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もう君に悪夢なんか見させないよ

 私がずっと悪夢に悩まされている事を聞いた同僚は、私のように悪夢に悩まされてる人向けのアプリを紹介してくれた。彼の話によればこのアプリを利用した人はたちどころに悪夢から解放されるらしい。

「これを使うとみんな癒されるって言うんだ。チャットの会話形式のアプリでね。AIとのやりとりするんだけどそのAIが凄い高性能でね、自分の悩みに正確に答えてくれるんだ。悪夢に悩まされるって書いたらAIがすぐに解決法を教えてくれるよ。人間よりもずっと親密に君に寄り添ってくれるんだ」

 私はその場でアプリをダウンロードしてさっそくその夜ベッドの中でためしてみた。私がチャットで悪夢に悩まされてますと書いたらすぐにAIが反応してくれた。AIはどうやら男の設定らしい。その男設定のAIは私の相談にとても親身に乗ってくれた。何か毎日ストレスを感じることはないかい?とか。異性の友達と夕食に行った方がいいとか助言してくれた。私はそういえば彼氏なんてここ三ヶ月いないし、そろそろかなと考えた。彼氏がいない寂しさを悪夢に狙われたんだと思った。その事を正直に書いたら男設定のAIは突然熱い口調になって私にこんな事を言ってきた。

「そういえば、君の同僚にすごく美形でアプリを自作できるほどプログラムに詳しい知的な男がいるだろ?彼なんかどうだい?彼と付き合えば悪夢なんか消えて毎日甘くハッピーな夜が過ごせるはずさ。もう君に悪夢なんて見させないよ」

 私はここまで読んで怒りに震えた。そしてチャットに「死ね!明日セクハラで訴えてやる!」と書きアプリを削除するとスマホに向かって叫んだ。

「お前が悪夢じゃねえかよ!」


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