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筆を折る

 本当に筆を折るつもりです。実は今までイヤイヤ書いてました。才能なんてないのにに必死に書いて上手くなろうとしていたんです。だけどそれも今日で終わりです。やっぱり私には上手く書けないのです。知り合いはちゃんとお手本の通り書けば上手くなれるよなんて励ましてくれました。だけどそうやって書いたものはお手本から程遠い下手にクソを大量に振りかけまくったものでしかありませんでした。だからもう筆を折ります。皆さん今までありがとうございました。


「それで田中君、その事お父さんとお母さんにはちゃんと言ったの?まだ教室に入ってから三日しか経ってないじゃない。私今からご両親に電話するわ」

「やめろよ!そんなことしたって無駄だ!俺はやめるって決めたんだからな!もう書道なんてやりたくねえんだよ!筆なんか折ってやる!」

「田中君いい?ご両親はね、あなたが漢字も満足に書けない事を心配して教室に入れてくれって頼んできたのよ。あなたにはその両親の思いがわからないの?」

「うるせえ!イヤだったらイヤなんだよ!漢字なんてスマホの予測変換で充分じゃねえか!今は紙の時代じゃねえんだよ!書道なんてやったって無駄なんだよ!わかったかババア!」

「あなたの言いたい事はわかったわ。どうしてもやめるというなら先生は止めない。だけどね、あなた本当に一生自分の名前の漢字書けなくていいと思ってるの?あなたひらがなしか書けないじゃない」


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