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おしゃれで悲しいストーリー

 人は中身なんてことは誰もがいう。だけどそんなのは気休めに過ぎない。こんな事を呟きながら有馬恵子はセレクトショップで服を選んでいた。おしゃれは私の全て。この都会では自分を演出しなければ生きていけない。そんな焦燥に憑かれて必死に服を選ぶ恵子の姿は滑稽であり、悲しくもあった。

 だがそれ以上に悲しかったのは彼女の選んでいる服があきらかに恵子よりサイズが小さい事であった。「全然ダメ!私には合わない!」と試着室を出入りする度に伸び切りボタンのとれかかった服を手に吠えまくる恵子を見て店員は失礼だと躊躇いながらもこう呟いた。

「服が可哀想……」

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