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俺と付き合ってくれ

 と私の隣の同僚が私の目を見つめて言った。彼の目の中には私の顔がハッキリと写っている。彼が瞳孔を開くたびに目の中の私が膨らんでいく。ちょ、ちょっと待ってと私は言って思わず彼から目を背けた。こんなところで告白って何?あなた一体何考えているの?しかし彼は再び私に向かって自分の気持ちを訴える。

「俺が君を好きだってことはとっくにわかっているじゃないか。一体何を迷っているんだよ。いい加減俺を苦しめるのはやめてくれよ!」

 ああ!なんてことだろう!私のためにそんなに苦しんでいたなんて!今まで彼の気持ちを知らずに、いやもしかしたらそんな気持ちを利用して雑用を全部押し付けていた。バカだ。私はとんでもないバカだ。彼が自分を愛しているってわかっていたら雑用の後に缶コーヒーでもあげたのに。だけど待ってよ。いきなり私に決めさせないでよ。あなたそんなにせっかちだったの。いきなりの告白に今すぐ返事なんてできるはずないじゃない。私が何も言えずにいるとなんと彼が突然泣き出した。私はたまらずわかったわよと言おうとしたその時突然反対側の隣に座っていた女の同僚が泣きながら叫んだ。

「こんなとこで恥ずかしいからやめてよ!アンタって本当バカ!なんで耐えるって事を覚えられないのよ!」

「しょうがないじゃないか!それだけ君が好きなんだから!」

 男の同僚は女にそう言うと、机を激しく叩くと背中をそらし私を避けて女を見た。女もまた男を見るために背中をそらして私を除ける。私は惨めな気分になってこう言った。

「あの、私お二人の邪魔なようだから帰るね」

 二人は私の言葉を聞いて喜び男の同僚が笑顔で私に感謝の言葉を言った。

「ありがとう!そうしていただけるとすごくありがたい!」

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