ホームコック
テーブルに置かれた豪勢な料理に男はびっくりして女に聞いた。
「これって君が全部作ったの?」
それを聞いて女は男に向かって軽く微笑んでから手を叩いた。
するとキッチンからコック帽をきた男が現れた。
「彼がこの料理を作ったの。美味しいから食べてみて」
男は女の自分に対する過剰なまでのもてなしぶりに感動してしまった。まさか僕なんかのためにコックまで用意してくれるなんて。だったら僕もそれに応えなきゃいけない。この手の指と二十一本目の熱く太い指で。男はコックに向かってありがとうと一礼してからフォークとナイフを持った。
「今夜の僕らのメインディッシュのために、この素敵なオードブルを食べさせてもらうよ」
そして男はフォークを料理に刺して、ナイフで切ろうとした。しかし瞬間、女はコックを指して男にこう言ったのだ。
「あっ、言い忘れていたけどこの人私の旦那だから。この人ホテルのレストランでコック長やってるの」
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