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突然の告白

 業務中に告白してくるなんてどうかしている。小田切哲也は部下の里見華子の突然の告白に驚き戸惑った。今までそんな素振りなんか見せなかったのにどういうことだろう。声まで少し変な調子だった。まるで別人のように。里見君は今まで私に挨拶ぐらいしかしてこなかった。だけど何故突然告白なんか。里見は小田切の前に立って回答を待っていた。

 小田切はこの沈黙に痛みさえ覚えた。彼はもう耐えきれず返事を保留して彼女に下がってもらうように言おうとしたのだが、その時里見がとんでもないことを言ったのだ。

「今すぐ、裸になってみんなの前でしましょうよ!熱く激しくみんなの見ている前で交わりましょうよ。獣のように、虫のように全てを曝け出して!」

「里見君、そんなことはやめるんだ!君は淑女の嗜みを忘れてしまったのか!ああ!脱ぐんじゃない!やめろ、君は私を破滅させたいのか!」

 里見はBluetoothのイヤホンつけて訳の分からないことを喚いている小田切を害虫でも見るような目で見ながら言った。

「あの、課長。いい加減イヤホンとってくださいよ。あの私さっきからずっとあなたの回答待ってるんですけどね。みんながあなたに職場にBluetooth持ち込むのやめろって言ってるって。あなたね。人の迷惑考えたことあります?あなたのイヤホンからすっごい音漏れしてるんですよ。あの、いい加減職場でAVの音声聞くのやめてもらえます?」

 小田切は言われた通りイヤホンを外してそこから激しい喘ぎ声が漏れているのを確認した。いつの間にかイヤホンの音声と現実を混同してしまったみたいだ。だが、彼は里見の誤解を正したくて立ち上がって言った。

「里見君、君は大変な誤解をしている。これはAVじゃなくてロマンポルノだ。ロマンポルノの大名作『OL大乱行。課長今すぐヤリたいんです!』なんだ。君よかったら一緒に音声聞かんか?」

「誰がそんなもの聞くか!アンタセクハラで訴えてやるから覚悟しろ!」

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