけでいきます!!!」と、強行突破したのでした。……鬼、なのかもしれませんが、それでも完成までお付き合い下さったemmyさんには本当に感謝の気持ちでいっぱいです。

ポストカードに関しては、裏面にPOST CARDの文字と、劇中にも出てくるタイトルロゴ。さらに、ロゴと同じカラーリングのQRコードを記載してもらいました。表面は、前述の通り写真のみ。

私はごくごく単純に、このポストカードを"お部屋に飾ってほしいな"と思ったんですよね。そして、それと同じくらい"誰かにお手紙を出してもらえたらいいな"とも思っています。

映画があるからポストカードを作ったけれど、ポストカードありきで映画に辿り着く方がいても良いし、たとえ映画という作品に辿り着かなくても、「素敵な写真!」「可愛いポストカード!」と思ってもらえる人がいたら、"勝ち"、だと思ったのです。変な言い方かもしれませんが、本当にそう思いました。写真という作品が人の目に触れて広がっていくのと同じスピードで、監督のなかやまえりかと相馬有紀実さん、主演を務めた2人の存在が世の中へ認知されていく事には違いないのだよな、と。それが何年後かになっても、最終的に映画という作品に繋がれば、それでいいのではないか、と。

一度作った作品は、よっぽどの何かが起こらなければ一生残る訳で、制作直後からいち早く作品が届き、たくさんの人に広まっていく事も嬉しいけれど、いつかどこかで思いもよらぬタイミングで見知らぬ誰かに届く、という人生のご褒美のような体験も、私には身に覚えがあるのでした。

恐らく、作品にきちんとした宣伝部さんが付いてたら、めちゃくちゃ反対に遭ったでしょうし、実現も出来なかったでしょう。自主制作だからこそ選び取る事が出来た選択だったと思います。理解を示してくれた監督のなかやまえりか氏にも感謝しています。(監督自身も、この映画がもつ力と同じくらいメインビジュアルの写真の力を信じていると思うけれど。)

かつみさんの写真の力、そこに写った主演2人の魅力、チームで作った映画そのもの力を信じた事はもちろんなんですけど、正直なところ、身も蓋もない話をするならば、一点の曇りもなく

ただ、やってみたかった。


んですよ。(笑)

「自主映画で、ここまで何の情報も載っていない宣伝媒体は見た事がないので、とにかく一度やってみたい!だって、誰もやってないし!!面白そうじゃん!!!」

……どうにも私らしい、と言いますか、ね。しかし、その私らしさが功を奏しまくった結果が昨日でした。

昨日10月5日から、ヴィレッジヴァンガード ルミネエスト新宿店さんにて、『Veils』のポストカードを置いて頂く事になりました。なんだかんだ20年近く前から続いていたご縁が巡りに巡って今も繋がり、今回の展開に繋がりました。

青春時代、直球ド真ん中の、あのヴィレヴァンさんですからね?!

キャラクターグッズも、文庫も絵本も、雑貨もお菓子も、アパレルも、青春時代から今に至るまでめちゃくちゃお小遣いを使ってきた(言い方)、あのヴィレヴァンさんですよ!?すごくない?!

もうね、貴族の「オーホッホホ!愉快愉快!」みたいな感覚。左団扇で偉そうに「余は満足じゃ……」ぐらいのイメージ。とにかく、めちゃくちゃ嬉しい、という気持ちを伝えたいのですが、果たしてこれは伝わっているのでしょうか。(笑)

数年振りにお会いした担当の方から「正直、ポストカードに文字とか入ってたら置いてなかったです。デザインを見て、写真じゃん!と思ったから、額に入れてみようと思ったんですよ。」とのお言葉も頂きました。そうなのです。お店の中で、確かに、飾って頂いています。

店舗内に置かせて頂いたポストカードの中には、当たりも入っています。是非、宝探しのような気持ちでお店に入って、見つけてみて下さい。そして、皆さんのお手元にお持ち帰り頂けたら嬉しいです。

それぞれのお部屋に飾ったり、どこかにしまっていても時々取り出して眺めてみたり、気が向いたら誰かにメッセージを書いて渡したり、実際に切手を貼ってお手紙を送ったり、してみて下さい。巡り巡って、いつか何かの違う形でも作品が広がっていく事を願っています。

「私の信じたものは、間違っていなかったよ!」

と、何年後かにも、また笑っていたいものです。(さらに夢を語るならば、今度は本当の左団扇だといいなぁ~!(笑))

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