見出し画像

泣くなってずっと言われてきた……

「何があっても泣くなって両親から言われてきた。笑ったりするのはいい、だけど泣くのだけはやめろって。そう両親に躾けられた時まだ子供だったから大人しく従ってたの。だけど沼に溺れた時があって私苦しくて苦しくて思わず泣いたの。そしたらもっと苦しくなって誰かに助けてもらいたくてもっと泣いた。そうしたら両親がボートで私を迎えに来てくれて助けてくれた。だけどね。お父さんもお母さんもすごい顔して私を睨んで言うの。なんで泣いたんだって。酷いよね、それが溺れかけた娘に対して言うセリフ?って思った。だけど私、両親を怒らせるのが嫌だからずっと泣きたい気持ちを抑えてた。でも今から考えたらこれって一瞬の虐待だよね。私がちょっとでも泣きそうになると何故か服濡らしてる両親がキッて私を睨むの。私がいったい何をしたっていうのよ。私、人間なんだよ!嬉しいことが有れば悲しい事だってあるし、人はうれしさのあまり泣いたりするじゃん。あの人たちはそんな人間の当たり前の感情を抑圧しようとしてたんだよ。両親は三年前に沼から突然吹き出した水に溺れて死んだの。その直前にもあの人たち私に絶対泣くな、絶対だぞとか人を殺しそうな顔で言ってた。それから私ずっと自分の感情を殺してた。泣くなって年がら年中言ってた両親が亡くなったのにおかしいでしょ?だけど私それ以上に絶望していたの。涙も枯れる深い絶望があるなんて知らなかった。だってそうじゃない。結局あの人たちは最後まで自分を動物かなんかみたいに見ていなかったんだもん。その事に気づいた時私こんなに近くにいた人たちから人間扱いされてなかったんだなって誰も信用できなくなった。だけどそんな絶望の淵にいた私をあなたが救ってくれた。ねぇ、いい……。あなたの胸で思いっきり泣いていい?私今まで生きてた分思いっきり泣きたいの」

「いいさ、おいで。僕の胸で思いっきりお泣き」

 こうして涙子は海男の胸に飛び込んで泣いた。海男は涙子の涙に溺れ、そしてその涙は全世界を包み込んだ。涙子はあっという間に誰も居なくなったので悲しくてもっと泣き喚いたが、涙のせいで地球が耐えられなくなりとうとう地球が爆発してしまった。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?